私かい。


 問題の二つのうち、レンジ君は机の横に下ろして服をかぶせてきた。びっくりするくらい重かった。ぷるぷる震えながら頑張った。誰か褒めて、誰かぁ!


 え、悩んだ3分あれば、カップ麺が食べれた?

 しょんぼり。


 ああ、カップ麺久しぶりに食べたいなぁ。お湯入れてお箸をフタの上に乗っけて待ってると、スープのいい匂いがフワリと漂ってきて。たまに食べるとすっごく美味しかった。生卵落としたり海苔やモヤシトッピングしてさ? じゅるり。乾麺はウチで見たことないけどこれも探してみよっと。


 しまった、閑話休題。


 今のとこレンジ君は安心できる。お父さんは私がいない時には二階の私の部屋に入ってこないし、お母さんはとりあえず……そう、とりあえず!見なかったことにしてくれるみたいだし? 信用してくれてるのは嬉しいけど、めちゃ怖。お手柔らかにオナシャス!


 そんなことより大問題はこっち、『メニュー』だよ。右目の視界の右側で、デデーン、と存在を主張している。


 位置は斜め右上固定。右を向いても左を向いてもそこにある。まあ表示オフにできるだけマシかもだけど、見えてると何とかしたくなるやん。


 ……そういえば大学の時、VRの格闘ゲームにハマってる友達がいたなあ。私は画面酔いしやすいからあんまり遊ばなかったけど、それが今は悔やまれるっ! 


 転生するってわかってたら! わかってたな、ら……そんなん誰がわかるんだよ! あう。何か『メニュー』見てたら酔ってきた。


 昔、小学校で先生に教えてもらった『命』のポーズでさえウンともスンとも言わない。おっかしいなあ、手の角度が悪いのかなあ? こう? こうか?


 それともアレかな。転生者だから中二っぽいポーズを求められてる? まっかせなさーい。そういうのは大好きだっ!


「ふはは! はははは! ぬははっは! 我との契約(無償)に従いその力を解放せよ! ポージング、『大鷲』!」


 ……。


 …………。


 ………………。


 ぶはっ!


 しまった、発動前によろけてしまった。修業が足らん! もう一度チャレンジだ。今度は違うポーズにしてもいいかも。あはは、楽しくなってきた!


「うはは? だははは! むははっは! 我との契約(無償)に従いその力を解放せよ! ポージング、『苫米地とまべち』! ……違うかも?」


 近所のお爺ちゃんどんなポーズで何て言ってたっけ。ええと、足をガニ股にして、お股の辺りから両手を引き上げて……思い出した!


こまでち!」


 多分これだ! おおお私、20年以上前のことよく覚えてた! 小学校入る前じゃなかったっけ? しばらくみんなでこのポーズしてたなあ。

 

 …………あれ?

 私何してたんだっけ?


「ひっ……!」

「アイラ?」

「ぎゃあ!」


 んむ?

 ……悲鳴!


 ま、魔物でも出たの?!

 ユクラの町の中に?!

 

 それとも荒くれ者の集団が両手を大きく空に掲げて、鷹のポーズでヘラヘラ笑ってるとか……大変、大変だあ!


「い、命ばっかりは……!」

「…………」

「ブルブルブルブル……」

「トーマ、リル、ラルフ……!」


 辺りを見回す。見た感じはいつもの町、石畳に家の壁があるだけだ。しかぁし! うまく隠れたつもりでも、そうはうまくいかないんだから!


「魔物、どこ?! 怖い人たちは?! 私が引きつけるから、みんなは早くギルドに逃げて!」


 ギルドはそんなに遠くない。それにこっちでは私、学校で指折り数えるほどに足が速い。毎日毎日、お昼のお手伝いをしたあとは全力ダッシュしてるからね、遅刻回避で!


 あれれ?

 リルが私をゆびさしてる。


「アイラ呪われてるの? 気持ち悪すぎ」


 私かい。

 

 そんでリル。

 可愛いネコ耳して結構ヒドいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る