コンクリート・ジャングル
モモンガは生乾きのコンクリートに己が足跡を刻印しつつ歩いていた・・・ひどく暑い。
「きゅー!!ロープ張ってあるのにコンクリの上を歩くんじゃないきゅー!」
現場監督モモンガが通行モモンガに怒鳴る。
「どうりで歩きづらいと思ったきゅー」
通行モモンガは足についたコンクリを木の棒でこそぎ落としながら言った。
キュッチャニア・シティの新市街地は拡張工事の只中であった(革命以来ずっと続く拡張工事である)。
反対するモモンガを棒で叩き、森を切り開き、コンクリートを敷き、ビルを建てることをひたすら繰り返している。
「親方、そろそろ向こうのコンクリが乾く頃だっキュ!」
「きゅぶー、ここの穴を埋めたらそっちに移るきゅ」
「きゅー」
「親方!また森のモモンガが襲撃してきたキュ!」
「陸軍の奴らはどうしたきゅー」
「吹き矢がいっぱい刺さって三倍ぐらいに膨らんでるきゅー。痛そうだきゅー」
「前が見えねぇきゅ・・・」
陸軍の兵士たちはあちこちを吹き矢に刺されてすっかり腫れ上がっている。
「また工事に反対するモモンガが来たキュ。おちおち仕事もできねぇキュ」
現場監督は政府から派遣されているモモンガに言った。
「上に言っておくきゅー・・・」
東部方面軍が攻勢に失敗してから、反政府活動が前よりも活発になっているのだった。
総統府ではキュッチャン総統が新市街建設の遅れを問題視していた。
「新市街開発計画が止まれば外国企業の誘致にも支障が出るきゅー!
そもそも新市街は革命政府の偉業の象徴となるのだきゅ、問題があっては困るきゅー!」
「総統、どうせ外国の企業なんて来ないきゅー」
「なんてこと言うきゅー」
「とにかく、首都で騒乱があるなんて国家の恥だきゅ。なんとかするきゅ」
「回せる部隊がないんですきゅー、陸軍はこの前の作戦失敗で余裕がないきゅー」
「陸軍がだめなら空挺軍だきゅ!空挺軍を投入するきゅ!」
空挺軍はキュッチャニアの最精鋭部隊である。規模自体は小さいが陸海空軍と同格の軍隊として存在している。
「きゅー」
「デモ鎮圧は戦争と同じだきゅ!機先を制すきゅー!」
新市街の真新しい道路を空挺軍の空挺戦車が進撃する。
「アスファルトがぼろぼろだきゅー!!」
工事のモモンガたちが叫ぶ。ついこの間敷いたばかりなのだ。
吹き矢で武装した新市街拡大反対派モモンガは、空挺軍の装甲車両と精鋭モモンガ達によって瞬く間に壊滅させられた。
「こんなに早く片付くなら最初から空挺軍を出しとけばよかったきゅー」
総統はご満悦だ。
「街中にでかい空薬莢が落ちてるきゅー」
工事のモモンガは機関砲の空薬莢や小銃の空薬莢を拾いながら愚痴った。
空挺軍が大暴れしたおかげで、少なくない建造物や都市インフラにも損傷が出ていた。
「親方、この辺は全部やり直すしかないっきゅ」
「きゅぶぶぶぶ」
「総統ー、戦闘の余波で2割ぐらい工事やり直しになったきゅー」
「それってどのくらいきゅー?」
「5年分の工事が全部やり直しきゅー」
「きゅぶぶぶぶ・・・・」
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