空挺戦車哀歌
空挺軍の中隊長は、砂丘に半分突っ込んだ空挺戦車を、やっとの思いで掘り起こし、車内にすべり込みながらこの作戦を振り返った。
何が空挺保の確保だ。この戦車を見つけられなかったら国境の砂漠で野垂れ死ぬところだ。
無線のスイッチを入れて状況を報告をする、無線の使用は重大な状況に限られると言われていたが、今がその時だ。
「こちら中隊長、前線司令部へ、我が中隊は空挺降下中に輸送機が撃墜されたきゅ。
残存戦力は戦車一両と一個分隊のみ、作戦続行は不可能!」
応答はしばらく経ってからだった。
司令部も困惑しているらしい。
「前線司令部より中隊長、ブリーフィングに従い、目標地点へ向かうきゅ」
バカな、みすみす殺す気か!
「先程の報告は聞こえていなかったのきゅー?」
「中隊長へ、他の部隊は担当戦区に降下したきゅ。目標地点へ向かうきゅー」
「・・・了解きゅー」
仕方がない。こうなったら機関砲の弾が残ってる間に味方が作戦に成功して、敵が逃げてくれるのを祈るしか無い。
フルオートなら一分経たずに撃ち尽くしてしまう分しか積まれていないが。
「上に乗るきゅ、出発するきゅー!」
部下のモモンガを後部に乗せて戦車を走らせる。
こんなもの、掘り起こしてもなんの意味もなかった。
キュッチャニア軍の空挺戦車KBMD-1
キュッチャニア空挺軍は支援火力・継戦能力・機動力・対戦車戦闘能力を求めて
モモンガ用空挺戦車の開発を開始した。
やはり海外製の空挺戦車をベースとして、モモンガ専用の内部設計にあらためたほか、後部兵員室を廃止して荷台スペースとしている。
本車配備前の空挺軍の対戦車戦闘は二分割式対戦車ロケットランチャーを持ったモモンガ2匹と弾薬手モモンガ1匹を中心に護衛小銃手2匹で編成された対戦車戦闘ユニットか、対戦車地雷やグレネードを持ったモモンガによる肉薄攻撃によるものだったが、本車の配備によって迅速な戦車対応が可能になった。
とはいえ主力戦車相手に正面から戦えるものではなく、空挺軍による対戦車戦闘自体が基本的には避けるべき状況であることに変わりはなかった。
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