河川砲艦23号
国外のキュッチャニア海軍に関する情報はほとんどが超ド級戦艦グレート・キュッチャニアに関するものだと言っていい。
しかし、その実際の主力はパトロールボートと河川砲艦である。
キュッチャニア海軍の実態は沿岸海軍なのだ。
「艦長、上流から大型ボートが来たきゅー」
「臨検準備きゅ」
「きゅー」
艦長の命令で艦首にある砲塔(古い戦車の物をそのまま据え付けてある)が、ボートに向けて旋回を始めた。
「こちら河川砲艦23号きゅ、臨検を行うので直ちに停止するきゅー」
外部スピーカーにつながったマイクを持ちモモンガが呼びかける。
相手のボートはすぐに減速を開始した。
「素直だきゅ。ゴムボートの準備はどうだきゅー」
「今膨らませてるきゅー」
艦橋をの扉を開けて艦尾を振り返りながら副官モモンガが答えた。
艦尾ではしぼんだゴムボートにホースをつなぎ、膨らませる作業が進んでいた。
やがてゴムボートが膨らみきると、川に浮かべモモンガたちが乗り込んだ。
「よいしょよいしょ」
ゴムボートに乗った3匹のうち2匹のモモンガがオールを漕いでボートに向かう。
1匹のモモンガは銃を(モモンガとしては)油断なく構えて、攻撃に備えている。
「臨検だきゅー。積み荷はなんだきゅー」
ゴムボートから乗り移った隊長モモンガが言った。
「このボートに住んでるんだきゅー、日用品とドングリだきゅー」
「一応調べるきゅー」
「ムムッ、ダメだきゅ、銃と銃弾は没収だきゅ」
船内を調べていたモモンガがライフル銃を見つけた。
「ひどいきゅー」
「許可証がないならダメだきゅ!」
モモンガが銃を取り上げる。
「ちょっぴり怪しいきゅ、船底にもなにか隠してないか調べるきゅ」
「えっ!」「潜りたくないきゅ」
「どっちかが潜るきゅ」
「じゃあじゃんけんで決めるきゅ」
負けた方のモモンガが意を決してぼちゃんと川に飛び込んだ。
「船底にでかい箱が付けてあったきゅ。一人じゃ持てないきゅー」
「きゅー」
結局自分も潜ることになったモモンガが嫌そうな声を上げる。
「艦長、船底に不審物を発見したきゅー」
箱の中身は密造銃と弾薬だった。
「悪い奴だきゅー」
隊長モモンガは、悪いモモンガを縄でぐるぐる巻きにしながら言った。
「シャワー浴びたいきゅ」「浴びたいきゅー」
「そんなものはないきゅ」
「河川砲艦23号、密輸犯の連行と乗っていたボート移送のため帰還するきゅー」
「了解きゅー、代わりのパトロールボートが来るまでその場で待機するきゅー」
艦尾では濡れたモモンガ二匹が風と太陽光で体を乾かしていた。
「せめてタオルぐらい積んでもいいきゅ」「今度から自分でもってくるきゅ」
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