キュッチャニア物語

ハッピー電子ドングリ

電子ドングリ、みんなハッピー、電子ドングリ。

もう重いバケツを持って買い物に行かなくても大丈夫、電子ドングリカードで取引すればそれでOK。

電子ドングリポイントは1ポイント＝1物理ドングリのレートで銀行やドングリディスペンサーで交換できます。

電子ドングリ取引は政府が追跡・管理できて政府もハッピー。

今すぐ電子ドングリカードを手に入れよう！

みんなハッピー、電子ドングリ。

電子ドングリカードは市民の義務です。

キュッチャニア電子政府計画を強力に支援しよう！

電子ドングリスキャナーは正式な取引許可のあるお店なら政府が無償配布！

ドングリ、ドングリ、電子ドングリ。

スマートフォンアプリとの連携で残高確認も簡単！

スマートフォンを持ってるモモンガを見たことないけど。

みんなハッピー、電子ドングリ。

外国人でも入国時に申請すれば電子ドングリカードで快適生活。

みんなハッピー、電子ドングリ。

外国人向けカードにはGPSもついてて安心安全。

情報部もハッピー。頑張れば録音もできるかも。

みんなハッピー、電子ドングリ。

「キュッチャン総統閣下、電子ドングリカードは完全に市民に行き渡りましたきゅー

（でも市民権のない野良モモンガがいっぱいいるんだきゅー）」

「素晴らしいきゅ。

ゆくゆくは物理ドングリ取引を廃止して監視を強化していくんだきゅ」

「もちろんですきゅー

（また無茶をいうきゅー、物々交換は止めようがないんだきゅ）」

「外国人観光客からも、これで文句は言わせないきゅ」

「実際便利になったと好評ですきゅー

（でも観光客はもともとそんなに来ないんだきゅー）」

ドングリ、ドングリ、電子ドングリ。

「この電子ドングリカードってやつは便利だけど、つまみ食いができないのが残念だきゅ」

「ここからザーって出てきてほしいきゅ」

「ドングリディスペンサーに並んでる間におなかがすいちゃうきゅ」

「カードをなめると舌がピリピリするきゅ」

ハッピー、ハッピー、電子ドングリ。

「緊急信号だきゅ！また電子ドングリのハッキングを試みてる奴がいるきゅ！」

シティ上空をパトロールしている攻撃ヘリの通信室でモモンガが叫んだ。

「了解だきゅ。機首方位変更、現場に急行するきゅ」

パイロットモモンガが答える。

「マンション前に着陸するきゅー」

「全室のドアをぶち壊してハッキング野郎を見つけだすきゅ、手早くやれきゅ」

「了解だきゅー」

「いちいちノックはいらないきゅ。

ショットガンでカギごとブチ開けるきゅー！」

ヘリの兵員室では降下部隊の隊長モモンガが、ヘリの騒音に負けないように怒鳴っている。

電子ドングリのハッキングは犯罪です。

絶対にやめましょう。

ハッキングはアンハッピー。電子ドングリでハッピーな一日を。

「標的を確保したきゅー、輸送車の手配をしてくれきゅー」

ハッピー、ハッピー、電子ドングリ。