KF-21B
5機のKF-21B戦闘機が矢じりのような形の編隊を組み空を飛んでいた。
彼らは地上部隊の要請を受けて地上支援に向かっているのだった。
編隊を組む一機が不意にフラフラとよろけるように動いた。
翼を上下させて周囲に動作不良が起きたことを知らせている。
信頼性の低いエンジンを単発で積んだこの戦闘機は、しばしばこうして飛行中に問題を起こす。
動作不良を起こした機体は編隊から離れると、不時着できる場所を探して高度を落としていった。
周囲は見渡す限り一面の森だ、エンジンが回復しなければ機体を捨てることになるだろう。
編隊長機が位置を変えた。それに合わせて自分も機体を動かして編隊を組み直す。
各機が位置につくと再び自動操縦に切り替えた。
すこし頭を動かして故障機の方を振り返ったが、機体はもう、どこにも見えなかった。
早く新型のKF-32か、せめて双発エンジン型のKF-21Dに装備を更新してもらわないと、自分もいつあんな目に合うかわからない。
もっとも超音速戦闘機のKF-32がこんな田舎の反政府軍相手に地上攻撃ばかりしている自分たちに回ってくることはないだろうから、可能性があるとすればやはり双発型のKF-21Dだろう。
「無線封鎖および自動操縦解除。編隊爆撃の後、各機散開してロケット弾と機関砲で地上支援きゅー」
編隊長の指示を聞き、自動操縦を解除しながら無線で応答する。
こちらの存在に気付いた敵の対空射撃が伸びる。
光の筋が次々に視界をかすめる。
もっとも反政府軍の対空装備は大したことはないから、運が悪くなければ当たることはほとんどない。
べつに、KF-21Bの性能も完成当時からすでに時代遅れだったのだが。
敵の本隊らしいものを爆撃し、指示通りに散開して目に付く目標にロケットと機関砲を発射して敵部隊を混乱させる。
小型のKF-21Bにできるのはその程度のことだ。
基本的に、地上部隊の邪魔になっているものを爆弾で吹き飛ばして、残りの弾薬をばらまいて地上部隊が仕事をしやすくしてやることが、この航空隊の任務だった。
「もう十分だきゅ。全機集合して基地に帰るきゅー」
「了解だきゅー」
4機のKF-21B戦闘機は編隊を組み直すと基地への帰還コースを取った。
「せめてD型がほしいきゅ」
「愚痴なら無線を切ってからにするきゅー」
KF-21戦闘機
キュッチャニア空軍の保有する亜音速ジェット戦闘機。
国外から購入した第2世代超音速ジェット戦闘機をモデルに、国産化計画の一環として縮小コピー的に生み出された。
モモンガの体格に合わせて原型機よりも大幅に小型化され、さらに国産エンジンの出力が足りず音速を出せないことから全長も短く再設計されたことから、むしろ前世代機に似たずんぐりとした形になっている。
現在はその性能の低さから二線級の地上攻撃任務に投入される事が多い。
戦闘機型KF-21Aを原型として、派生機に地上攻撃能力を強化されたKF-21Bと、双発エンジン化されたKF-21Dが存在する。
なおキュッチャニア空軍が本来目指していた超音速戦闘機の完全国産化にはKF-27戦闘機の完成を待たねばならなかった。
KF-27戦闘機
国外製第2世代超音速ジェット戦闘機のデッドコピー。開発が難航したため。完成した時にはこちらも若干時代遅れの性能になっていた。
エンジン出力は原型機の7割ほどのため、なんとか音速を超えることはできるものの実運用上は問題のある機体となってしまった。
現在はエンジンをKF-32と共通化され、上記欠点を克服したKF-27C-2が生産されている。
KF-32戦闘機
KF-27戦闘機の性能に満足できなかった空軍と政府が、輸入した第4世代ジェット戦闘機をコピーさせたキュッチャニア空軍の最新鋭機。
もちろん完全なコピーは出来なかったが、長年第2世代ジェット戦闘機の劣化コピーを主力戦闘機にせざるを得なかったキュッチャニアにとっては快挙であった。
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