世界で一番優しい魔法

莫大な富を欲しいままにし、煌びやかな城館に居を構えるロンズデール家。
その居城のはずれには遥か空高く聳え立つ塔があった。
ロンズデール家の長女は、その塔の上で眠れぬ病に侵されながら幽閉されるように過ごしていた。
夢見る事だけを夢見て、眠れぬ日々を過ごす彼女が十五歳の誕生日にねだったプレゼントは、いつまでも眠らずにお喋りを続けてくれる話相手だった。
そんな彼女の下を一人の女が訪れる。
女は数多くの戦場を渡り歩き、一睡もせずに敵を襲う事の出来る傭兵だという。
自分こそが誕生日のプレゼントだと語った女は、少女が望むならば、死が二人を別つまで眠らずに話し続けると約束する。