だいきゅうわ 君依存
あるいつもと変わらない日、僕は決行に移した。
なるべく人気の少ない場所で彼女に少し意識を失ってもらう薬を嗅がせた。
もう後戻りはできない。
お姫様抱っこで何事もないように堂々とあるけば意外とばれないものだ。
家につくととりあえず身体を拭いて用意していたパジャマに着替えさせる。
油断はできない。数滴薬をココアに混ぜていると、彼女はぼーっと起きてきた。
あくまで自然に、当たり前のように。
「さゆちゃんーくつろげてる?」
彼女は動揺さえしなかった。落ち着いた様子で受け入れようとしているように見えた。ココアの中身にも気づいてるようだった。
なぜ彼女はこんなにも落ち着いているのだろう。
まさか気づいてたのか…そんな様子はなかったのに。
探りを入れる手間を省くように彼女はこの場所を、さらに夜には僕までも受け入れた。怖くなって彼女をぎゅっと抱きしめる。
本気になればなるほど怖くなる。
彼女の気持ちがわからない。
「奈々、好きだよ」
彼女が言った言葉。僕はさゆを、この世から遠ざけて、自分のものにして、それでも彼女は僕が好きなのか?
ストーカーって、怖いものじゃないのか?
彼女の場合は違うらしい。僕という存在が、彼女のすべてになれる。
その事実に気づいたとき、すごく高揚した。
僕はこの生活を守るためなら何でもする。
さゆの写真を親友に送ってみた。
これは、俺に何かがあったときこいつならなんとかさゆをフォローしてくれるだろうという保険でもあった。
智は即飛んできた。
「お前何やってんだよ!!」
さすがに怒られた。仕方ないか。
「ごめん…でも自分でもわからなくて…気づいたらこんなことになってた」
はぁーっとため息をつくと、「とりあえずお前んちいくぞ」とことん面倒見のいいやつだ。
俺と似たような変な性癖がなければ、今頃いい奥さんでもいるだろうに。
智はさゆをえらく気に入った。
見た目の好みも似てるし、似たような性癖があるから当たり前といえば当たり前だが…
くっつきすぎで腹が立ったのでとりあえず叩いといた。
さゆがそれを見て楽しそうにする。
僕もその笑顔を見て安心した。
こいつには定期的に来てもらおう。
何かあった時のために、さゆのために。
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