蛇ときみ

平海ひなと

だいいちわ わたしはだれ

気づいたらここに行た

あったかいココアを出されて


にこにこ笑う彼は何なんだろう

壁一面には私の写真が貼ってあって居心地は悪かったけど、彼なりの愛情だと思って少し嬉しい


「さゆちゃんーくつろげてる?」

にやりという効果音が似合うような笑い方をする彼は私を連れてきた人

連れできた人じゃない、日常から切り離した人


なにがあったかわからない

いつも通り電車に乗って、いつも通り帰宅しようと夜道を歩いていた…


あれ、服がスーツじゃない

某有名ブランドのふわふわのパジャマ


「ねぇねぇ」

ソファーでぼーっとしていた私の横に彼は寄り添う

「会社、退職代行使ったから。アパートも引き払ったよ。」

多分このココアには何か入っている

彼の言葉はふわふわと耳に入ってきて頭からスーッと抜けていく


そう伝えると頭をなでて彼はPCで作業を始めた

テレワークなのだろう


カーテンの隙間から日差しが差し込んだ

あれ、私は誰なんだろう


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る