だいにわ しゃしん
一人暮らしにしては彼の部屋は大きかった
リビング、キッチン、部屋が3部屋
一つの部屋が私の写真で埋め尽くされている
あぁ、この顔の写真はなぜ貼ったんだろう
この顔はマシかな
そんなことを思いながら見ていくと、ごみに捨てた元彼氏とのツーショットがある
元彼氏の顔に画鋲を指している
そういえばこんな人もいたなぁ
写真のほかにも切った髪の毛を束ねたもの
見覚えのある空の化粧品
んー…汚いから捨ててほしいなぁ
一枚、とても嫌な写真があった。
年配の女性と私と年配の男性
何か気持ち悪い。誰かわからないけれどとても気持ち悪い。
私はその写真だけ粉々になるまで破り捨てた
いなくなれいなくなれいなくなれいなくなれいなくなれ
コンコン
律儀にノックの音がする
「さゆちゃんーなにしてるのー?」
私の名前はさゆというらしい
この男が何度も言うからそうなんだろう
「たくさんの写真みてたの。おにいさん、不細工に撮れてるのは貼っちゃだめだよ」
「ぜーんぶかわいいんだよ」
おでこにキスをするとにやりとあの笑い方で私に笑いかけてくる
「あ、写真破っちゃったの。いけない子だね」
「だってすごく気持ち悪かった…あれはだめ…あの写真は怖いの!!」
初めて怒鳴った。お兄さんは抱きしめてくれたけど、私は背中に爪を立てる。
お兄さんは何も言わない。なにもしない。
ふと顔を見てみた。睨んだようなまなざしなのに口元はにやりと笑っている
蛇のようだと思った。
なぜかいやな気持になって、お兄さんの首筋をつかんだ。
爪が尖っていてツーっと一筋の血が流れる
「気は済んだ?」
はっと我に返った。
「ごめんなさい、そんなつもりはなくて…」
「大丈夫だよ、僕はさゆのすべてが愛おしいから」
部屋から出ていこうとするお兄さんの服の裾をひっぱった
「ねえ、どこにいくの?一人にしないで」
「仕事だよ。さゆちゃんもこっちの部屋においで」
PCで作業する横でずっと膝枕をしてもらっていた
そういえばこの人なんて言う名前なんだろう
お兄さんはぐーっとのびをした
もう外は暗くなっていた
「おまたせ。何か作っておくからお風呂にいておいで」
ぽんっとタオルと着替えを渡された
ふわふわ…
言われた通りお風呂に行くと、もうご飯が仕上がっていた。
ココアの中の何かも体内から消えたのだろう。意識がはっきりしてきた。
お兄さんはドライヤーをしてくれて、そのあとうしろからぎゅっと抱きしめられた。
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