だいよんわ 貴方の一部

朝起きると朝食が用意されていた。完璧すぎるあの人はどこまで私のことを愛してくれているのだろう。

「おはよ、食べようか」

「ありがとう」

昨日の跡がひりひりと痛む。触ってみるとかさぶたができていた。


「痛かったでしょ、ごめんね?」

「いいの、私の血液があなたの一部になったんだから」

にやりと笑ってご機嫌そうな彼…彼?


「ねえ、名前なんて言うの?」

「あぁー…みんな奈々っていうよ」

女の子みたいな名前に驚いたけど、ナナって名前がすごく似合う。

「奈々…奈々…」

「そんなに呼ばないでよ、ハズイじゃん」

はじめて奈々の照れる顔を見た


朝食の後は奈々はPCに向かって仕事に取り掛かってしまう。

やることのない私は奈々の膝枕でだらだらしたり、写真部屋で写真を眺めたりする。


「ねえ奈々、なんであんなに写真貼ってあるの?」

奈々は一瞬だけ驚いた顔をみせたがすぐに戻って

「さゆがかわいいからだよ」

と本音と嘘が入り混じったようなことを言ってはぐらかされた。


また一日が終わってベッドに潜る。今日もまたかまれるのかな。


カチチチ…


違う

今日は本当に奈々はやる気だ


「ねえ見てさゆ。これなにかわかる?」

「カッターナイフ…」

無言で渡された。そういうことだと察して左手首に浅く傷をつけた

「いいこだね。さゆのそういうところが好きなんだ」

流れる血を舐めながら上目遣いでこちらをみる奈々は反則だと思う。


傷口から飲まれる感覚がする

私の一部が奈々になる

それが心地よくてもう一か所深く傷をつけた


このままどこまで行くんだろう

どこまで私は奈々に魅了されていくんだろう。

長い長い口づけが血の味で満たされていく


止血をしてベッドに入ると奈々の腕枕ですぐ眠ってしまった


カーテンの隙間から日差しが差してきて目が覚めた

奈々が珍しく隣にいる。あぁ、休日か。


「さゆ?」

ぎゅっと抱きしめられ少しの息苦しさの中、奈々の胸に顔をうずめた

ずっとこうしていたい。奈々の一部になりたい。


あれ?いつからこう思うようになったんだろう

奈々は不思議だ。いつのまにか奈々のことしか考えてない。

私、どうなっちゃうんだろう。





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