だいじゅうきゅうわ お兄ちゃん

さゆの変化は充分予想できていた

だから用意もできていたし、対処もできていたと思う

でも病院にも連れていけない今の状況で俺にできることには限度があった


暴れているさゆは泣きじゃくっていた

よっぽどつらかったんだろうと想像できる


俺に何ができるんだろう

そんなことで頭がいっぱいになって仕事に集中できない

…そうだ、明日は出社日だ


「智?」

「はいはい、なに電話してくんの珍しいね」

「明日出社なんだよ、さゆのこと見ててくんない?」

「襲っちゃっていいなら」


速攻切ったら即折り返しかかってきた


「嘘だよ冗談。パニックの時にやってることはなんとなくわかってるから」

「…助かるよ」


その日の夜は特にパニックにも陥らず、抱き合いながら寝た


「やっほー!おはよー!」

「無駄に元気だな…」

「そりゃさゆちゃんのそばにいられるからねー」

さゆは愛想笑いで流していた


「俺もちょっと仕事しながらだけど、誰もいないよりましでしょ」

「頼んだよ、俺今日は定時過ぎるかもなんだよ」

「はいはいー」


ものすごい不安を抱えて出社した。

まぁ、智になら…一瞬最低なことが頭をよぎったが、すぐ切り替えた




「さゆちゃん、今のところどう?」

「んー…頭がもやもやしてる」

さゆちゃんは俺に何の警戒もしてない

お兄ちゃんと最初聞いた時には少し笑いそうになった

奈々と上手くいってる女に何も思わないわけないだろう

…自分だって奈々と同じなんだから


「ひっ、や、やああぁ」

小さな声で頭をかきむしっていた。少し考え事をしている間にパニックを起こしていた

「大丈夫だよー、俺がいるからね」

例の「液体」のボトルを振り、口に含む。なにを混ぜてるのやら…

手首を無理やり押さえつけて口移しで飲ませる

手首を話すとさゆちゃんは抱き着いて、俺の首筋を噛んだ

落ち着くんだろうな


血が滲みだしても構わず噛み続けている

少しずつ噛む力が弱くなって、ストンと眠りについてしまった

俺はこんな状況なのに別の感情で頭がいっぱいになっていた

「犯したい」

今なら…そんな最低なことを考えてしまった。

ソファーに寝かせて毛布を掛ける

お兄ちゃんか…そのうち卒業してやろう。

俺は悪者でいい。さゆちゃんはともかく、奈々はそんな俺でも受け入れるだろう

あいつは俺から離れられない。そんなことわかりきっている


奈々に一応連絡を入れて、自分も落ち着くために部屋を見渡した

廊下へのドアが開いていた。そこから入ったことのない部屋が少し空いているのが見えた


悪いなとは思いつつ少し興味があったので覗いてみることにした

目を疑うような光景に驚きと奈々ならやりかねないとも思った

大量の写真に髪、写真はどれも疲れているものか過去のものだった


「そりゃそうなるよな…」

独り言をいうと、さゆちゃんのいる部屋に戻った

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