だいじゅういちわ 散歩
日差しが照り付ける。
もうそろそろ夏がやってくる。
公園にクレープの屋台が来ていた。
「ねぇねぇ!奈々!」
「はいはい」
注文をしていると店主の視線に気づいた。首筋の噛み跡だ。
でも隠すことなんてない。奈々のくれた愛に恥なんてない。
ベンチに座ってクレープを頬張る。
クリームが漏れて頬につくと奈々が舐めてくれた。
奈々といるとやけに周りの視線が気になる。
この顔だもんなぁ
「奈々は顔もいいし、なんで私なんか…」
そう言いかけたとき、唇を塞がれた。
さすがに公園だから少しの間だったけど、びっくりして周りをきょろきょろ見渡してしまった。
「さゆがいいの」
笑顔がすごくまぶしかった。
久しぶりの外はとても気持ちよかった。
その公園にはちょっとした花畑があった。
「さゆ、そこ立って」
奈々がカメラを構える。
「堂々と撮っていいのも違和感あるね」
二人で笑いあう。
「そろそろ帰ろうか」
帰路につくと奈々は手を繋いで来た。
手を繋いで仲良く帰る。そんな日常が訪れると思わなかった。
家につくといっしょにパン作りをした
不器用な私にいろいろと教えてくれた
奈々は器用なうえに気も利く。そんな奈々と一緒に居られて私は幸せ者だなぁ…
「さっきの写真現像してみたよ」
奈々は写真もうまかった。奇麗な構図で撮れている。
「ここに飾っておくからね」
写真部屋の壁に一枚、思い出が増えた。
ジーっと眺めていると奈々は笑って、
「こんなに堂々と撮れて、喜んでもらえるならもっと早く一緒になればよかった。」
頭を撫でられる。
私ももっと早く奈々に会いたかった。
会う前の記憶は自分が、自分自身がおぼろげにしてしまっているけれど…
私は奈々のそばにいるべきなんだ。
自分にそう言い聞かせた。
突然ぎゅっと抱きしめられた。
蛇のような舌が私の中に入ってくる。
絡めあう舌、手を繋いで少し涙目で奈々のことを見た
奈々も目を開けていてぞくぞくした
「何考えてるかなんてすぐわかるんだよ」
「おみとおしかぁ…」
にやりと笑う奈々。久々に見た、その表情。
そしてその舌…やっぱり私には耐えられないくらいに欲情させるものだった。
「さゆ、俺はさゆのことどうしようもなく好きだけど、どうしようもなく壊したいんだよ」
「わかってる。いつでも壊されていい。私は奈々のものになるの」
確認するように口づけをして、額を合わせて手を繋いだ。
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