だいじゅうわ 変化
「おはよう、奈々」
今日は休日。奈々とゆっくりできるから休日は今でも大好きだ。
「さゆ…」
ぎゅっと抱かれるとすごく落ち着く。
コーヒーのにおいが充満して、カーテンをあけると日差しが差し込んでくる
ぼーっと窓辺に座っていると奈々がコーヒーを持ってきてくれた。
「よかったら散歩にでも行かない?」
ものすごく驚いた。
「外に出てもいいの?」
「今のところ大丈夫だよ」
びっくりした。まさかこんなことを言われるとは。
「信頼してるから手錠なんかもしない。足枷も外していいよ」
むしろ私の方が緊張している。
あまり朝食がのどを通らなかった。
用意してくれていた私服はとてもかわいくて、私の趣味を完全に把握していた。
「かわいい…」
ぼそっとつぶやくと、
「だいたいさゆの好みなんて把握してるから」
「なんてってなによ」
むーっとしたらクスクスと笑う奈々に癒される。
「でも、ありがと。」
「うん、このくらいいいんだよ。」
頭を撫でられる。
化粧品も用意してあって、どこまで準備のいい男なのだろうと驚いた
化粧をするのは久しぶりで、少し感覚が鈍っていた。
でも何とか見られるくらいにはして、髪は奈々が巻いてくれた。
「なんで髪なんて巻けるの?」
「内緒」
なんだかもやもやする。
「別の女にしてたんでしょー」
「なに、妬いてるの?」
「そんなんじゃないし…」
クスクスすごく楽しそう。なんだかむっとした。
「前職が美容師なんだよ。安心した?」
「じゃあ今度髪染めてくれる?」
「いいよ、お姫様のご所望とあれば」
すごくきれいにしてくれて、外に行くという実感が湧いてくる。
久しぶりすぎて、ドキドキしてきた。
行くよ。
ドアが開かれるいつぞやに怒らせたときとは違う。
ちゃんと今度は奈々と一緒だ。
エレベーターを待つ間もひやひやした。
奈々は堂々としていた
「堂々としてた方がばれないもんだよ」
ぼそっとつぶやく
下につくと見たことのある道だった。
頭の中が暴走する。記憶が掻き乱れる。
少しパニックを起こしているのが自分でもわかる。
「さゆ、大丈夫。ここは前の世界じゃない」
そうだ。ここは前いた世界じゃない。
奈々が作り上げてくれた世界。そう考えると全く知らない場所に思えてきた。
ちょっとした散歩も私たちには危険で、でも自然と怖くはなかった。
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