だいななわ 欲情

智は帰り際、こそっと耳打ちして

「ほんとに辛かったら教えて、また来るから」

と言ってくれた。奈々の過去の恋愛遍歴が予想できるような…


お皿の片づけをしながら、奈々は少し疲れたような安心したような、複雑な顔をしていた。

「奈々、お疲れ様。」

「ありがとう。あいつ、いやじゃなかった?」

「んーん、すごく優しかった。また会いたい。」

お皿を洗う手がピタッと止まる

キュッと蛇口をひねって止めるとすぐに抱きしめてきた

「お前何言ってんの?」

手首をつかまれる。すごい力で壁に押し付けられる

「あいつのほうがよかった?あいつのところに行く?」


すごく睨みつけてくる。よっぽど不快だったんだろう。

「いやだ、見捨てないで」

涙が自然と流れてくる。自分でも奈々にここまで依存してたとは思わなかった。


「ごめんね、泣かないで」

涙を舐めて頭を撫でて、奈々は口づけをした。

いつもの、絡みついてくる気持ちいい舌。

この舌にいつもうずうずと身体が疼いてしまう

奈々は気づいていて手を出してこない


愛されてるのか、偽物なのか、それだけで判断するものではないけど…

「ねぇ、どうして奈々は私のこと抱かないの?」

自分でもストレートすぎたと思った。

奈々は私を離して目をそらした。


「手に入った気になるのが嫌なんだよ」


智から聞いた奈々の過去

たぶんそこから来ているんだろうな

私は奈々を後ろからギューッと抱きしめた

「もう手に入ってるじゃん」

奈々は私を抱きしめて

「もうちょっと待って」

「いつまでも待つよ」

安心したのか、片づけに戻る奈々。私も追って片づけをする。

…少し気まずかった


ベットに入るとギューッと抱きしめてきた

今日は噛みついてこない。なにか距離を感じる。

「ねぇ、噛まないの?」

「今日はいいのー」

なんだかやっぱり遠慮がちな気がする

奈々の手を取る。手首に噛みついてみるとビクッと奈々の身体が震えた

薄っすら血が出る。今日は奈々が私の中に流れ込んでくる。


「奈々、好きだよ」

はっきりといったのは初めてだ。


奈々はびっくりしたようでがばっと座った

「俺のこと…?」

「他に誰がいるのよ」

「さゆ…」

少し困ったような、嬉しそうな、わからない


「俺、こんなに好きになったのさゆが初めてなんだ。大切にしたい。でもどうしたらいいのかわからなくなって…」

「今のままでいいんだよ。充分愛してもらってるの感じてる。」

「さゆ…」

ぎゅっと抱き合いながら眠りにつく。

奈々は安心したのかこの日は眠りにつくのが早かった。

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