だいじゅうさんわ 親友?

「ごめん、気持ち悪くてもうつきあえない。」


高校の渡り廊下

風が強く吹き付ける中もう何度も言われてきた言葉をまた言われた。


「あーあ、あの子も自分から告ってなかったっけ」

「だから最初に言ったのに」

智とは高校から同じだった


「内容が内容だから噂にはならないけどひっどいよねー」

「俺がマイノリティなんだよ」

智はもうこのころから白髪でピアスを耳にも口にもあけていた

智は告白の類を全部断っていた

俺みたいになるよりよっぽどいいのかもしれない


「傷つくのが怖くないの?」

「…受け入れてほしかった」

めんどくさい女々しい男だと思われたかな。


「俺もマイノリティなんだよ」

びっくりして顔をばっと上げる

「合う人間なんていないと思ってた。お前に会うまで」

「俺男趣味はねぇよ」

智が笑う。こいつの笑い顔は歪だと思った。

口元のピアスが色気があっていいなぁ…と見惚れていると、バレてると言わんばかりに頭を撫でられた。


「今度お前んち行っていい?」

智は何の躊躇もなく距離を詰めてくる

「本当に、俺男趣味ないからな?」

こうやって俺と智は仲良くなっていった。


「ストックホルム症候群?」

「そう、誘拐犯に惚れるってやつ」

小説のページにそんな言葉を見つけた。

「いいね、そういうの」

やっぱり智とはこういうところが合うんだよな。


「お前が女ならなぁ」

この言葉がまずかった。智の何かに触れたんだろう。


「俺、男でもいけるよ」

ベッドの上に押し付けられる

「俺は、無理だっつーの」

智はにこっと笑うと首筋に噛みついた。

「そこ隠せな…痛っ…」

噛み跡から血が滲む。そこから血を吸う。耳鳴りがして何も聞こえなくなる。

カーテンの隙間から風が吹き込んでくる。


「どう?される方もいいでしょ」

ニヒルな笑い方に腹が立つ。

「悪くはないけどさぁ…相手がお前なのがな」

言葉を塞ぐように口づけをされる。

舌ピアスが妙に邪魔に感じた。


智の首筋を噛みつく。血の味がする。

噛みついている間頭を撫でられて少し安心する。


「残念、男もイケるって言ったけどここまでなんだよね。俺もこれ以上の趣味はないよ。抜いてやりたいけどね。」

「…充分だよ」


しばらくの間俺と智はそんな関係を続けた。

噛み跡はやはりすこし噂になったけど、誰も何か言ってくることはなかった。


「理解してくれる奴なんてそうそういないよな…っていうか気持ち悪いよな、こういう性癖って」

「気持ち悪いから、本物なんじゃないの」


智は口づけをすると、頭を撫でてくる。

「俺はお前のこと、本気だけど」

「…そうだな」


お互い同じ大学に入ったり、俺に彼女ができてダメになることを繰り返したり、そんなこともありながら智との関係も続いていた。


智はいつも拒否することなく俺を受け入れた。

社会人になって、智ともご無沙汰になった時にさゆにであった。



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