だいじゅうななわ 束縛

「奈々ー朝だよー」

珍しく奈々が寝坊をしてきた。

あんなことがあった日の朝だから、しょうがないなと思った。

「うわ、ごめん朝食用意できる?」

慌ててPCにむかう奈々


コーヒー以外は禁止されてたけど、トーストとコーヒーを用意して持っていく

「ごめん、こんなことさせて」

「奈々は私に頼らなさすぎだよ」

「さゆには何もしてほしくないんだよ」

言葉の本質がわからないまま、私も自分の分のコーヒーを入れて窓際でカーテンを開けて日差しを浴びながらゆったりする。

この時間も何気に大好きだ。


奈々が仕事している間何をしているかというと、映画を見たり本を読んだり、意外と自由に過ごせている。

でも罪悪感もある。ダラダラしていていいのかなぁ。


奈々の仕事部屋に行って膝枕をしてもらう。

「ねぇ奈々、私何かしなくていいのかなぁ」

「さゆはそのままでいいんだよ」

んーっと唸って本の続きを読む。

「本、読み終わったら何か新しいのかっていいからね」

こんな至れり尽くせりでいいのだろうか


奈々の仕事が終わった。

私は奈々に何かできているのだろうか。


「さゆ、またいろいろ考えているでしょう。俺のものだけでいてくれればそれでいいんだよ」

足枷がじゃらりとなる

そうだ、この人のものだった。私はただこの人のものでいればいい。


「今日も奈々は私のこと抱いてくれるのかなーって考えてたんだよ」

「は?ちょっとさゆ…」

意外と奈々は恥ずかしがりだ。

可愛いなぁ…と思っていたら頭をぽふっと叩かれた。

「さゆが俺のことからかうなんて」

「失望した?」

「いや、驚いただけ」

奈々にギューッと抱き着くと奈々も抱きしめてくる

髪の毛をつかんで、顔を近づけて、蛇のような舌でキスをした


私の役目は奈々の安定剤

それがずっと変わらないといいな

奈々の胸の中で、私は願った


「さゆ、久しぶりにやらない?」

カッターナイフを取りでしてくる

この意味はもう分かってる

「わかった」

浅いような、深いような微妙な深さで切りつける。

奈々は舐めたり吸ったりして嬉しそうにする

この顔が好きだから、私は自分を傷つけることをやめない

自分を傷つけるなんてやめなよ

そんな常識は奈々と私の世界にはない


奈々は首筋に噛みついてくるんじゃなくてキスマークを付けた

簡単に取れないような。何か所も何か所も。


束縛されてる。

そんな居心地の良さがあった。

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