第7話 昔話・八条への途上にて
昔語りが言う。
この事件の兆候を、
さて、出家をされて院となった御方だが、その若さで大人しく仏事に励まれるような
御母上の妹君の九の御方、
ただ一人残された姫君は、
彰子様とは一条天皇の中宮であられた御方で、御堂様の一の
別の語りが言う。
一人残された姫君は、中務の生んだ妹宮だった。内親王宣下はおろか、父院からも我が子と認められなかった。
「おのが子にせよ、我は知らず」
院から命じられた命婦は、中務の叔母だとも聞く。誰も姫君に自らの生まれを知らせず、
ところが人の口に戸は立てられぬ、宮仕えを始めて間もなく、噂は次々の姫君の耳に注ぎ込まれる。姫君の御心は次第に乱れ、おかしな挙動と素行が見受けられるようになる。
冷泉院、花山院、そしてこの姫君、未だに大納言
――*――*――
三条大路を過ぎた辺りより、公家の屋敷は少なくなる。四条大路の周辺は町屋がひしめく。五条を過ぎれば、麦の穂が一面に揺れる畑が広がる。かつての
道を西にとって
供に連れた乳母子の兄、
左中将
左中将は常より、この本宅にいる訳ではない。大概は
芳紀が声を張り上げて案内を乞うが、誰も出てこない。仕方なしに門を潜り、冬枯れの庭を馬を曳いて進む。両脇に簡素な塀と掘立の家や畑が覗く。管理する者は住まわせているようだ。その内に、使用人らしき若い男が現れて用向きを尋ねる。文を遣わせた安倍幸親だと名乗ると、更に何人かの下男を呼んで馬を預かる。
通されたのは
家司が若い者を呼んで
上座に着いた道雅が
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