第7話 豆苗
シャキシャキとした歯ごたえでビタミンなどの栄養もあるという豆苗。
生のままサラダで食べても、炒めてたり茹でてスープにしても美味しく食べることができる。そしてなにより、豆苗は1~2回収穫してもまた再生するらしい。
「お兄ちゃん、このくらいでいいの?」
「うん。そんな感じで一番下にある芽の部分は残すようにして切るんだ。そうするとここから新しい芽が生えてくるらしいよ」
「なるほど、さすがレオル様ですね」
「いや、僕が知っていたわけじゃなくて、ウインドウの説明に書いてあっただけだよ」
僕もウインドウの説明を見るまで知らなかったけれど、どうやらエンドウの新芽の状態のことを豆苗と呼び、エンドウが育って、サヤごと食べられる状態で収穫すればサヤエンドウ、成長してサヤの中の種が大きくなればグリーンピースとなるようだ。
豆苗とサヤエンドウとグリーンピースが全部同じものから育つなんて面白い野菜だね。当然成長した豆はまた同じように豆苗から育てることができるはずだ。
ただしこれはスキルでポイントと引き換えた種だったから、成長してもう一度畑に埋めて何度も収穫が繰り返せるのかは実際に育ててみないと分からない。
「それじゃあ畑のこっちの部分はそのままで、こっちの部分はあとでもう一度収穫してみよう」
「うん!」
「承知しました」
前世の知識だと密集した状態で、水を入れて簡単に育てられるらしいけれど、今回はそのままエンドウとして育てるし、畑も十二分に広いから畑に種を植えてそのまま土で育てる。
豆苗は収穫してから1~2回ほど再生するらしいけれど、このスキルによって育った作物もそうなのかは分からない。そのため、植えたエンドウを3つに分けて育ててみることにした。
ひとつ目のグループは一度も豆苗として収穫しないでそのまま育てる。ふたつ目のグループは一度だけ豆苗として収穫して、そのあとは普通に育てていく。3つ目は2回豆苗として収穫してから、そのままエンドウとして育てる予定だ。
一番の理想は豆苗として2回収穫したあとに、そのままサヤエンドウとグリーンピースとして収穫しつつ一部の種を残しておいて、また豆苗から新たに育てられたら嬉しいんだけれどなあ。
こればかりは実際に育ってみないと分からない。それに収穫した種で次も同じ時間で育てられるかや、畑を休ませたり同じ作物を育てない方がいいのかも分からないし、確認しなくちゃいけないことが多すぎるよ。
「レオル様、ただいま戻りました」
「おかえり、ルーベル……ってすごい獲物だね!?」
夕方になってルーベルが帰ってきたのだけれど、馬車の後ろには大きなイノシシ型の魔物が括り付けてあった。どうやらバルトルの森で狩ってきたみたいだ。
「ええ、運よくワイルドボアを狩ることができました。血抜きは森で行いましたが、解体は時間が掛かりそうだったため、こちらで行うことにしました」
「そうだね、森の中だと魔物も集まってきそうだもんね」
バルトルの森には強い魔物が多いらしいし、血の匂いで他の魔物が集まってくる可能性もある。ここなら井戸の水があるから落ち着いて解体作業ができる。
「こっちもいろいろといい感じの結果になったよ。詳しい報告は後にして、少し早いけれど晩ご飯の準備をしようか」
「承知しました。私はこいつを解体するので、セシルは料理の方を頼む」
「かしこまりました、ルーベル様」
「ミーシャもご飯を作るお手伝いする!」
バルトルの森がどうなっているかや、こちらの井戸や畑の確認の結果を共有する前に、日が暮れる前に解体作業や料理を終わらせることにしよう。
「レオル様、ルーベル様、晩ご飯ができましたよ」
「ありがとう、セシル。ルーベル、一度解体作業は止めてご飯にしようか」
「ええ、かしこまりました」
セシルとミーシャには晩ご飯を作ってもらって、僕とルーベルはルーベルが狩ってくれたワイルドボアの解体を行っていた。当然みんなには僕が解体作業をする必要はないと言われたけれど、さすがにこの状況で僕だけ何もしないという選択肢はない。
それにもしかしたら解体作業も今後の役に立つ可能性もゼロじゃないからね。こんな場所に追放されて、いろいろと僕も覚悟が決まったみたいだ。多少血の匂いを嗅いだり、ワイルドボアの内臓を見て気持ち悪くなったけれど、なんとか解体作業の手伝いを務めることができた。
「本日の晩ご飯はワイルドボアのレバーと豆苗と芋の炒め物です」
「うわあ~おいしそうだね!」
「ありがとうございます。もう少しいろんなものが揃えば、もっといろいろと作れたので少し残念です」
「ミーシャも頑張ったんだよ!」
「セシル、ミーシャ、ありがとうね。十分過ぎるほどおいしそうだよ!」
今日の晩ご飯は2人が作ってくれた。お皿の上にはワイルドボアのレバーと馬車に積んで持ってきていたこの異世界の芋、そして今日収穫したばかりの豆苗がたっぷりと入っている。
エンドウの種はいっぱい植えたから、4人で食べる分には十分過ぎるほどの豆苗を収穫することができた。
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