第17話 開拓地レベル


「ほう、お湯がいつでも浴びられるのは素晴らしいのう。……これを作ったのはルーベルのやつか。素人にしてはなかなかじゃが、細部がまだ甘い。明日少し手を加えさせてもらうとしよう」


 万能執事であるルーベルが作ってくれた簡易シャワー室を検分しながら、そんなことを言うギル。僕的には完璧な出来栄えに見えるけれど、職人のギルからしたら、手を加えるところがあるらしい。


「このように、ここを引っ張ると上に溜まっているお湯が出てきます。他の人も使用するので、あまりお湯を使いすぎないように注意してくださいね」


「すごい、まさか温かいお湯で身体を洗えるなんて!」


「この場所で水をこんなに使えるなんて本当にすごいわ!」


 セシルの説明に女性2人がとても喜んでいる。やっぱり女性は身体を洗えて嬉しいみたいだ。まさか開拓地でシャワーを浴びられるなんて思ってもいなかっただろう。ミーシャの火魔法のおかげだね。


 理想を言えば元いた屋敷にもあったお風呂を作りたいところだけれど、さすがにそれは結構な労力が必要そうだから後回しだ。




「ああ、屋根のある家で眠れるなんて!」


「家屋は少しずつ増やしていくつもりだから、しばらくの間はここで我慢してね」


「とんでもないです! レオル様、本当に素晴らしいです!」


 順番にシャワーを浴びてもらいつつ、開拓民のみんなに今日寝てもらう家屋へと案内した。さすがに7人がここで寝てもらうとなると、少し狭いかもしれないけれど、さすがに今日来たばかりである開拓民のみんなと一緒に寝るわけにはいかない。


 ないとは思うけれど、悪いことを考えている人もいるかもしれないからね。


「むむ、この作り……実に見事な作りじゃ! まさかこれもルーベルのやつが作ったのか!?」


「いえ、これはレオル様のお力で建てた家屋ですよ」


「な、なに!? こんな立派な建物をレオル様が!」


「正確に言うと僕のスキルの力だね。詳しいことはまた明日説明するよ」


「ほう、こいつをスキルでか!」


 開拓者スキルで建てた家屋をじっくりと検分しているギル。どうやら他のみんなとは見ている場所が違うみたいだ。詳しい開拓者スキルの能力はまた明日みんなと一緒に説明するとしよう。


 さあ、少ないとはいえ開拓民が来てくれたことだし、明日から今まで以上に忙しくなりそうだぞ!






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ふあ~あ……」


 開拓民が来てくれた翌日、まだ少し早いけれど目が覚めてしまった。両隣で寝ているセシルとミーシャはまだ寝ているみたいだ。……2人とも本当に無防備に寝ている。まったく、2人とももう少し自分たちが魅力的な女性だということを自覚してほしい。


 僕たちから少し離れた場所、家屋の入り口のところでルーベルは寝ている。何かあった時にすぐ対応できるようにと入り口の近くで寝てくれているんだよね。


『開拓地レベルが2に上がりました』


「うわっ!?」


 目が覚めて身体を起こしたところでいきなり開拓者スキルのウインドウが出てきて、驚いて大きな声を上げてしまった。


「レオル様、どうかなさいましたか!」


「レオル様、いかがなされました!」


「ふにゅ~おはよう、レオルお兄ちゃん」


 僕が大声を出してしまったことにより、みんなを起こしてしまった。セシルとルーベルはすでに近くに置いていたナイフとレイピアを構えている。


「ごめん、びっくりしただけだよ。なんか開拓地レベルが上がったみたいなんだ」


 みんなに武器を下ろすように伝えてから、改めて開拓者スキルのウインドウを見てみる。


『レオルの開拓地』

 レベル:2

 ポイント:110P


「レベルが2に上がっているみたいだ。それに昨日は90Pだったのに今日は20P増えているね」


 開拓者スキルが発動してから一度も上がらなかったレベルが2に上がっていた。もしかしたら、新しい開拓民を迎えたからかな? それともこの開拓地の施設が充実してきた、あるいはその両方か。


 ポイントが多くもらえたのはレベルが上がったボーナスで10P多く貰えたか、レベルが2へ上がったことによって毎日20Pもらえるようになったかだ。さすがにボーナスで10Pは少ないから、毎日20P増えるようになった可能性が高いかもしれない。


「うわっ、設置できるようになった施設や作物や資材なんかが凄く増えているよ! えっ、こんなものまで!?」


 2レベルに上がったことにより、これまでにポイントで得ることができた施設や作物なんかに新しい種類が追加されている。さすがにこれまでの種類だけだと少し少ないかなと思っていたところだからとてもありがたい。


「さすがレオル様ですね!」


「うむ、これでさらに開拓地が快適になることでしょう」


「ふにゅ~すごいね、レオルお兄ちゃん」


「うん。ミーシャはもうちょっと寝てていいからね」


 まだ眠そうにまぶたをこすっているミーシャ。相変わらず可愛らしいな。


 セシルとルーベルには悪いけれど、開拓地レベルが上がったことによって今日開拓民のみんなに割り振る予定だった作業を一から考えさないといけなくなった。


 いろいろとできることが増えたみたいだし、セシルとルーベルに相談するとしよう。

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