第18話 新しい設備
「みんな、おはよう。昨日はよく眠れた?」
「はい! 屋根のある家の中でとても快適に眠ることができました!」
「雨風が入ってこない場所で寝られるだけで問題ありません!」
……どうやらあの街での彼らの生活水準はかなり低かったらしい。
「それじゃあ今日は早速皆さんにも働いてもらうよ。その前に僕の『開拓者』スキルの力を見せるね」
昨日やってきた開拓民のみんなを引き連れて、開拓地の端っこまで移動してきた。この開拓地スキルは開拓地として設定したこの場所から一定距離離れた場所には施設を設置できなくなる。
「それじゃあ、いくよ」
開拓民のみんなは不思議そうな顔をしている。
僕は開拓者スキルのウインドウを操作してとある施設を選択した。そしていつも通りの確認画面が出てきて、そのあとに選択した施設をどこに設置するのかを頭の中に思い描く。
この施設も他の施設と同様に決められた面積の範囲内で形をいろいろといじれることはすすでに確認した。早朝のうちにセシルやルーベルと相談して、すでにどのようなサイズにするかは決めている。
頭の中に思い描いたまま、確認画面の【はい】を選択した。
「こ、これは!?」
「なんじゃ、こりゃ!」
「ママ、すっごいよ!」
みんなが見ている中、目の前に突然高さ3メートル、厚さが1メートルほどの巨大な壁が地面から盛り上がってきた。
そう、僕の開拓地のレベルが2に上がったことで設置できるようになった『城壁(土)』だ。この辺りにはたまにだが魔物もやってくるから、これくらいの頑丈な壁にしてみた。
その分10Pで設置できる長さは4方の1面分ほどしかできないから、合計で40Pも使ってしまうけれど安全が第一だもんね。これまでに僕たちが作っていた木の柵だと、少し強い魔物ならすぐに壊すことができてしまうし、人ならすぐに乗り越えることができてしまうから、これでだいぶ安心できるようになる。
「こ、こいつは驚いたのう! まさかスキルでこんなことが可能とは……」
ドワーフのギルは目の前の出来事に驚きつつも、できたばかりの土の壁を検分している。同様に僕たちの拠点を囲むように残る3方にも壁を作った。
たった10人でこのスペースは使えない気もするけれど、まだ他の施設も増やすし他の開拓民も受け入れるつもりだから、かなり広めに囲った。これまでに僕たちが作った柵はあまり役に立たなくなってしまったけれど、まあそれはそれだ。
「す、すごい! これまでに何もなかった場所にこんな立派な壁が……」
「これがレオル様のお力です!」
「レオルお兄ちゃんはすごいでしょ!」
セシルとミーシャが自分のことのように胸を張る。
うん、畑や立派な城壁ができて、多少は開拓地らしくなってきたね。
「それでこっちの畑も僕のスキルで作ったものなんだけれど、他の畑よりもかなり成長速度が早いみたいなんだ。そこの井戸の水はいくらでも汲めるみたいだから、水はいくらでも飲んで、野菜はいくらでも食べて大丈夫だからね」
「た、確かにたった一晩でこんなに成長している!?」
「こ、この荒れ果てた地で作物が育つだなんて!?」
改めて村を案内するとみんなとても驚いていみたいだ。確かに戦闘には役に立たないかもしれないけれど、とんでもなく便利なスキルだよね。
「こういう施設や作物なんかを作り出すことができるスキルなんだ。みんなの住む家も作れるんだけれど、少し時間が必要だからもう少し待ってね」
「すごい! レオル様のスキルは家まで建てられるのですね!」
「もちろん大丈夫です! いくらでも待ちます!」
できれば1世帯につき1軒の家を建ててあげたいところだけれど、今はポイントが足りない。女性と子供が寝る場所は分けておきたいから、少なくともあと1軒は早めに設置しておきたいところかな。
「それじゃあ次は畑を拡張していこう」
「おお、こんな荒れ果てた土地にこんなに立派な畑が!?」
「き、奇跡よ!」
4方の土壁と新たにひとつ畑を増やして、これで残りのポイントは50Pになる。
あとは新しい作物の種だ。今回レベルが2に上がったことによって、新たに多くの種類の作物の種を入手することができるようになった。
セシルとルーベルと相談をして、まずは主食のパンを作るための小麦という作物をたくさん育てていくことにした。小麦は見たことがないけれど、似たような作物がこちらの世界にもあって、それでパンを焼いている。
前世の世界で主食だった米という作物は今回のレベルアップでは出なかったけれど、いずれ出てきてくれたら食べてみたいな。
「それじゃあみんなで種を植えていこう。育て方もいろいろ違うから、みんなちゃんと覚えてね」
「「「はい!!」」」
うん、みんなとてもいい返事だ。やっぱり畑は自分たちの食事に直結するわけだから、そりゃやる気も違うよね。
ウインドウの説明によると、小麦を育てる時には他の野菜とは違って、麦踏みという作業を行った方が良く育つみたいだ。当たり前だけど、それぞれの作物で育て方が違うし、エンドウや枝豆なんかのように収穫する時期で形や味が全然異なる。
これからここで生活する以上、みんなにもそれぞれの野菜の育て方を覚えてもらわないと。
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