第12話 枝豆
枝豆の種――つまりは大豆を植えて育てていくと、緑色のサヤに豆が詰まった状態の枝豆に成長していく。そして茎や葉が枯れてサヤが茶色になり、サヤを振ってカラカラと鳴るくらいになると、大豆になるらしい。
そして大豆に箱などをかぶせて光を当てずに水を多く与えて育てると、白い芽が伸びていく。その白い部分がもやしになるようだ。
当然僕にそんな知識はなかったけれど、ウインドウの説明に育て方までしっかりと書いてあった。確か大豆は畑の肉と呼ばれるくらいたんぱく質が豊富だということだけは、なんとなく知識が残っている。
エンドウもそうだけれど、前世だと育て方によっていろいろな種類の野菜に成長するのは面白いね。
「ふむ、歯触りがよくてなかなかうまいですな」
「ええ、シャキシャキとして美味しいですね。豆苗よりも太くて食べ応えがあります」
「うん。とっても美味しいね!」
どうやらみんなにも好感触のようだ。もやしは食物繊維も豊富で、豆の部分には結構栄養があるはずだ。
そもそも大豆は開拓者スキルでポイントと引き換えた時点でも食べられる。一応火を通して食べてみたけれど、ちゃんとおいしい味がしていた。とはいえ、これだけ早く育つのなら、収穫して数を増やして食べた方がいい。
「それにしても、どの野菜も本当に成長が早いですな」
「一番早く収穫できる野菜はラディッシュが明日だね。その次はキャベツと枝豆が3日後くらいで、最初に植えたエンドウがその次の日くらいかな」
「とても早く成長するのですね」
「うん。こんな場所にやってきたけれど、何とかなりそうで本当に良かったよ」
ウインドウの説明によると、ラディッシュが2日、キャベツと枝豆が4日、そしてエンドウが6日で収穫できるらしい。
こんな不毛の大地にいきなりやってきたわけだけれど、食料面については何とかなりそうで良かったよ。
「やはり屋根がある家は良いですね」
「えへへ~温かいね、レオルお兄ちゃん!」
「う、うん。そうだね」
そして夜。今日はポイントで木の家屋を手に入れたおかげで、馬車ではなく、屋根のある家で寝ることができるようになった。寝返りをうつだけで馬車の椅子から転げ落ちる心配もなさそうで安心だ。
だけどすぐ隣にセシルとミーシャが寝ているというのはかなりドキッとする。それに2人ともちょっと距離が近いよ。この家は家具なんてないから4人で寝るなら十分に広い。ミーシャの隣で寝ているルーベルくらい距離をとってもいいのに……
「それにしても馬車とは比べ物にならないほど広々としておりますな」
「うん。それに昼間ルーベルが木の柵を家の周りに立ててくれたから、安心して眠ることができるよ」
ポイントとして引き換えた木の資材を使って、ルーベルがこの家の周囲に木の柵を立ててくれた。木の柵と家があるから、今日からは見張りを置かないで休むことができる。
さっきみたいにブラックウルフが攻めてきたとしても、木の柵とこの家があるからすぐに気付けるはずだ。
ああ……久しぶりにゆっくりと寝られそうな気がする。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「レオル様、それでは行ってまいります」
「うん、道中は本当に気を付けてね」
翌日の朝、ルーベルは馬車に乗ってこの場所を出発した。ここから一番近い街へ開拓に必要な物を調達しに行ってもらうのだ。
本当はこの不毛の大地へやってきて、現状を把握してから開拓に必要な物を調達しに向かう予定だったけれど、いきなり僕の開拓者スキルが発動したから、先に開拓を始めちゃったんだよね。
作物の種や苗、畑を耕す農具、追加の僕たちの食料なんかは定期的に近くの村や街へ仕入れに行く予定だった。農具の一部は僕の開拓者スキルのポイントでも引き換えることができるけれど、それにポイントを使うよりも別のことに使ったことがいいからね。
そして開拓民の募集も行ってもらう。これについてはまずは試しに10人ほどを募集するつもりなんだけれど、そもそも10人も集まるかすら分からない。なんといってもここは不毛の大地で、バルトルの森から近い場所でこれまでに何度も開拓が失敗しているからね……
ルーベルを見送った後は残ったセシルとミーシャと一緒に畑の野菜に水を上げたり、昨日ポイントと引き換えた木の板を組み合わせて、テーブルなんかのいろんな道具を作っていく。
「レオル様、こんな感じでいかがでしょうか?」
「うわっ、すごいね、セシル。お店で売っているみたいな椅子だよ」
「セシルお姉ちゃん、すっご~い!」
セシルは器用に木材を組み立てて、僕とミーシャのサイズの椅子を作ってくれた。本当にセシルは何でもできるよね。
「ありがとうございます。上に昨日のブラックウルフの毛皮を置けば、多少は座り心地も良くなるでしょう」
「なるほど、さすがセシルだ」
本当にいろいろと頼りになるなあ。今日はルーベルがいないけれど、セシルとミーシャがいればたとえ昨日みたいに魔物が襲ってきても何とかなる。
……僕と違って2人とも本当に強い。もちろん相手が多すぎたり、勝てなそうな魔物が現れたら、すぐに逃げるつもりだ。正直に言って開拓地よりも僕やみんなの命の方が大事だからね。
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