第20話 今後のための会議


「うむ。むしろ時間さえあればこの地に畑を作ることができるのは本当に素晴らしいわい」


「ええ、まさかこの不毛の大地に畑ができるなんて思ってもいませんでした。それに作物の成長がとんでもなく早くて驚きました。畑を休ませたり、別の作物を育てなくとも良いとは……」


「それについては今後の検証も必要かと思われますが、今のところは同じ場所で同じ作物を育てても問題なく成長しておりますね」


 ルーベルがコランに答える。そう、今のところは同じ畑で同じ作物を育てても、まったく問題なく成長している。それに前世の知識によると、コショウはかなり温かい地方でないと育たないはずだったのに、他の野菜と同様にもう芽が生えてきたし、ウインドウでも何も言われていない。


 やっぱり開拓者スキルのポイントで引き換えた作物は気候や土の状態に関係なく成長するみたいだ。


 ルーベルがバルトルの森に蒔いた種の一部が芽を出したから、今のところ他の土地でも普通に育つ作物はあるらしい。だけどよく考えたら、この開拓地の作物並みに成長しなくて本当に良かった。


 さすがにこの成長速度で作物が育ったら、間違いなく他の人や国に目を付けられたり、下手をすれば森の生態系自体を変えてしまいそうな気もするもんね。


「とりあえず畑についてはこのまま新しい作物を育てながら様子を見てみよう。それで今後は何を優先して開拓を進めていこうかな?」


 食料については開拓者スキルのおかげで見込みがついた。人間食料があればある程度余裕ができてくるみたいだし、この先は何を中心に開拓を進めていくべきかみんなに相談したい。


「そうですね。レオル様の防壁のおかげで防衛の面についてはかなり強化できました。ここでしか収穫できない野菜として他の村や街と取引をできそうですが、まずはこの開拓地の設備を整えていくことを優先した方が良いかと思われます」


 なるほど。確かにセシルの言う通り、この場所でしか採れない野菜はいろいろと付加価値がありそうかも。だけど、今はまだ他の村や街と関わるのは早そうだ。


「そうですな。いずれは他の村や街と定期的に取引をしたいところですが、今はまだ早いでしょう。レオル様のお力で、野菜を十分過ぎるほど得ることができますので、牧畜を初めてみるというのはいかがでしょうか?」


「あっ、そうか。野菜がたくさん収穫できるなら、エサの心配をする必要がないもんね! さすがルーベル!」


「恐縮でございます」


 野菜がたくさん収穫できるということは牧畜が可能になる。定期的に肉や乳や卵なんかが手に入るのはとても大きい。まだまだ土地はあるし、エサの心配もいらないから、なんのリスクもない。


「畑の方がひと段落したら、牧畜の方も進めていこう。ギルの方からはどう? 明日からもこの開拓地に必要な物をいろいろと作ってもらいたいんだけれど、他には何が必要になりそう?」


「ふむ、そうじゃな。家の方はレオル様のスキルに頼ってええんじゃろ?」


「そうだね。木材の資源をポイントと引き換えるよりも、家屋自体をポイントで引き換えた方が得だし早いからね。ここは森から離れているし、木を伐採して持ってくるのも難しいんだ」


「なるほどのう。木材については十分にあるし、釘などはルーベルのやつが十分に購入してある。家具などは問題なく作れるじゃろうが、他の資材が欲しいのう。ベッド用の羽毛や金属の素材が欲しいところじゃ。いずれは鍛冶場なんかも作れるとよいな」


「確かにいずれは鍛冶場も作りたいところだね。木や金属の資材なんかは何とかなるけれど、魔物の素材なんかは少し厳しいかも……」


「レオル様、どちらにせよ牧畜をするための家畜なども調達したいところなので、森には入らなければなりません」


「えっ!? でもセシル、さすがに森で家畜を調達するのは難しいよ。村や街へ行って、お金で買った方が安全でいいんじゃない?」


「確かに村や街で家畜を購入する方が安全ですが、領主様よりいただきました支度金には限りがありますので、節約できるところは節約しておきたいところです」


「私もセシルに賛成ですな。塩や必要な物を購入する資金は大切にとっておいた方が良いでしょう。いずれはこの開拓地で育てた作物を販売できるようになると思いますが、今はまだそれほどの作物を収穫できるわけではございません」


「……う~ん、お金よりもみんなの安全を優先してもらいたいんだけれどなあ」


 たぶんルーベルやセシルなら大丈夫だとは思うけれど、魔物を狩るのと家畜用に捕らえるのでは全然違う。もちろん家畜用に飼うつもりだから、比較的おとなしい魔物になるはずだけれど、それでも魔物を相手にするわけだから万が一がある。


「レオル様は相変わらずお優しいですね! ご安心ください、レオル様が心配をしてくれるだけで私は普段の倍以上の力が出せますから!」


「いや、何を言っているのさ!」


 僕はそんな魔法の薬みたいな存在じゃないよ!?


「もちろんバルトルの森で家畜を集めるのは難しいかもしれませんが、他の森ならば問題はないでしょう」


 さすがに危険な魔物が集まるバルトルの森で家畜を集めるのは難しいと思うけれど、他の森ならルーベルがいれば大丈夫そうかな。


「とはいえ、開拓地でのレオル様の護衛もございますし、私やセシルだけでは厳しいでしょう。やはり戦闘ができる開拓民を集めるか、冒険者を雇うことが良いと思われます」

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