第4話 ポイント補充
『トイレを20Pで設置しますか? 【はい】【いいえ】』
さらに確認のウインドウが出てきたので、【はい】をタッチすると、僕が思った通りの場所へ木の板に囲まれた長方形の個室が現れた。これで残りのポイントは160Pだ。
「……やっぱり汲み取り式トイレみたいだね。これって排水とかはどうなっているんだろう?」
木の戸を開けると、その中には白い陶器製の洋式トイレがあった。この世界では座れるトイレが主流で、汚物はタンクに溜められてまとめて処理されるようになっていたけれど、このスキルで出てきたトイレはどうなっているのだろう?
一応屋根があるから雨で下から溢れてくるなんてことはないと思うけれど、井戸と一緒に検証してみる必要がありそうだ。
汲み取り式のトイレは水で流さないため臭いがきつくなるらしい。理想を言えば前世の知識の中にあった水洗式のトイレが良かったけれど、さすがにそれは贅沢か。
ちゃんとこちらの世界で使われているお尻を拭く用の紙もあるのはとても助かる。この紙は目が粗くて少しお尻が痛くなるんだけれど、あるだけでとてもありがたい。
「いろいろと気になることはありますが、詳しい検証は明日にしましょう。日が暮れる前に食事を取りながら明日以降どう行動するかを考えましょう」
「そうだね、詳しいことはまた明日調べてみよう」
もうすぐ日が暮れてしまう。日が暮れてからの行動は危ないから、行動は明日になってから起こすとしよう。
「……それではこちらのトイレはレオル様が使用する前にメイドである私が確認をしておきます」
「あっ、ずるい! セシルお姉ちゃん、ミーシャが先に使うよ!」
「いえ、もしもミーシャに何かあったら大変ですからね。ここはまずは私から……」
「え~ずるいよ!」
「「………………」」
僕とルーベルは気を利かせてトイレから離れて馬車の方へ向かった。ちなみに井戸とトイレの位置は結構離して設置してある。これから家屋や畑などの施設を作る時はいろいろと考えて設置をしないと駄目かもしれないな。
そしてそのあとは簡単な夜食を取ってすぐに寝た。ここまでの道中と一緒で、馬車の中に寝具を引いて、セシルとルーベルが交代で見張りをしてくれた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……あれ、なんかポイントが増えてる!?」
昨日はたった1日で様々な出来事が起きて夜にもいろいろとあったから、そう簡単には寝られないと思っていたけれど、割とすぐに眠れてしまった。僕も街からここまでの道中で、自分が思っていた以上に疲れていたみたいだ。
そして次の日の朝、僕のスキルである『開拓者』のウインドウを呼び出すと、昨日は20Pの井戸とトイレを設置して残りが160Pだったはずの残りポイントが170Pになっていた。
「もしかしたら、1日ごとに自動でポイントが貯まってくれるのかな?」
昨日から増えたポイントは10P。特に魔物を倒して経験値みたいなのは積んでないから、時間が経過するとポイントが貯まっていくのかもしれない。
「それはとても素晴らしいですね!」
「ふむ、後ほどいろいろと確認してみたいところですな」
セシルは手放しに誉めてくれて、ルーベルは他にも検証が必要だと言う。確かに時間経過以外の可能性もあるし、ポイントの補充方法も複数あるかもしれない。
「それじゃあ予定通り、まずは畑を作ってみるよ」
「そうですな。昨晩話した通り、まずはそちらから確認してみましょう」
「レオルお兄ちゃん、頑張って!」
昨日みんなと晩ご飯を食べながら相談をした結果、今日はこの開拓地に畑を設置してみることになった。とりあえず水とトイレが設置できて、次はこの場所に畑が作れるかを試してみる。
下の地面を見てみると、あまり雨が降らないせいか、大地は乾燥してひび割れている。この荒れ果てた不毛の大地を普通に耕したところで、作物が育つとは到底思えない。
今後のことを考えると、ここに畑ができるかどうかでここを開拓できるかが決まると言っても過言ではないからね。頼む、どうかうまくいってくれ。
ウインドウを操作して施設項目にある20Pの畑を設置しようと操作する。
「レオル様、設置する時は昨晩話したようにどこの範囲まで設置できるかのご確認もお願いします」
「そうだったね、セシル」
昨日みんなとも話して、次に施設を設置する時に、どこまでの範囲で施設を設置できるかも確認しようとしていた。畑を設置する場所は井戸の近くの場所にしようと決めていたから、僕の方が井戸から距離を取っていく。
「目の見える範囲には設置できそうかな……あっ、駄目だ! 頭の中に設置できる範囲がなんとなく浮かんでくる」
昨日の井戸とトイレは僕がここに設置したいと思った場所に配置することができた。今回は少しずつ畑を設置する予定の位置から離れて、どの範囲まで設置ができるのか確認しようとしたところ、ある程度離れたところでどこまで設置が可能かが頭の中に浮かんできた。
どうやら井戸とトイレを含んで、半径数百メートルくらいの円形の範囲内にしか施設を設置できないみたいだ。もしかしたらこの円の範囲内が僕の開拓地ってことになるのかもしれない。
他にもこれまでに設置した井戸とトイレと重ねて設置することができないみたいだ。
「なるほど、どこにでも設置できるというわけではなさそうですな。それではレオル様、今後のためにもそちらの範囲に印をつけていただくようお願いします」
「うん、了解」
確かに今後施設を新しく設置することも考えて、僕だけじゃなくてみんながどの範囲まで設置できるかを確認できる方がいい。
乾いた地面に施設を設置できる円の範囲を書いておいた。さあ、いよいよ畑を設置してみよう。
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