第5話 収穫速度
「おおっ! ちゃんと黒い土の畑になっているね!」
20Pを使用して畑を井戸の近くに設置してみた。するとそれまでは干からびてヒビ割れていた地面に約10メートル四方の黒い土の畑が現れた。干からびた茶色い地面と黒い土の畑の境目がなんだかとてもおかしな感じだ。
「……柔らかく多少の水分を含んだ土ですね。これならしっかりと作物も育ってくれことでしょう」
ルーベルが現れた畑を検分してくれている。確かに周りの干からびて固くなっている地面とは異なって、黒い土はルーベルの手からパラパラと落ちていった。
「すごいね、お兄ちゃん!」
「うん、これならここで暮らしていくことができるかもしれないね」
本当に良かった。これならこの不毛の大地で農業をして暮らしていくことができるかもしれない。
「それじゃあ次は作物を植えてみよう」
ウインドウを操作して作物のページへと移動する。すると現在選択できる野菜が表示された。
・エンドウ(5P)
・大豆(5P)
・ほうれん草(5P)
・ラディッシュ(5P)
「昨日話していた通り、初めはラディッシュにするよ」
「はい、どのような野菜かは分かりませんが、レオル様にお任せいたします」
「そうですな、どれも聞いたことがない野菜でした。レオル様のお好きな物をお選びください」
「お兄ちゃんの好きな野菜でいいよ!」
そう、実はこの世界に前世の野菜は存在していなかった。街にいたころに屋敷のシェフに聞いてみたけれど、前世の知識にあるキャベツやニンジン、ジャガイモなんかの野菜はこの世界にないらしい。
もしかしたら別の国なんかにはあるのかもしれないけれど、少なくともみんなに聞いたところ、それらの野菜は知らないと言われた。普段出てくる野菜もまずいというわけじゃないけれど、前世の知識にある野菜を食べてみたいと思ったことはあったんだよね。
「それじゃあ、ラディッシュを選択してと……」
ラディッシュの別名は20日大根とも呼ばれて、その成長速度が大きな特徴で、そこまで栽培が難しい野菜じゃないらしい。
まずはなんでもいいから、この畑で野菜を育てて収穫できるという実績がほしい。
「……あっ」
作物の項目にあるラディッシュを選択する。施設を設置する時と同じように確認の画面が現れて、【はい】と【いいえ】を選べるようになっているけれど、ウインドウにはラディッシュの栽培方法と収穫時期なんかが書いてあった。
「レオル様、どうかなされました?」
「大丈夫だよ、セシル。ポイントを使ってラディッシュと交換しようとしたら、詳しい説明が出てきたんだ」
この栽培方法が書かれているのはとっても助かる。前世の知識があるといっても基本的な知識だけで、野菜の詳しい育て方は分からなかった。育てるのが難しい野菜は種をまいて水を与えるだけじゃだめだと思うしね。
……んん? でもちょっと待って。さすがにこの表記はおかしくないかな?
ラディッシュの栽培方法は予想通りそこまで難しくはないらしい。種を畑に植え水を与えるだけだ。問題はこっちの収穫時期だ。収穫がたったの
ラディッシュの別名である20日大根はいくら成長が早いとはいえ、収穫には25~30日近くはかかったはずだ。それなのにたったの2日というのはどういうことだ?
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「うん。説明を読んでいたら本当かなって思う部分があってね。いくら何でも野菜が2日間で収穫できるわけはないと思うんだけれど……」
「どういった野菜なのかは分かりませんが、さすがに2日は早いですな。もしかすると、収穫が早いのもレオル様のスキルのお力なのかもしれません」
「あっ、なるほど」
ルーベルの言う通りスキルの力で収穫が早い可能性はあるかもしれない。そうだ、一度キャンセルして他の野菜も見てみよう。
一度【いいえ】を選んで、別の野菜を選択すると、こちらも確認画面でその野菜の栽培方法と収穫時期が書いてあったので、そのすべてを確認してみた。
……うん、どの野菜も長くてもたったの10日ほどで収穫が可能なみたいだ。やっぱりスキルの能力で出したものだから、普通の野菜よりも収穫時期が早い可能性が高い。
それに普通の野菜は気温によって育つ育たないがあると思うんだけれど、説明文にはそれもが書いていない。もしかすると、いつでもこの野菜を育てることができるのかも。
「よし、それじゃあこのエンドウに決めた!」
ウインドウの確認画面で【はい】を選択すると、僕の手の中に突然黒い種が現れた。
……なるほど、どうやらポイントと引き換えた作物は種から育てないといけないらしい。それに自動で畑に種をまいてくれるわけじゃないようだ。さすがにそこまで甘くはなかったか。
「こちらがそのエンドウという作物の種ですか」
「それではみんなで畑に種を埋めていきましょう」
「ミーシャも頑張る!」
さあ、まずは畑に種を植えて水をまいていこう。エンドウの収穫時期は7日になっている。さて、この作物がどう成長するのか楽しみだ。
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