第6話 いろいろな検証


「ふう~これで種まきは終わったね」


「それでは私は水を汲んでまいります」


「ありがとう、セシル」


 みんなでエンドウの種を植え終わると、セシルが井戸へ水を汲みに行ってくれた。僕の力だと井戸から水を入れた桶が持ち上げられないからとっても助かる。


 そのまま種をまいた場所に簡易式のジョウロのような道具で水をまいていく。今はまだ本当に少しだけだけれど、開拓をするための道具は持ってきている。




「レオル様、私は一度森の方へ行ってまいります」


「うん。大丈夫だと思うけれど、気を付けてねルーベル」


「かしこまりました」


 簡単な朝食兼昼食を取って、このあとルーベルには一度この場所の近くにある森の様子を見に行ってもらう。この場所から30分ほど歩いた場所にあるバルトルの森、そこにはここと違って木々が生い茂っているけれど、強い魔物が生息しているらしい。


 バルトルの森から資源などが確保できれば今後がいろいろと楽になるから、あの森に生息する魔物がどれくらい生息しているのかをある程度把握しておきたい。ルーベルなら万一のことはないと思うけれど、それでも心配だ。


「ルーベルおじちゃん、気を付けてね!」


「ルーベル様、お気を付けください」


「うむ。ミーシャもセシルも何かあった際にはレオル様を守るのだぞ」


「「はい!」」


 ルーベルが馬車を使って森へ行っている間は僕とセシルとミーシャしかいなくなる。こんな枯れ果てた場所に魔物が来ることはないと思うけれど、用心するに越したことはないよね。


「それじゃあ僕たちはいろいろと試してみよう」


「承知しました、レオル様!」


「頑張ろうね、お兄ちゃん!」


 ルーベルがいない間は開拓者のスキルによって設置した井戸とトイレと畑の検証を行ってみる。それとこのスキルで出した畑とは別に、もうひとつ畑を作ってみるつもりだ。


 この辺りは不毛の大地と言われているけれど、ひび割れた地面に井戸の水をかけて土を耕せばポイントを消費しないでも畑を作れるかもしれない。見た感じ難しそうだけれど、何事も試してみないと分からないからね。




「……やっぱり新しい畑は難しそうかな」


「こればかりはしばらく時間を掛けなければ分からないですね」


「お兄ちゃん、元気出して!」


 僕が少しがっかりしているとミーシャが慰めようとしてくれた。


 試しにひび割れた地面へ井戸から汲んだ水を撒いて持ってきていた農具で耕してみたけれど、全然畑のようにならなかった。砂場に水を加えたような感じで、隣の畑の土とは全然違う。


 こっちの地面の土は細かすぎるんだよね。確か畑の土とかは枯れた植物やミミズや虫なんかのフンとかいろいろ混ざっているんだっけ。そういえば虫の一匹も見かけない気がする。


「うん。畑は駄目だったけれど、井戸の水はいっぱいあるみたいでよかったもんね」


「そうですね。水の心配をしなくてもすむというだけで、とても楽になります」


 セシルの言う通り、この井戸のおかげで水の心配をしなくてもいいのはとても助かる。試しに持ってきていた縄に石を結んで井戸に沈めてみたところ、ものすごい深いところまで掘られていた。


 ……というより結構な長さの縄を全部伸ばしても底までつかなかったからちょっと怖い。スキルでできた井戸だし、もしかしたら無限に水が湧いて出るのかもしれない。でも僕やミーシャが井戸の中に落っこちないように注意しないといけないな。


 さすがにトイレの穴はどうなっているのか調べられないけれど、もしかしたらこの井戸みたいに汚物を無限に捨てられるのかもしれない。それなら用を足したあとに井戸から汲んだ水を流したほうがよさそうだ。水を流さないとすぐに臭いがひどくなりそうだし。


「残りは145Pかあ……とりあえず明日も10P補充されているようなら、毎日ポイントが補給されると見て、家屋を建ててもいいかもしれないね」


「そうですね、馬車でも十分に寝ることは可能ですが、やはり小さくても拠点のようなものがあれば助かります」


「ミーシャもおうちはあった方がいいと思うの」


「うん、ルーベルが帰ってきたら相談してみよう」


 馬車でも寝られないことはないけれど、僕とミーシャは馬車の椅子の上で寝ているから、寝返りをうつだけで下で寝ているセシルかルーベルの上に落ちちゃいそうになるんだよね。


 それにセシルとルーベルは毎日交代で見張りをしてくれている。今のところは大丈夫だけれど、早いところ拠点がほしい。


「あっ、レオルお兄ちゃん! もうこんなに伸びているよ!」


「……驚きました。これは本当に早いですね!」


 ミーシャが指差した方向を見ると、朝畑に植えたばかりのエンドウの芽がもう出ていて、しかもかなり伸びていた。


「やっぱり成長が普通よりも断然早いね。これなら本当にたった7日で収穫できそうかも」


 エンドウという野菜がさすがにこんなに早く成長するなんてことはないはずだ。


 これは開拓者のスキルでポイントと交換した種か畑のどちらのおかげなのかは検証したいところかな。


「さあ、それじゃあ早速収穫してみようか」


「ええっ!? もう収穫しちゃうの!?」


「……こちらの生えたばかりのものがそのエンドウという作物なのですか?」


 ミーシャとセシルが驚くのも無理はない。さすがにこんな生えたばかりの状態で収穫する作物なんてないだろうからね。


「いや、この状態のエンドウは豆苗とうみょうっていうらしいんだ」


 ウインドウの説明によるとエンドウのこの新芽の状態が豆苗という野菜として収穫できるらしい。

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