第8話 バルトルの森


「それじゃあ、いただきます」


 全員で手を合わせて、早速レバーと豆苗と芋の炒め物を食べる。ちなみにこの芋は前世の知識にあったジャガイモやサツマイモとは別の種類の芋だ。


「うん、とってもおいしい! 久しぶりにこんなおいしいものを食べたよ!」


 お世辞なんかじゃなくて本当においしい!


 新鮮なワイルドボアのレバーは血生臭さのかけらもなく、肉の味にシャキシャキとした歯ごたえでみずみずしい豆苗とほっこりとした芋の味が加わって本当に素晴らしい味になっている。


 味付けは塩だけだけれど、それで十分だ。ここに来るまでの馬車の道中や昨日の食事は干した肉や野菜やパンだけした食べられなかった。それに野菜は保存ができるこちらの世界の根菜しかなかったから、豆苗みたいな緑の野菜を食べるのは数日ぶりになる。


 それに前世の知識はあっても、実際にこの野菜を食べるのは初めてだからね。まあ、この状況ならどんな野菜でも美味しいと思うけれど。


「レオル様にそう言ってもらえて本当に嬉しい限りです!」


「えへへ~いっぱい食べてねお兄ちゃん!」


 僕がおいしそうに食べているのを見て、料理を作ってくれた2人も本当に嬉しそうだ。


「ふむ、確かにこれは初めて食べる味の野菜です。しかもこれが収穫した後にまた別の作物が収穫できるとはとても素晴らしい野菜ですな」


「ええ。こんな野菜は初めてですが、とてもおいしいです。この野菜が成長した後の味も楽しみですね!」


「ルーベルおじちゃんが狩ってきてくれたお肉も本当においしいね!」


 3人の評価もかなり良い。ここ数日のご飯に比べたら段違いでおいしいもんね。




「ふう~本当においしかったよ。ご馳走さま」


「お粗末さまでした」


「それで、ルーベル。バルトルの森はどんな様子だった?」


 本当は晩ご飯を食べながらみんなと相談をする予定だったけれど、久しぶりのこんなにおいしい料理の味に、つい夢中になってしまっていた。食事をすべて平らげたあと、ルーベルに森の状況を聞いてみる。


「なかなかに厳しい状況でしたな。収穫できそうな野草や木の実、キノコなどの森の恵みはほとんどなく、凶暴な魔物が数多く生息しておりました。推測となりますが、数少ない森の恵みを奪い合うことによって、魔物の生存競争が苛烈となったのではないでしょうか」


「うわあ……」


「このワイルドボアも領地にいた個体よりも凶暴で強かったです。普通の村人では束になっても敵わないでしょうね。まだ森の奥までは調査できておりませんが、それ以上は私ひとりでは危険と判断して戻ってまいりました」


「うん、無理はしないでいいからね。それにしても、あんまり森から得られるものはなさそうかな」


 村人が束になっても倒せないようなワイルドボアを倒せるルーベルもすごいけれど、そのルーベルが森の奥は危険と判断している。やっぱり不毛の大地の隣にある森だけあって、一筋縄じゃいかないみたいだ。


 森の恵みには多少期待していたけれど、そこまで危険な森にルーベルを毎回ひとりで行かせるわけにはいかない。


「野菜の方は開拓者のスキルのおかげですぐに成長するみたいだから助かったよ」


「ええ。レオル様のおかげでこれほどおいしい料理を作れたのです!」


「レオルお兄ちゃんのおかげだね!」


「まだひとつだけだけれど、これからもっといろんな野菜を育てていけるといいね」


 セシルとミーシャはそう言ってくれるけれど、収穫できたのはまだ豆苗だけだ。だけどこれから他の野菜も植えて収穫していければ、野菜については問題なさそうかな。


「そうですな。野菜の収穫量についてがどれほどになるか分かりませんが、もしも相当量の作物を供給できるとなれば、牧畜なども可能でしょう」


「なるほど! 確かにそうだね、さすがルーベルだ」


 ルーベルの言う通り、もしも野菜を安定して大量に育てることができるようになれば、その野菜をエサにして牧畜ができるようになる。森での狩猟は難しくても、牧畜をすれば安定してこうやってお肉を食べることができるかもしれない。


「あとは明日も10Pが加算されたら、毎日10P入ると思ってもいいと思うんだ。それを確認したらポイントで家屋を引き換えて、畑を拡張してみてもいいと思うんだけれど、ルーベルはどう思う?」


「ふむ……良いと思います。本日は皆でいろいろと行動をしてみましたが、明日も今日と同数のポイントというものが入るようでしたら、さらに施設を増やしでみましょう。もう1日ほど様子を見ても良いかもしれませんが、これ以上レオル様に馬車の中で寝ていただくのは忍びないですからな」


 いや、どちらかというとセシルとルーベルに交代で見張りをしてもらう方が忍びないんだよね。それも含めて明日は家屋の他にその他の項目にある木の資材もポイントと引き換えて柵を設置してみるつもりだ。


 家屋とそれを取り囲むような柵があれば、もしも魔物が襲撃してきても柵や家屋を壊すまでの間に気付くことができる。そうすれば見張りを置かなくてもぐっすりと休むことができるからね。


 それとルーベルの言う通り、明日のポイントが同じように10P入ってくれるのかも気になる。今日は野菜を収穫したり、ルーベルがイノシシ型の魔物を狩ってくれたけれど、昨日よりポイントが多く入ったりしないかな、なんて思っている。

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