第9話 木製の家(小)
「うん、今日も10P入っているね」
翌日、朝起きてウインドウを開いてみると、昨日と同様に10Pが増えて残りポイントが155Pになっていた。
野菜を収穫したりルーベルが魔物を狩ってきてくれて、もっと一気にポイントが増えたりしないかな、なんて思っていたけれど、さすがにそれはなかった。とはいえ、毎日10Pずつ増えてくれるのはとても助かる。
「それじゃあ、まずは家を建ててみるね」
「はい。レオル様、頑張ってください!」
「レオルお兄ちゃん、頑張って!」
昨日みんなと話していたように、まずはこの開拓地の拠点となる家屋を建てることにした。ウインドウを操作して、木製の家【小】を設置する。
場所は井戸と畑のすぐそばで、トイレからは少し離れた場所へ設置するように頭の中で考えて、確認に対して『はい』を押した。
「……ほう、これは素晴らしいですな」
「うわあ~すっごいおうちだね!」
「さすがレオル様です!」
僕たちの目の前に現れたのは縦横5メートルほどの木の板でできた家だった。屋根も木でできていて、僕たちの世界の家とはなんとなく異なる雰囲気かもしれない。
街にいた頃、僕たちが暮らしていた屋敷とは比べ物にならないほど小さくて、お世辞にもそれほど立派な家とは言えないけれど家は家だ。ここしばらく寝ていた馬車よりも全然マシに見える。
入り口は木の板の引き戸になっていて、それを開けて家の中に入ると入り口には靴を脱ぐスペースがあり、そこを上がると一部屋の板の間になっていた。
「あっ、ここで靴を脱いで入るみたいだよ」
「なるほど、承知しました」
みんなが靴のまま家の中に入ろうとするのを止める。引き戸といい板の間といい、どうやらこの木の家は前世の家の様式になっているみたいだ。
僕たちが元いた屋敷だと、ドアにはドアノブが付いていて、土足で家や部屋に入る様式だった。
「ふむ、それほど広くはありませんが、十分に立派な家のようです。これほどの家を作り出せるとは、レオル様の開拓者スキルは本当に素晴らしいスキルですな」
「さすがレオルお兄ちゃんだね!」
「うん、僕もびっくりしているよ。ああ、やっぱり広くて屋根のある家はいいね!」
「なるほど、靴を脱いで上がっているので、このように床に寝転がることもできるのですね」
僕が板の間に寝転がったのを見て、セシルがそう呟く。確かに元の家だと床に寝転がるなんてことはできなかったもんね。
それにしても、家があるだけで安心感がだいぶ違う。狭い馬車と違って、今日はぐっすりと眠れるに違いない。
「さすがにゲットーは上にあげられないから、ここの一段下がった場所で寝てもらおうかな」
「そうですね、それが良いかと思います」
ここまで馬車を引いてくれた茶色い毛並みをした馬の名前はゲットー。昔から僕に懐いてくれている馬で、ここまで一緒についてきてもらっている。
畑を耕す手伝いをしてもらおうと思っていたけれど、開拓者スキルで出した畑はすでに耕された状態だから、今まで活躍の場がなかった。
ゲットー用の家ができるまで、夜は一緒にこの家の中で寝るとしよう。
「うわっ、たった1日ですごい成長しているよ。つるもだいぶ伸びてきたみたいだから、支柱になる木の棒なんかを準備しないと駄目かな」
畑の方は昨日植えたばかりのエンドウがもうだいぶ大きくなっていた。やっぱりこの成長速度は僕の開拓者スキルによって引き換えた畑か種、あるいはその両方のおかげに違いない。
ウインドウに表示されているエンドウ豆の育て方によると、これからエンドウ豆のつるが伸びて成長していくために、つるが絡まるための網や支柱なんかが必要になるらしい。
「それじゃあ次は木の資材だね」
とりあえず、ウインドウのその他の項目にあった木の資材をポイントと引き換えてみよう。その木の資材を使って、このエンドウ豆のつるが絡まるための支柱を作る。そしてこの畑とできたばかりの家を囲むように木の柵を作ってみよう。
もちろん木の柵くらいじゃ強い魔物には簡単に壊されてしまうかもしれないけれど、多少の足止めにはなるし、夜中だったら柵を壊す音で気付けるから絶対にあった方がいい。
ただ木の資材は引き換えるのに10Pが必要になるんだけれど、どれくらいの大きさなのか分からないんだよね。もしも1メートルくらいしかなかったら、ポイントを使うよりも近くの村とかで木材を買ってきた方がいいかもしれない。
木の資材なら僕たちでも確保できると思うし、この不毛の大地に畑や井戸を作ることを優先したいから、ポイントはそっちに使うべきだ。
「……あっ、10Pでも結構たくさんの資材になるみたいだね。それにいろんな形状で出すことができるみたいだ」
施設を設置する時と同じで、確認画面まで進むとどんな資材として引き換えるかを設定できるらしい。定まった合計面積の範囲内なら、正方形や円柱型の材木として出したり、板状の資材として出すことが可能みたいだ。
あっ、でも彫刻みたいに加工した状態では出せないのか。本当に資材として使うためにだけっぽい。
「……よし、それじゃあこれで木の資材を2セット交換と!」
「ほう、これはなんとまた……」
「さすがレオル様ですね!」
「レオルお兄ちゃん、すっご~い!」
目の前に僕が思った通りの木材が現れる。みんなと相談して、どういう形状の木材が必要かを考えて、20Pを消費して木の資材を2セット交換した。これでエンドウ豆のつるが成長するための支柱と木の柵を作るための資材は手に入れた。
これで残りは85Pだ。手分けをして木の柵を作りつつ、畑を拡張していこう!
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