【開拓者】スキルで追放された不毛の大地から始める自由生活〜異世界に存在しない作物を育てていたら最高最強の街になっていた件!〜

タジリユウ@3作品書籍化

第1話 開拓地へ追放


「レ、レオル=フリードル様のスキルは……『開拓者』となります……」


 ここフリードル領の領内にある最も大きな大聖堂の中には僕の義理の父と義理の兄が一緒にいた。


「開拓者……それは戦闘系のスキルですか!」


 思わず大きな声をあげて神官に聞き返す僕。


 このでは8歳になると教会で祝福の儀というものを受けることができる。そして10人に1人ほどの割合ではあるが、スキルという特別な能力を授かることができるのだ。


 この世界――そう、僕は物心がついた頃から前世の世界の知識を持っていることに気付いた。前世の記憶があるわけじゃなくて、その世界のとある時代の人の知識を持っているといった感覚だ。


「い、いえ! こちらは生産系のスキルとなり、少なくとも戦闘で役に立つようなスキルではないかと……」


「生産系……」


 すでに亡くなってしまった僕の両親は戦闘系のスキルを授かっていたため、てっきり僕もスキルを授かるのなら戦闘系のスキルを授かると思っていた。


「ぷはははっ、残念だったなレオル! まあ、俺はお前のことだから何のスキルも授かっていねえと思っていたぜ!」


 僕の義理の兄であるアルマ=フリードルが腹を抱えて僕を嘲り笑う。そもそもスキルは授かるだけでもとてもありがたいものだけれど、僕には戦闘系のスキルを授かりたいという理由があった。


 この世界では魔物という凶暴て恐ろしい生物が存在し、国同士での争いも珍しくない。とりわけ領民を率いて戦うことが多い領主やその血族であれば、戦闘系のスキルが求められる。


 もちろんスキルは遺伝の力が大きいとはいえ、誰しもがスキルを授かれるというわけではないから、スキルを授かれなかったり、戦闘系のスキルを授かれない領主の息子や娘もいる。


「……ちっ、最後のチャンスだったのに残念だ」


 義父のそんなつぶやきが聞こえた。恐る恐る義父を見てみるとため息をついて酷く落胆した様子だ。


 だけど、これは僕にとっても最後のチャンスだった。義理の子供である僕はこの祝福の儀で戦闘系のスキルを授かれなければ、見捨てられてしまうということは子供ながらに理解できていた。


 僕は両親を病気で亡くしてしまい、父さんの兄でありこの領地の領主であるアロイム=フリードルに引き取られた。父さんとアロイム様の関係はあまり良くなかったため、義理の父と母はそれほど僕に愛情を注いではくれなかった。


「父上、我がフリードル家には『剣士』のスキルを授かった俺がいるので、レオルがスキルを授からなくても、なんの問題もありませんよ!」


 さっきから義兄のアルマはとても上機嫌だ。もしも僕が珍しいスキルを授かったら、自分の立場が危うくなると思っていたのかもしれない。


「そうだな、我が愛しい息子アルマよ。我が領地を継ぐのはお前しかいない。これからも将来領主となるために励むのだぞ!」


「はい、お任せください!」






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 そして祝福の儀から2年が経ち、僕の予想通りと言うべきか、僕は幼いながらにフリードル領の南方にある荒れ果てた不毛の大地での開拓を命じられた。


 普通に考えて、10歳の子供に開拓なんてどう考えても無理だと思うけれど、僕の開拓者というスキルがあるから大丈夫だという理由らしい。


 この2年間いろいろと試してみたけれど、どうやってもこのスキルの能力を発動させることができなかったことを知っているのに酷い話だ……


 開拓であれば、そこでたとえ命を落としたとしても対外的には名誉の死ということにはなるからね。


 義理の子供――実際には実の甥に対してさすがにこの仕打ちはあんまりだとも思うけれど、悲しいことにこの過酷な世界ではそれも仕方のないこと。


 前世の知識を使っていろいろとあがいてみたけれど、僕の開拓地送りは覆らなかった。知識があっても子供の僕にはできることには限界があるし、多少の利益を出したところで、領主の一族として求められるのは戦闘に役に立つスキルらしい。


「フラン義姉さん、行ってきます!」


「気を付けてね、レオル!」


 出発の日、予想通り僕の見送りには義父と義母もアルマも来ていなかった。唯一来てくれていたのが、僕より3つ上のフラン義姉さんだけだ。


「辛くなったらいつでも戻ってきてくれていいからね!」


 金髪碧眼でウェーブのかかったロングヘアの美しい女性。フラン義姉さんだけは両親が亡くなって養子となった僕に対して、本当の弟のように接してくれた。


「ありがとう、フラン義姉さん。ちゃんと務めを果たすから、僕は大丈夫だよ」


 でもだからこそ、僕はフラン義姉さんにだけはこれ以上迷惑を掛けたくはなかった。これまで僕に対してとても優しく接してくれたフラン義姉さんを困らせることは本意じゃない。


「お父様もお母様もアルマ兄様も本当に酷いわ……少しだけ待っていてね、レオル。必ず私が何とかするから!」


「本当に僕は大丈夫だよ。フラン義姉さんこそ、身体には気を付けてね!」


 フラン義姉さんと最後に別れのハグをして馬車に乗った。フラン義姉さんは馬車が見えなくなるまで、手を振ってくれていた。




「……セシル、ミーシャ、ルーベル。僕についてきてくれて本当にありがとう」


 ガタゴトと揺れる馬車の中、ほとんど追放されたも同然の僕についてきてくれた3人にお礼を言う。


「何をおっしゃいますか、レオル様。私はあなたに一生忠誠を誓ったメイドですから、たとえ地獄の果てでもレオル様についていきます」


 僕より年上の緑色のショートカットで長身のとても綺麗な顔立ちのメイド服を着たセシルが、まるでそれは当然のことだという顔でそう答えてくれた。セシルは僕の両親がまだ生きていた時から僕のお世話係をしてくれていた女性だ。


 ……でも騎士ならともかく、メイドは誰かに一生忠誠は誓ったりしないと思うんだけれどね。


「ミーシャはレオルお兄ちゃんがいるならどこでも大丈夫だよ!」


 そう言いながら、ピンク色の髪をツインテールにした小柄で可愛らしい女の子のミーシャが僕に抱き着いてきた。ミーシャは本当の妹じゃないけれど、僕を本当の兄のように慕ってくれている。


 可愛らしい笑顔で、撫でてほしそうに頭を前に出してきたから撫でてあげた。


「そろそろ引退しようと思っていたところでしたから、実にちょうど良い機会でした。私は私でやりたいようにやらせてもらっているだけなので、レオル様はお気になさらなくて結構ですよ」


 ルーベルはフリードル家に雇われていた執事さんだ。とても60代とは思えないほど若々しくダンディな男性である。今はこの馬車の御者をしてくれていて、とても頼りになる万能執事なのだ。


 実の子ではないとはいえ、このフリードル領の領主の養子の僕にはお世話係や関わりのある人がそれこそ何十人もいたけれど、開拓を命じられた時に僕と一緒に来てくれると言ってくれたのはこの3人だけだった。


 ……いや、多少の支度金をもらったとはいえ、10歳の子供が主導での不毛の大地での開拓なんてほぼ確実に失敗するし、命の危険も多いのに3人も残ってくれたのは本当に僥倖だとも言える。


「みんな、本当にありがとう。こんな僕に何ができるのか分からないけれど精一杯頑張ってみるよ!」


 僕はこの3人には心から感謝をしている。一緒についてきてくれたこの3人のためにも、無茶苦茶な開拓の命を全うできればいいんだけれどなあ……






「不毛の大地とはよく言ったものだね。これじゃあ作物なんかを育てるのも相当厳しいかも……」


 馬車に数日揺られ、この世界で初めてとなる野営をして、ようやく目的の場所へとたどり着いた。そして到着した開拓地を見て愕然とした。


 地面はヒビ割れて、雑草すらも生えていない不毛の大地。少し離れた場所にある巨大な森には危険な魔物がうようよと住んでいるらしい。


「……確かにこれは酷いですね。この土では作物などまともに育たないでしょう」


 セシルが渇いた土を検分している。確かにこの瘦せこけた土では、多少水を与えたところで栄養がまったくないから、うまく作物が育たないだろう。


「ご飯を作るのも苦労しそうだね……」


「家を建てるための木材を確保するだけでも至難の業でしょうな……」


 ミーシャもルーベルも目の前の光景を見て呆然としている。


「うわっ!?」


 そんな絶望的な状況の中、僕の目の前に半透明のが現れた。




―――――――――――――――――――――

この作品を読んでいただき、誠にありがとうございます(o^^o)


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