第6話 迷い犬と迷いロバの話

 田舎暮らしの我が家は、大通りから私道に入り、4軒のお家を過ぎた、行き止まりにあります。


 道が細いので、車はまず、Uターンはできません。

 間違って私道に入り込んできた車は、途中で気が付いて、いずれかの家の敷地でUターンするので、我が家の敷地までやってくる車は滅多にありません。


 そんなわけで、目的がある人しか来ない我が家。

 安全でありがたいのですが、これまでに何回か、突然、見知らぬ人が家に来たことがあります。


 それが、迷い犬探しでした。


 この辺りでは、田舎のことで、皆さん、犬を放し飼いで飼っています。

 時々、遠くに行き過ぎてしまった犬が迷子になってしまうようです。


 犬を探しに来た人にお住まいを聞いてみると、これまでは会ったことがないけれど、ご近所の方ばかりでした。

 うん、顔見知りになれて、ちょうど良かった。


 ……という話を、近所の友達に話していたところ、彼女が言いました。


「うちのロバはね、迷いロバだったのよ」


 え?

 迷いロバですか!?


 何でも、ある日、家にロバが1人で(?)やってきたそうです。

 さすがにびっくりして、あちこちに声をかけてみたところ、大通りを下った所にある家から、ロバが脱走したことがわかりました。


「でもね、持ち主さんが、良ければ飼ってくれないか、って言うのよ」


 彼女が続けます。


「どうもロバは元いたお家が不満だったようで、逃げ出したらしいの。で、持ち主さんも『ウチでは難しいようだから』って……」

「ええ〜!?」


「ロバさんは、自分で『ここならいいか』って家を見つけたのかもしれないわね。ほら、我が家には馬が2頭いるから。ロバさん、馬達とも仲良くしているのよ」


 そんなわけで、彼女はロバを飼い始めたのでした。


 このエッセイの第1話で、ヤギを飼っている家を通る度に、ヤギを見て喜んでいることを書いたのですが、実は同じルートに、馬を飼っている家もあります。


 そのうちの1軒には、何とシェトランドポニーが2頭いるのです!!


 高さが1メートルくらいでしょうか、背が低くて、小さくて、でもがっちりしている、とても可愛い馬なのです。

 毛がみちっとしていて、ふわふわなんですよ。


 これは、可愛いですよ!!


 シェトランドポニーが迷い馬になって、家に来たらどうしようか!?

 ちょっとの間、妄想してしまいました。

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