第13話 アルストロ家

「それでは朝食にしようか」


シーナ様の隣に座るガタイの良い細マッチョな男性、シーナ様、シルヴィ、アランと同じくプラチナブロンドの髪を持つ彼はシルド・アルストロ、このアルストロ家の当主だ。

俺たちは運ばれてくる朝食を食べる。


「ノア、今回も娘たちが迷惑をかけたね」

「いえいえ、もういつものことですから…」


紅茶を一口飲んでシルド様がそう言ってきたので俺は苦笑しながらそう答えた。


「アンタが私から離れるからいけないのよ」

「あなたがノア君離れできてないだけでしょ」

「イテッ!?」


シルヴィの小言にシーナ様がツッコんで閉じた扇子でシルヴィの頭をたたく。

その光景に俺とシルド様はやれやれと思った。

そしてシルド様はケイレブ達に向きなおる。


「君たちも、先生を勝手に借りて悪いね」

「い、いえ!」

「は、はい!」

「そんなことは!」

「だ、大丈夫です!」


みんな緊張してるな。

まあ、平民である彼らが貴族と話すことなんて本来はありえないことなんだからな。


「そういえばちゃんとした自己紹介がまだだったね。私はこのアルストロ家の当主、シルド・アルストロ。そして妻のシーナだ」

「シーナよ。これからよろしくね♪」

「そしてこいつがこの家の長男で私の息子のアンラックだ」


シルド様がアランと紹介したのは包帯ぐるぐる巻きのミイラだった。


「ア、アラン?どうしたんだよ、何があった?」

「アランはね、ノアをシルヴィが抱えてきたとき子供たちを雷魔法から守ってこうなったのよ。まあ、自業自得ね」


自業自得って……まあ、確かにシルヴィのことを説明しなかったからこうなったわけだしシーナ様の言う通り自業自得なのか……?

ミイラがなんか言っているが全然わからん。


「そして君たちに迷惑をかけたこの娘が私の娘で次女のシルヴィアだ」

「・・・・・・シルヴィアよ」


4人は無言で頷く。

まぁ、初対面でミイラ作ればそれは怖がられるか・・・

ここは先生として少しは溝を埋めてやるか。


「そう怯えることはないぜ。お前らとシルヴィには既に一つの縁ができてるからな」

「縁って、なんの?」


4人が疑問符を浮かべる。

俺はアイナの質問に答える。


「シルヴィはな、お前らの姉弟子だ」

『あ、姉弟子?』


4人の声がはもる。


「ちょっと!私がいつアンタの弟子になったのよ!!というかアンタが私の弟子でしょ!」


シルヴィは必死にそう弁明するが実際俺が君に魔法と剣術を教えたんだよ?


「シルヴィの言い訳は置いといて」

「ちょっと私を無視するんじゃ、いたっ!?」


案の定またシーナ様に黙らされるシルヴィ。

俺は彼女を無視して話を続ける。


「俺はお前らと出会う前に何度か教師活動をしていてな。シルヴィはその一期生、つまり俺の一番弟子みたいなものだ」

「ノア君の弟子たちは各々が素晴らしい功績を残してる。君たちも素晴らしいい人材になるだろう」


シルド様が俺の言葉に付け足してそんなことを言ってくれた。


「シルド様、俺はあくまで基礎を教えただけにすぎません。俺よりも優秀な人材なんていくらでもいます」

「私はそうは思わんがな」


そうは言いますけど、あなたの娘がその筆頭ですけどね。


「俺がどれだけ教え込んでもそれを活かす能力がないと成り立ちません。すべては彼ら彼女らが優秀だったからです」

「それを教え込むがむずかしいのだがな……」

「そうよノア、謙遜のし過ぎは嫌味になるのだから注意しなさい」

「肝に銘じておきます」


シーナ様の言葉はとりあえず聞くこと。

これは俺がこの人と過ごして学んだ一番大切なことだ。


「それよりノア!今日は私に付き合ってもらうわよ!」


シルヴィが立ち上がりそう言ってきた。


「いや、今日はこいつらに授業を……」

「そんなのいつでもできるでしょ!アンタ、約束したわよね?」

「ん?ああーーー……」


監禁二日短縮の代わりに一日デートのこと?

え、それって今日なの!?

監禁解放その日から監禁相手とデートってマジで言ってるのこのお嬢様?


「とにかく行くわよ!」


シルヴィは逃げるがごとく俺を引っ張っていく。


「ちょっ、まだ俺朝食食い終わって!」

「後でいいでしょ!ほら行くわよ!」


そのままいつの間にかに付いてきていたミリアさんに着替えを渡され、衣裳部屋に閉じ込められシルヴィとデートに行くはめになった。

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