第17話 シーナ様と相談
アルのおかげで何とか王城から抜け出せた俺らは今アルストロ家に向かっている。
「それにしてもあの場に先輩がいてくれてマジで助かったぜ」
「そうかしら、あの場であのバカを殺した方が良かったんじゃないかしら」
「私もどっちかと言うとシルヴィ先輩の意見に賛成ね」
ウィリアム殿下、シルヴィはともかくとして、シャルルに何したんだよ?
「そもそも、あそこまでシルヴィ先輩に熱愛してるくせに側室とか舐めてんのかって思うのよね」
「それは仕方ないだろう。アルストロ家は男爵家、しかもシルヴィは次女だ。貴族の階級的に第三王子であろうとも正室の座は取れんだろう」
そもそもアルストロ家はシルド様で2、3代めの新興の貴族家で昔の戦争で救国の英雄として男爵位の爵位と領地をもらった家だ。
「それ以前に、私は既にアンタの奥さんなんだけど?」
シルヴィがまた腕を絡ませて詰め寄ってきた。
俺が彼女の言葉にツッコム。
「あのなシルヴィ、俺は」
「シルヴィ先輩、兄貴は年齢=童貞、彼女なしの完全独身です。いい加減なことを言うのはやめてください」
俺がシルヴィに一言物申そうとしたらシャルルが横から言ってきた。
シャルル、そこまで言わなくてよくない?
兄さん、別にそこまで言うつもりなかったんだけど……
「あら、シャルル、どこか頭でも打ったのかしら?私は最低でもノアと5年は付き合ってると思うんだけど?」
いや、5年前ってお前、あの時代に仮に俺がお前と付き合ってたら今俺この世にいないぞ?
「そっちこそ妄想癖がさらに進化したようで。このヘタレ兄貴が貴方たちの誰かと付き合うなんて流石にありえないんですけど?」
「はあは?」
「ええ?」
二人が俺を挟んで睨み合う。
これってもしかして、あの廃墟になった王都での戦いがここで起きようとしてる?
二人から明らかに闘志がメラメラと溢れてくるのを感じるんだけど?
「ちょうどよかったわ。この1月決着がつかなかったものね。ここは
「何が義姉ですか!私は貴方の義妹になった覚えなんてないんですけど!!」
やばい、完全に戦闘態勢に入ってしまった。
せっかくひと段落着いたのにこのままじゃ、また面倒なことに。
「いざ!」
「勝負!」
「そこまでです!」
二人がいざ始めようとした時、シルヴィとシャルルは氷で氷結された。
「まったく、王城から知らせがきて、万が一と思ってきてみれば案の定こうなんだから…」
「シーナ様!」
俺たちの前に現れたのはセンスを持って口元を隠し、冷たい風を纏う、シーナ様だった。
「ノア、そのまま二人を屋敷まで引っ張ってちょうだい」
「わ、わかりました」
俺は闇魔法で二つの氷塊を引っ張る。
「まったく、成人済みのレディー二人が街中で魔法勝負なんて…」
「魔法勝負なんて、そんなちんけなものではないと思うのですが?」
「二人にとってはただの魔法勝負よ。例え、王都が廃墟になってもね」
「あ、あははは……」
シーナ様の言葉に俺は何も言い返せなく、苦笑いして返すことしかできない。
「ああ、このままじゃ娘がお嫁に行けるか心配だわ。どこかにこんなお転婆で、災害級の娘を止めることができて、常識のあるいいお婿さんはいなかしら?」
シーナ様はあからさまに声を大きくして俺をちらちらと見てそう言った。
だが正直、俺はどっちかと言うなら嫌だ。
なぜなら、もし承諾してしまえば大陸全土を巻き込んだ戦争になりかねないからだ。
「大丈夫でしょう。シルヴィはとても綺麗ですし。彼女の強さも彼女の魅力です。きっといつかいい人が見つかりますよ」
「………はぁ…」
なので俺の答えはやり過ごすだ。
なお俺の答えを聞いて、シーナ様は少し間をおいて小さい溜め息をこぼした。
そうこうしている内にアルストロ家の屋敷に到着した。
屋敷の前ではゼノスさんとミリアさんを始めとするアルストロ家の使用人たちとケイレブ達が待っていた。
「ゼノス、ミリア、この二人の解凍をお願いね。ノアは私についてきなさい」
「かしこまりました。奥様」
「直ちに、奥様」
ゼノスさんとミリアさんは俺が引っ張っていた氷塊を持っていき、俺もシーナ様に言われた通りシーナ様について行く。
「師匠!」
俺がシーナ様について行く途中でケイレブ達が寄って来た。
俺は足を止める。
「師匠、大丈夫だったか!?」
「さっき、お城のほうでもの凄い音がしたから心配したのよ?」
「城の一部が爆発して、ここからでも城内が見えたからな」
「け、怪我ないですか?ノア先生?」
「ああ、とくだんこれといった怪我はないから心配すんな」
「ちょうどいいわ。ノア、この子たちも同席させることにするけど良いわよね?」
それもう、『参加させるからね。分かった?』って事後報告と言う名の命令でしょう。
「わかりました」
「みんなもついてきてくれ」
ケイレブ達も特に異論はなく、シーナ様にみんなでついて行く。
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