第18話 シーナ様と相談②
「ささ、座りなさい」
シーナ様に連れて来られたのはアルストロ家の屋敷にある客室の一室だ。
だがそれはあくまで表面上はだ。
壁と壁の間には防音や透視用他さまざまな魔法に対する結界が張られていた。
ケイレブ達はそれにまったく気づいてはいないが、いや、オリビアは微かに違和感を感じているっぽいな。
その証拠に他の3人とは違い、少し警戒して杖を強く持って周りを見ている。
「ほら、いつまでも立ってちゃ辛いでしょう?お菓子もよういしたからくつろいでちょうだい」
そう言われ俺たちはシーナ様の対面の席に座る。
俺たちが座るとミリアさん率いるメイドたちが紅茶とお菓子を人数分おいてミリアさんを除いて、そそくさと部屋から出て行った。
ミリアさんはシーナ様の斜め後ろに立つ。
シーナ様は紅茶を一口飲んで本題を始めた。
「それじゃあ、一応、王城からある程度は内容は聞いてるけど。ノア、王城で何があったか話してちょうだい」
「わかりました」
俺はシルヴィが王城に突撃した後に起きた出来事を洗いざらい話した。
それを聞いたシーナ様は頭を抱え、ケイレブ達は驚きで固まっている。
「とりあえずアルヴェール様の機転でどうにかなったのね」
「はい。なのでかなり早いですが明日にはこの子たちを連れてエルンに戻ろうとおもいます」
「そうね。そうした方が賢明かしら。本当はうちの領地に来てほしかったのだけど」
「流石にそれは無理ですよ。アルストロ男爵領も一応王国の管轄地ですから」
「仕方ないわね……」
今のところ一番落ち着くのが俺がケイレブ達を連れてエルンに戻ることだ。
それはシーナ様も十分に理解している。
「ちょっと待ってよ!なんか全部解決したみたいだけどノアさんはこのままで本当にいいの!!」
ここでアイナが席を立ち俺にそう聞いてきた。
俺は冷静にアイナの真意を問う。
「それはどういうことだアイナ?」
「だって、結局ノアさんの罪は消えないで、そのアルヴェール様が助けてくれたみたいに言ってるけど、私からしたらそのウィリアム様とやってること何にも変わらないんだけど」
それを聞いて、俺とシーナ様は顔を見合わせて、ケイレブ達の方も見る。
するとどうやらみんな俺とシーナ様の会話の内容に納得いってないようだ。
「なるほどな。確かにお前たちには分かりづらかったかもな。なら最初から説明するとだな。まずアルヴェール殿下がしてくれたのは言い方はひどいかも知らないが、ようは俺たちに逃げ道を用意してくれたのさ」
「逃げ道…ですか?」
「そうだ。あの場じゃ、いろんな派閥があって、アルヴェール殿下の意見も全員が同意してくれるわけじゃないし。もちろん彼の敵もいる。その中で俺を助けるにはその場の全員が納得するような提案をするしかない」
「その為にアルヴェール様はノアの国外追放の罪を建前にその場を余計に拗らせない為に自分たち側の非も認めつつ、大元はこちらにあるとし、再度警告して、ノアに逃げ道作ってくれたの。シルヴィ達が暴走して止められるのはそれぞれの家族かノアだけなのは公然の事実だから、あの場で余計なことを言うとシルヴィに殺されかねないもしれないしね」
シーナ様はくすりと笑いそう言った。
大半の人は殺されそうになっても止められる術がないから何も言えないんだけどな。
「そういう訳だ。王都も一筋縄ではいかない。本当はアルヴェール殿下もあの場に出てきたこと自体かなりの危険を覚悟で助けたくれたんだ。そこはちゃんと覚えておいてくれ」
「う~~ん~~俺はよくわかんねーけど、とりあえず師匠が平気ならそれでいいや!」
「俺もそうですね。師匠が納得しているのなら口出しは無用だと思います」
「わ、私もノア先生が大丈夫ならそれで……」
3人は納得してくれたみたいだな。
そして肝心のアイナは
「うう~~~……わかったわよ。ノアさんがそれでいいなら私も納得するから」
仕方なくといった感じだが一応納得はしてくれたようだ。
「ありがとうな。それじゃあ、王都にきて本当にすぐだが明日にはエルンに戻ろうか」
「エルン行きのチケットはこっちが用意しとくわ。ミリア、お願いね」
「かしこまりました、奥様」
「ありがとうございます。それとクレアはどうしますか?実はここに来てから彼女の姿を見てないのですが?」
「クレアさんなら王都の中央教会に所用があってもう少しここに滞在しなくちゃいけにないみたいなの。彼女は後で私が責任を持って送り届けるから安心してちょうだい」
「ありがとうございます」
「それと、あんまり外に出歩かないこと。ケイレブ君たちも、外に出てまた余計な面倒はこっちとしても面倒だからね」
「すみません。毎度迷惑を」
俺は頭を下げてシーナ様に謝る。
「いいのよ。元凶は本当に嘆かわしいことにうちの娘ですもの。本当にどこで育て方を間違ってしまったのか………」
「あはは……」
そのことに関しては本当になんとも言えないな……
「それでは俺たちはこれで失礼します」
俺はケイレブ達は連れて部屋を出る。
「よろしかったのですか?」
ノアたちが出たことを確認するとミリアがシーナにそう言った。
「あら、何がかしら?」
「このままノア様たちを戻したら、今度こそシルヴィアお嬢様が怒り狂いますよ?」
ミリアの懸念をもっともだ。ここでまた、ノアが自分の知らぬうちに離れたら、今度こそ王都がなくなるかもしれない。最悪の場合、他の6人にノアを取られでもしたら、どうなることか想像がつかない。
「ちょうどいいノア君離れになると思うのだけど?」
「おやめください。本当の意味で取り返しのつかないことになります」
「やっぱりそうよね……。仕方ないわ、シルヴィアたちの分を用意しといて」
「かしこまりました」
こうして、ノアたちはたった1週間ちょいでまたエルンに戻ることになった。
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