第19話 エルンへ帰還
数え切れないほどある王城にある部屋に一室、そこには今およそ20代前半と若い男女の三人組がいた。
それは第二王子アルヴェールと栗色のボブカットの眼鏡を掛けたアルヴェールと同じぐらいの年頃の女の子と同じく同年代の赤髪にバサバサとした髪の男がいた。
「殿下、あまり勝手な行動をしないでください」
「悪かったよ、テリア」
「今更、殿下に言っても無駄だろ?」
「アルガンは黙ってください!」
第二王子アルヴェールの仕事部屋では幼馴染であり側近のテリアとアルガンの3人で先ほどのシルヴィによる事件の件でアルヴェールはテリアに文句を言われていた。
「大体ですね、うちの派閥は唯でさえ人がいないのに友達だからといってあの場に出るのはですね!」
「だが、あの時はアルが言った方法でしか解決できなっただろう。もし、これ以上ノアに罪でも着せたら、あのシルヴィが黙って帰っちゃくれない。正直俺は帰ってくれて助かってるぜ」
「それはそうなんですけど……!」
テリアもアルガンの言っていることは理解している。もしあの時、あれ以上泥沼化したらシルヴィが何をしでかすかわからないからだ。
だが、少しずつだが宮廷争いが起こり始めているこの時に余計なことをすれば相手に付け入る隙を与えかねない。アルヴェールの陣営はただでさえ人が少ないのだからまずは地盤を固めたいテリアとしてはそう簡単に受け入れがたい現状なのだ。
だがそれ以上にアルヴェールとアルガンの考えも理解できてしまう点怒りのぶつかりどころがないのだ。
「とにかく!これ以上余計なことはしないでくださいね!いいですね…?」
「わかったよ。できる限り善処するよ」
「そこは絶対って言ってくださいよ!!」
「無理だろ、あの世代に関わってる時点でそれは諦めたほうが賢明だろ」
「……うう~~………」
「あはは……とにかく、ノアの一件に関して当分は落ち着くだろう。その間に僕らは僕らでやれることをしようか」
「りょ~かい!俺もできることはやるぜ!」
「も~今度はちゃんと私の意見も聞いてくださいね!!」
なんやかんや言ってこの3人はとても仲が良いのだ。そしてアルヴェールたちは自分たちがこの宮廷争いで生き残る為に準備を始める。
***
「なんで私があんたの隣なのよ」
「それはこっちのセリフですよ。どうして私がシルヴィ先輩と……」
「まあまあ。シルヴィア先輩もシャルル姉さんもそこまでに」
「「ネモは少し黙って!」」
「はい……」
ダンジョン都市エルン行の列車の中、数多く10車両ある中で最も豪華な1車両目、シーナ様のご配慮で今俺たちはこの車両に乗っているが明らかにのんびりとくつろげるようなとできるような雰囲気ではない。
シーナ様のご意向で、シルヴィ、シャルル、そしてネモもエルンに一緒に行くことになった。
そして今、二つのグループに分かれて座っており、ケイレブ達子供組とその見張り役として俺が一緒で、残りの3人と、2つのグループとなっている。
「師匠、あそこは本当にあのままで大丈夫なのですか。正直言って、今すぐ止めに行った方が良いと思うのですが」
ジンが心配そうに俺にそう言ってきた。
確かにジンたちからしたら、あれはもはや生きている爆弾だしな。
「そこまで心配する必要はない。あれでも二人とも場を弁えているからね。魔法を撃ちあったりはしないさ……多分…それより、エルンに戻るにあたって冒険者について復習でもするか」
「復習って言ってもそこまで知ることってあるのかしら?」
「まあ知っておいてそんないはずだ。というわけでまずは一つ目、冒険者とはなんだ?」
「そんなのダンジョンを攻略する人のことだろ?」
ケイレブが俺の問題に確認するように答えた。
「正解だ。もっと正確に言うなら、冒険者ギルドに所属している人間だな。ケイレブの言う通り、大半の冒険者はダンジョンに潜って、魔物、モンスターを倒して、魔石や倒したモンスターの素材をギルドで換金する」
「モンスターの素材って、私たち見たことないんだけど?」
「それについては後で説明しよう。それと冒険者はダンジョンに潜る以外にも護衛や外に生息しているモンスターの討伐なんかもしてる」
「見たことある……たくさんの人が一緒に街を出るの……」
「オリビアが言ってるのが俺が言う護衛依頼の冒険者だな。主に護衛依頼は商会や貴族が出すからそれなりのランクの冒険者しか受けられないから、今のお前たちには無縁だな。じゃあ次にダンジョンとはなんだ?」
この質問には4人とも口を閉じた。改めて、ダンジョンとは何かと聞かれると答えれなくなるのは想定内だ。
その中で答えたのジンだった。
「モンスター、魔物の巣窟ですか?」
「及第点ってとこだな。他に何かつけたすことはあるか?」
それからは誰も何も答えない。
まあ、正直言って最初から正しい答えが来ることは思ってなかったらな。
「時間切れだ。ダンジョンとは主にダンジョンコアが形成する異空間のことを指すのさ」
「ノア先生、ダンジョンコアってなんですか?」
「いい質問だなオリビア、ダンジョンコアとは人間でいえば心臓に位置するものを指す。このダンジョンコアはそのダンジョンの魔物を生み出したり、ダンジョンの環境を構成するその中核を担っていて、ダンジョンの最奥にある魔力の塊みたいなとてつもない品物だ」
「なんかやばそうなもんだな」
「ケイレブ、やばそうなではなくて、ガチでやばい物だ。こいつ一つ手に入れるだけで国同士が戦争を起こすことだってなくはないぞ」
「まじかよ……」
「でもそれっておかしくない?」
そこに異を唱えたのはアイナだ。
「どういうことだアイナ?」
ジンがアイナにその意味をと
「だってすでにいくつかのダンジョンは攻略されてるんでしょ?なのになんでみんなダンジョンコアを持ち出さないの?」
「確かに、アイナちゃんの言う通りならたくさんダンジョンがなくなってるはず……それなのにそんな話聞いたことがない」
俺はアイナとオリビアに感心した。この話のなかで最も重要な要点に自ら辿り着いたその洞察力は中々なものだ。
「その通り、ダンジョンコアがなくなったダンジョンは崩壊する。しかし、すでに攻略済みのダンジョンは今なお機能している。それはなぜか?答えは簡単だ、残しておいた方が利があるから」
「利がある?」
「なるほど、確かに…」
ケイレブはいまいち理解してなさそうだが、ジンは合点がいったみたいだ。
「ダンジョンは大きな経済効果を生む、魔石に関しても魔物の素材にしてもほとんどがダンジョンによるもので作られている。この列車だってその動力源だって、ダンジョンの深層で倒した魔物の魔石で動いているんだぞ?」
「マジかよ…こんなすごいな物を魔石で」
「そうだ。だが浅い階層の魔物の魔石をいくつ組み合わせてもここまで大きなものは動かせない。それこそ、高難易度ダンジョンの階層ボスクラスの魔物の魔石だろうな」
『ご利用いただいていますお客様へ、もうまもなくダンジョン都市エルンに到着いたします。繰り返します。もうまもなくダンジョン都市エルンに到着いたします』
列車の車内放送が鳴り響く。
「どうやらもうそろで着くらしいな。お前らも出る支度をしとけよ」
『はーい』
ケイレブ達は王都で買ったお土産などをまとめ始めた。
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