第20話 ノアのダンジョン攻略

「ちょっとノア、こっちに来なさい」


俺も出る支度をしようとしたところ、シルヴィからお呼びがかかった。

今のシルヴィの声の感じからして何か不満があるっぽいから、正直行きたくないんだが。


「ノア、早くしないと本気で子供を」

「今行きますただいま行きますすぐ行きます!!!」


俺は猛ダッシュでシルヴィたちのもとに駆け寄った。


「なによもう……」


自分で呼んだくせになんで拗ねるんだよ。


「それで、なんのようだ?」

「エルンに着いたらダンジョンに行くわよ」

「ああそう。行ってらヴェ…!?」


なんだそれだけかよ。そう思って俺はケイレブ達のもとに戻ろうとすると首根っこを掴まれた。


「なにすんだよ!?」

「馬鹿言ってないで、アンタも一緒に行くに決まってるんじゃない」

「いや、なんで俺が……」

「そんなの、私の行くところにアンタがいるのは当たり前でしょ?」

「なんだその物騒な呪いは…」

「呪いじゃなくて祝福でしょう?」

「それを祝福と呼ぶのはシルヴィ先輩だけでしょう?」

「なにか言ったかしら愚妹?」

「だれが愚妹だごら?」


妹よ、いつもの口調が崩れてるぞ?


「兄さんは心配せず。彼らは僕とシャルル姉さんがしっかりと面倒を見るから」

「だったら、お前がシルヴィとダンジョンに行ってくれればいいものの」

「兄さん何か言った?」


こいつ、開き直りやがった。というかお前、あいつらとそこまで年変わらないだろ?

その時列車が前に少し揺れた。


『皆様、ダンジョン都市エルンに到着しました。皆様、素敵なダンジョンライフをお楽しみ下さい』


どうやら、エルンに着いたみたいだな。


「さあノア、ダンジョンに行くわよ!」

「え、ガチで行くのかよ~~~!!!!」

「お願いだから問題だけは起こさないでよーー!!」

「頑張って~~」


シルヴィが俺を引っ張って列車を出て、シャルルとネモが一言ずつそう言って俺とシルヴィを見届けた。

ちなみにケイレブ達はシルヴィのスピードについてこれず、何が起こったかわからないまま俺とシルヴィがいなくなったように見えた。



***


「さあ、まずは今日中に15層まで行くわよ!」


俺とシルヴィは今、エルンのダンジョンの第4層におり、そこを爆走していた。


「おい、普通ダンジョンって5層潜るのに1日かかるんだぞ?昔それは教えたよな?」


昔、こいつが生徒で俺が教師の頃、シルヴィ含め、7人にはちゃんと俺の知ることのほぼすべてを教えたはずなんだけどな。


「アンタこそ何言ってんのよこれでも我慢してんのよ?本当が25層には行こうと思ってたのに……アンタの事だからどうせ、ギルドカードを再発行してるんでしょ?」

「なんでそれを知って……」


こいつ、マジで精神系の魔法でも使ってんのか?

そんな会話をしながら、俺たちは目の前に現れるモンスターをまるで作業ゲーとも言えない感じで倒していって、そして5層のボス部屋の前に到着した。

ここまで来るのになんと1時間もかかっていない。


「とっととこんな雑魚倒して先行くわよ!」


シルヴィは全く警戒心もなくボス部屋に入っていった。

もちろん俺も彼女について行く。

俺が入ると門が閉じ、ジェネラルウルフとグレートウルフが姿を現す。


「ノア、早く倒してよ」


シルヴィは何の構えもせず腕を組んでそう言ってきた。


「一緒に戦わないのかよ…」

「こんな雑魚、アタシが出る必要なんてないでしょ?」

「それはそうだけれどさ~」


俺は仕方なしに風魔法を4つ展開する。

3体のグレートウルフは真っ先に俺に向かって来た。

俺は3つの風の刃をグレートウルフに向けて放ち、3つの風の刃はそれぞれ1つにつき1体のグレートウルフの首を切断した。

ジェネラルウルフはと言うと、突っ立てるシルヴィに向かって行き、大きな口を開き牙を見せる。

しかし、ノアが用意していた残り1つの風の刃がジェネラルウルフの首を完全に切断した。

ジェネラルウルフとグレートウルフ達は黒の煙となり霧散し、魔石を落として消えた。


「ほら、とっととギルドカード読み込んで一旦ギルドに行くわよ」

「せめて魔石は回収しようぜ?」


シルヴィが急かす中俺は急いで魔石を回収してチェックポイントにギルドカードをかざす。

そしてダンジョンの入り口に転移して真っ直ぐギルドに向かう。

俺は受付嬢にギルドカードを渡す。


「5層の攻略を確認しました。少しお待ち下さい」


ギルドカードを受け取った受付嬢は一瞬奥に行きすぐに戻ってきた。


「それではノア様はこれよりFランク冒険者として登録されました。これによりノア様はエルンのダンジョンでは30階層まで潜ることが可能になりました」


Fランク冒険者は冒険者の中で初心者とされ、Gランクから一気に初級ダンジョンの中層にまで攻略が可能になり、このランクからちゃんとした金銭を獲得できる。

ちなみにGランクは冒険者の中では仮免と言う認識でこのランクに残るのは基本的にケイレブ達などの子供たちや冒険者成りたての人間だ。

俺は受付嬢からギルドカードを受け取った。


「ほら受け取ったわね、行くわよ!」


俺がカードを受け取ったのをちゃんと確認してシルヴィは俺の服の襟を持ってもう一度ダンジョンに向かう。

俺たちは帰ってくるときに転移した場所にあった水晶にもう一度ギルドカードをかざして6階層に転移した。


「さあ、このまま一気に30階層まで行くわよ!!」

「おい、さっきよりなんか長くなってないか?」

「グズグズ言わず行くわよ!」

「へいへい」


シルヴィがまたしても1人先に行ってしまったので追いかける。








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貴族教師の憂鬱 鳳隼人 @dusdngd65838

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