第16話 城での事件後編

ノアとシャルルが話している間、謁見の間ではもう一つこの空気で動ける空間があった。


「シルヴィア、久しぶりじゃないか、よもや私に会いたくなったのか!仕方ないな、私は慈悲深い、君がそこまで言うなら私の側妃に」

「うっさいわね?そのお花畑の脳みそを私の炎で灰にしてあげてもいいのよ?」


死んでもおかしくない魔法を撃たれたと言いうのに、笑顔で馬鹿みたいなことを言うウィリアムに圧倒的な怒気を孕んだ声で割と恐ろしいことを言うシルヴィ。


「ああーもううっざいのよ。分かる?別に私はアンタなんかこれっぽちも好きじゃないのよ?私には既に婚約者がいるの。世界一愛おしい私の旦那様が、ねえ分かる?」

「まったく、君は相変わらず照屋さんだね。でも安心して僕と君の中じゃないか、あれは4歳の頃かな、君が間違えて騎士団の訓練場に迷い込んだ時僕が助けた」

「ただ私が騎士団の訓練で騎士たちをぼこぼこにしてたときなアンタが無理矢理中断させたときね」


二人の言い分をかなりかけ離れている。

しかし、当時、シルヴィにボコられた騎士たちやそれを知る幹部、そしてウィリアムの派閥に属していないまともな貴族たちはシルヴィの言い分が真実だと知っているのは当たり前で、逆によくこの状況でそんなことを言えるのか、ある意味その場にいた全員がウィリアムに関心していた。


「そうだったかもね。けど僕たちは幼馴染じゃないか。僕には君のことが手に取るように分かるよ。そもそも王族の僕と一平民の彼だったら悩む余地なんてないのは自明の理だよね」



ウィリアムの言葉にシャルルがボソッと『側妃に迎えようとしてる時点で器は知れてるけどね』と毒を吐くが幸い前にいたノアにしか聞こえていなかった。


「もううんざりだわ。そろそろ蚊がうるさくなるし、そうそうに一番うるさい蚊を始末しとこうかしら」


シルヴィは剣を抜き、剣に風を纏わせる。

そしてウィリアム向かって容赦なく振るう。


「流石にここで王の代理を殺すのはまずいって、シルヴィ?」


だが間一髪、風がウィリアムの首に触れる直前、ノアが闇と土の魔法でシルヴィの体を拘束し、彼女を剣を握り止めた。

これには謁見の間にいた全員が安堵した。

だが、もちろん、シルヴィは納得しない。


「ノア、早くこれを解きなさいよ」

「それはできない。解いたらそいつを殺すだろ?」

「当たり前よ。というかこいつを殺せば国外追放の件をなくなるのよ?」

「いや、そんな単純な話な訳ないだろ?ここは俺に任せてくれ」


数秒間、俺とシルヴィは見つめ合う。


「ふん」


シルヴィの力が抜ける。

俺は魔法を解除する。

シルヴィも剣を鞘に戻す。


「ありがとう」

「貸し一つだから」

「なら俺の貸しで相殺だな」

「そんなのあったかしら?」

「そうか、なら学生時代のシーナ様への愚痴を」

「ああ、わかったから!もう…」


俺はシルヴィと代わってウィリアム殿下の前に立つ。

俺が前に立つと明らかに嫌な顔をするウィリアム殿下。

俺自身別に彼自身にそこまで思い入れもないし、特段彼自身のことを嫌ってないんだけどな。


「ウィリアム殿下、そういうことでここで俺らは引くんで、ちゃんとお身体を癒してください」

「待て!」


俺がシルヴィとシャルルを連れて、帰ろうとするとウィリアム殿下が俺を睨みつけて止めてきた。


「貴様は国外追放の身になった分際でこの王城に侵入した。それがどういう意味か分かっているのか?」


ウィリアム殿下がしめたという笑みでそう言ってきた。

ええーーこういう時にまでそうなるのかよ?

だけど一応筋が通っているのがまた面倒なんだよな。

そう考えていると玉座の近くに見慣れた人物がいた。

彼は俺に向かって頷いた。


「衛兵!今すぐこやつを!カッ……!?」


俺はウィリアム殿下の腹を思いっきり殴り、彼の意識を奪った。

これでいいか


「貴様、殿下に何を!」

「静まれ!」


衛兵たちが俺に向かって来ようとした時、玉座の方から透き通るような力ある声が響いた。


「アルヴェール殿下!?」


謁見の間にいた貴族たちは彼に向かって頭を下げと衛兵たちは彼に向かって膝をつく。


「此度の件、私が受け持とう!そして罪人ノアよ、お前は国外追放を受けた身、今回は特別に見逃しておいてやる。これより3日以内に我が国の管轄から即座に撤退せよ!」

「はっ!」


俺はその場に膝をつき心臓に胸を添え応えた。


「シルヴィ、シャルル行こう」


俺は二人を連れて、アルストロ家に戻った。


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