第2話 ダンジョン都市エルン到着
『こちらダンジョン都市エルン行きの列車、まもなく出発いたします。搭乗の方は速やかにご搭乗お願い申し上げます』
「ふ〜間に合ったーー!」
アナウンスが鳴ると同時に俺はエルン行きの列車に乗った。
いやー、流石に朝から泊まってる宿が貴族の私兵で囲まれてた時は驚いた。
女将さんとおっさんのお陰で逃げ出せたから良かったものの危なかったぜ。
二人にはエルンでお土産でも持って帰るか。
『お客様、まもなくダンジョン都市エルン行きの列車が出発いたします。危ないですから駆け込み乗車はおやめください』
アナウンスが終わると列車の扉が閉まりゆっくりと列車が動きだす。
列車はどんどんスピードを上げて行く。
そういえば列車に乗るのもエルンから王都に来る時以来か。
俺は列車の一席に座って最近のエルンの情報を確認する。
何せ今の俺の知識はかなり古いものだからな。
俺はルドハート先生から出発前にもらった過去5年のエルンに関する新聞を読む。
「え〜と何々・・・ふむ、ふむふむ・・・なるほど・・・」
読んでいくとまずエルンの探索エリアは5年前と変わらず42層らしい。
それと最近は高ランクの冒険者が減って今では最高でBランク冒険者止まりでちょっとした不景気状態らしい。
確か隣の国に新しいダンジョン都市トバトが出来たんだった。
そこに人が流れたのか。
エルンからトバトまで片道10日前後と考えるとまぁ流れるか。
それから俺は外の景色を眺め、コーヒーを飲みながらのんびりと列車を満喫した。
***
『皆様、ダンジョン都市エルンに到着しました。皆様、素敵なダンジョンライフをお楽しみ下さい』
「ん"ん〜〜、ここは昔と変わらないな」
列車を降りると目の間には俺がいた全盛期よりは少ないが多くの冒険者が跋扈している懐かしのエルンの景色が映った。
俺は駅を出てルドハート先生からもらったメモを頼りに、その学校を目指す。
「確かにここら辺のはずなんだが……」
メモに従っていくとどんどん人通りが少なくなっていった。
ここってスラム街だよな。
ダンジョン都市とは言えそれなりに派閥争いなんてもんもなくはない。
だがそれ以上に親がダンジョンで死んでここに辿り着くほうが多い。
「あのすみません」
「あ、はい。どうかしましたか?」
ちょうど目の前に教会があったのでそこによって見ると、ちょうどホウキで教会の入り口を掃除していたシスターさんがいたので彼女に声をかけた。
「すみません」
「あら、どうしましたか?」
「この近くに子供達用の冒険者学校があると聞いたんですけど」
「それならうちですね」
「はい?」
シスターさんは手を止め、笑顔でそう言った。
「うちの教会、子供達用に冒険者のことについて教えてるんです。あ、もしかして貴方がルドハートさんの絶賛していたお弟子さんですか!」
シスターさんは目を輝かせ俺の手を握ってそう聞いてきた。
「え~と、一応ルドハート先生の依頼で来ましたノアと言います」
「ノアさんですね!私はこの教会のシスター兼冒険者をしていますクレアといいます」
俺が来たことを喜んでくれたのは嬉しいけど、なんか異様に期待高くない?
「ささ、入ってください!子供たち待ってますから!」
俺はクレアさんに案内されるまま教会の中に入る。
中は外装よりは綺麗で驚いた。
「こっちです」
教会の裏には来てみればそこには小さな小屋があった。
「あそこが教室ですか?」
「はい。ここの教会、寄付が少なくて、子供たちにも苦労させてしまい」
申し訳なさそうにいうがそういう事情ならしかたがないだろうな。
「暗い話は後でですね!子供たちも楽しみにしてますから!」
クレアさんは無理矢理話をそらした。
小屋の中に入ると10歳前後の男女4人組の子供たちがいた。
「クレア先生その人は?」
「この人は新しい先生のノア先生です!みんな挨拶して」
『・・・・・・』
誰一人挨拶をしてくれない。
まあ、子供からしたら、初対面の人間は誰も彼も怪しい人物として映るだろうな。
「ええーと、みんな緊張してると思うんです。でもみんないい子達ですから!」
クレアさんは必死にそう言って弁明する。
別にそこまで気にはしないんだが……
とりあえず俺は教壇の前に立ち自己紹介をする。
「大丈夫ですよ。じゃあ俺から自己紹介するね。俺の名前はノア。今日から君たちに冒険者としての基礎を教えに来た。よろしく」
「あんた、ランクはいくつだよ?」
そう言ったのは金髪の男の子だった。
ランクか、そう言えば王都に行ってからギルドに寄ってないからもう取り消しくらってるか。
「ランクはないよ」
「へ、なんだよ位無しかよ。そんな奴に教えてもらうことはねぇな」
おおーーと、まさかここでそのセリフを聞くとは。
実に懐かしいな。
「えーーと、君は」
「彼の名前はケイレブ君です。すみません」
「いえいえ、ありがとうございます。ケイレブ、つまり君は俺に教えてもらうことはないと言いたいのか?」
「ああ、俺達はもう3層まで潜ってんだ!あんたに教えてもらう事なんてない!」
なるほど、確かに彼らの歳で3層まで潜れてるなら中々だな。
「ケイレブ!そんな言い方はないでしょ!」
「いて!なにすんだよ!」
今度は赤毛の女の子がケイレブの頭を叩いた。
「クレアさん彼女は?」
「彼女はアイナちゃんです」
なるほど四人の中で背の高い方の子がアイナか。
拳に傷があるのが気になるが、もしかしてファイターか?
「アイナの言う通りだケイレブ。流石に初対面の人にそれはないと思う」
「わ、私も流石に言い過ぎかと・・・・・・」
「なんだよ、ジンもオリビアも!」
黒髪の男の子がジンで紫髪の弱気の女の子がオリビアか。
「みんな落ち着いて!せっかくノア先生が来てくださったんだから!」
「まぁまぁ、クレアさん落ち着いて下さい。ケイレブ」
「なんだよ?」
「俺が自分より弱いから嫌なんだよな?」
「ん、ま、まぁ・・・そうだな」
「なら俺が、お前より強いことを証明出来ればいいんだな?それなら俺の授業を受けてくれるな?」
「う、うん」
ケイレブは少し、頭に?を浮かべ頷いた。
その反応もあの頃の彼女みたいだ。
だが、こいつら4人はあいつらとは違う。
少なくてもあの時よりは楽だろう。
それに強いことを証明すればいいのなら楽にできるな。
「よし、それなら。クレアさん、今からみんなでダンジョンに行きませんか?」
「い、今からですか!?」
「はい。彼と直接対戦してもいいのですが、やっぱり冒険者のことを教えるならダンジョンで証明しようと思いまして」
「私は別に構いませんが・・・」
クレアさんがケイレブ達を見る。
「私は構わないわよ」
「俺も大丈夫です」
「わ、私も平気です」
ケイレブ以外の3人もオッケーがでた。
「それじゃあ行きましょうか」
俺はみんなに証明がてら最初の授業をしにダンジョンへと向かった。
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