貴族教師の憂鬱

鳳隼人

第一章 国外追放

第1話 冤罪で一旦追放

人生とは波瀾万丈だ。

上手くいって行ったら突然蹴落とされたり。

時たまには幸運を掴むことだってある。

けど大半の人間は前者だ。

幸運を掴んでも手放せば結局それは転落なのだから。


「ほんと、驚いたよ。まさか君が国外追放となるとは」

「一番驚いたのは俺ですよ。まさか陛下が公務で離れてる隙に冤罪で追放なんて。いや、一応ちゃんとした罪状ではあるのか?」


世の中は理不尽だらけだ。

しかもそれが嫉妬や自尊心など面倒なことが大半なのは泣くしかない。


「いや、あれは完全な八つ当たりだ。男の嫉妬とは実に醜いものだ。女性の嫉妬ならまだ儚いのに」

「そんな呑気な・・・とりあえず、令状は正式なものですし、一時的にこの国の管轄外に行かないと」

「だが君なら行く当ては沢山あるだろ?何せ、海の巫女、火の名工、音速の弓兵、荒野の狂獣、光の聖女、冥府の魔姫、そして魔術の剣聖の師匠なのだから」


ルドハート先生は指を折りながら、笑顔でそう言った。


「そうは言いますけどこの国には家族もいるんですよ?まだ弟の結婚式も見れてないのに・・・」

「それは普通妹や姉に言う言葉なのでは?」

「いえ、単に見たかっただけなので。あ、言っときますけど俺はブラコンじゃないですからね」

「そんなの知ってるよ。かれこれ君たちを見てきて何年経ったと思う?」

「え〜〜と俺が卒業したのが3年前だからざっと6年くらいですかな?」


懐かしいな〜〜、親父に無理矢理仕事ねじ込まれて入学した日。


「懐かしむのはいいけど、どこか候補はあるのかい?」

「いえ、特に、まぁでも最悪、彼女たちの誰かの国に行くのもありですが」

「それだとあの子が国を破壊しかねないんだか?」

「とりあえず様子見として一月程度安全に過ごせる場所ですね」


多分陛下が戻ってくれば国外追放も解けるだろうし平気だろ。


「僕の話聞いてないね・・・・・・それなら久しぶりに帰ってみたらどうだ。ダンジョン都市エルンに」

「エルンか・・・」


ダンジョン都市は自治区で国の管轄外だから大丈夫だっけ。

それにしてもほんと懐かしいな〜王立学校に入学する前に行って以来もう一度も行ってないな。


「そうですね。久しぶりのダンジョンもいいかもしれませんね」

「おお!それは嬉しいね。じゃあ、ついでに僕が依頼出すから受けてくれないかな?」

「・・・・・・・・・」


まぁ、なんとなくそうなるとは思っていたさ。

この人が的確に場所の名前を言うなんてロクなことじゃないくらい分かっていたさ。

何せ、あの依頼を出してきたのもコイツだからな。


「私の知り合いがエルンで小さい子供用の冒険者学校を経営していてね。丁度人材不足だと嘆いていたんだ。そこで君にはその子供達に冒険者の基礎を教えて5階層のボスを倒せるぐらいに育ててもらいたい」


教師かーー、この人からのこう言う依頼にはもう痛い目を見た記憶が力強ーーく、残ってるんだよなーー、でもこの人にも多少の恩もあるしなーー。


「ん〜〜、分かりました。受けましょう。それ以外は何もありませんか?」

「ああ、私の依頼はそれだけだよ。ほれ前金として金貨50枚」


ルドハート先生はまるで銅貨を出す感覚で金貨を出す。

これだけあれば平民の年収5年分はあるぞ。


「まったく、金貨なんですから放り投げないで下さい」

「なに、私には金と言うものの価値は低いからな、それ相応のあつかいだよ」


そうは言うけどこれ単純に銀貨5000枚、銅貨50000枚に相当する大金をほいっと投げる気が知れない。


「それでいつ頃出発するんだい?」

「そうですね。出来るなら明日には出発したいですね。でないと彼女に監禁されるかもって、なんちゃって」

「いや、それ本気と思った方がいいよ・・・」


やめて下さいよ。そんな可哀想な目で俺を見ないでください!


「とりあえずあのボンボンに要らぬちょっかいをかけられる前にとんずらしたいと思います」

「そうだね。それが賢明だね」

「それではルドハート先生。また」

「ああ、またな」


俺はルドハート先生と別れ、旅立ちの準備をする。

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