第14話 王都でデート
「ノア、どっちの方がいいかしら?」
「・・・白の方が似合うと思う」
「そうよね♪じゃこれもお願いするわ」
「かしこまりました」
さて、今俺たちは王都の高級洋服店にいる。
朝食を食べていた最中に連れ出され、一番最初に連れてこられたのがここだった。
この洋服店は貴族向けの服は売っているが、洋服自体は私服だったり、お忍び用だったりと日常的に着る物を売っている。
「ノア、こっちとこっち、どっちがさっきのワンピースと合うと思う?」
シルヴィが青と白の帽子を持って俺にまたこの質問をする。
この洋服店に来てからおよそ1時間程、俺はこの男子がされたくない二択をずっと続けている。
これの面倒な点は大抵が既に答えが決まっていると言うことだ。そして外せば何故かこちら側が怒られるという理不尽の権化かのような問題だ。
「やっぱり白には白が似合うと思うけど」
「そうね。私もそう思ってたのよ♪これもお願いね」
「かしこまりました」
それから更に1時間程度2択に答えて、俺たちは店を出た。
すでに俺の精神は疲労困憊だ。
俺たちが次に向かったのは王都でも有名なスイーツ店だった。
中に入るとすぐに席に案内され、席に座るとシルヴィはそのまますぐに注文する。
「スペシャルパンケーキ二人分とL3をお願い」
L3と言う知らない単語が聞こえたが、それを聞いた女の従業員さんはなぜか微笑んだ。
「かしこまりました」
「じゃあ俺はコーヒーを」
「かしこまりました」
注文を受けた女従業員さんはそそくさと店の裏に行った。
「ああーーいいわね。毎日こうならいいのに?」
シルヴィがかなり分かりやすく同意を求めてくる。
「俺はもうなくても良いけどな」
「かわいくな~~い~~」
俺の答えを聞いてシルヴィは頬を膨らませ拗ねてしまった。
だがそれ以上に俺は彼女に聞きたいことがある。
「それでシルヴィ、どうやって俺が国外追放された件を知ったんだ?お前、本当は今頃リーウェルのところにいるはずだろ?」
本来は今頃シルヴィはリーウェルのいるエルフの国、ユーグランド森林国に遠征をしに行っていたはずだ。
それなのになぜか今遠征に行っているはずの本人が王都でお茶を飲んでいる。
「そんなのアンタが私からいなくなるって聞いたのよ?私がそのままあの潔癖症に会いに行く方がおかしいわ。それにもし潔癖症のところに着いたときにこの知らせが届いてたら彼女の遠征なんて関係なしにアンタを私から奪いに来たはずよ」
「いや、俺はお前のものになった覚えはないんだが……?……それより一体誰がお前に俺の国外追放の知らせを?」
「ミリアよ?」
「あの人か……」
ミリアさんめ何てこと……
「今回は大活躍だったから彼女には多少色を付けておいたわ」
そのせいで一月もの間王都は地獄と化したんだがな。
「お待たせいたしました」
そうこうしているとウエイトレスのお姉さんが注文していた料理を運んできてくれた。
その中で俺は一つだけ明らかに異質な雰囲気を纏ったものが目に映った。
「こちらスペシャルパンケーキお二つとコーヒー、そしてL3となっております」
前者の3つは良かった……しかし最後のこのL3は……
「ではごゆっくりと」
ウエイトレスのお姉さんは笑顔で通常業務に戻っていった。
「さ、いただきましょうか♪」
シルヴィは笑顔で、何も気にせずにパンケーキを食べ始めたが、俺はこれを聞けずにいられなかった。
「シルヴィ…これは一体……」
シルヴィが頼んだL3、ピンクの薄透明なガラスの大きなグラスに、そこに映える果実のジュース、そして明らかに普通ではない飲み口が二つあるストロー。
「何って、婚約者同士の限定ジュースだけど?」
「婚約者同士の限定ジュースってどういうことだよ?」
「もう、別にそんなこと今更気にしてもしょうがないでしょう」
「気にするだろう!だって俺ら別に婚約者じゃねえだろ!てか付き合ってすらないだろう!」
「なによ、別に将来結婚するんだから婚約者と変わらないでしょう?」
「お前の見ている未来では俺は一体どうなってんだよ……」
「あら気になるの?それなら後で存分に聞かせてあげるわ」
「…言うんじゃなかった……」
「それより早く飲みましょう」
シルヴィはそう言って俺の両脚と両腕を闇魔法で固定する。
これの一体どこが婚約者だ。
客観的にみたら完全にやばい奴だって…
とりあえず光魔法で相殺を
「言っとくけどこの魔法は光魔法への耐性持ちだからそんじょそこらの魔法じゃ解けないわよ」
「なんつー物騒な…」
「だから諦めて、私と一緒に飲むわよ」
シルヴィはストローに口をつけるがまだ飲まず俺を見る。
はいはいわかりましたよ。
俺は諦めてストローに口をつけジュースを飲む。
それを見て満足したシルヴィもジュースを飲む。
人通りが少なくてよかった。
もしこんな姿を多くの人に見られたらおわ…り……
一瞬、外に目を向けたとき見覚えのある顔が向かいの店舗のガラス越しに見えた。
俺は慌てて彼女の名前を呼ぼうとした。
「ミリ…!ヴェ!?」
しかし、シルヴィが私だけを見ろと魔法で俺の首を固定する。
最悪の人に見つかってしまった……
それから、何とかジュースを飲み切り、合間にシルヴィから無理矢理パンケーキを口に入れられ、何とか完食した。
ちなみに俺の頼んだコーヒーは完全に冷めてしまったので、一気飲みして完飲した。
正直めちゃクソ苦かった。
やっぱりコーヒーは少しずつ飲むのに限るな。
そして今はシルヴィが俺の腕に自分の腕を絡ませて移動してる。
というかそろそろ問いたださなくちゃな。
結構肝心なことを聞いた。
「なあシルヴィ、こんなに堂々と俺が王都を闊歩してていいのか?」
「あら?なにか問題でもあるの?」
俺の腕に自分の腕を絡ませて体を寄せるシルヴィが何を言っているのかわからない様子である。
だから俺は彼女に丁寧に説明する。
「いやな、俺今国外追放された身だからな?そんな奴が国の中枢である王都を白昼堂々と外を歩き回るのはどうかと思うんだが?」
こんなのどんな犯罪者だってやらない。
もし、王都の衛兵にでも見つかれば…
「おい!いたぞ!!」
なんとタイミングが良いのか悪いのか王都を巡回していた衛兵に見つかってしまった。
「まさか本当にいるとはな。罪人ノア!」
ぞくぞくと俺たちの周りに衛兵が集まってくる。
まずい、このままじゃ大量の死傷者が出てしまう。
「罪人ノア!おとなしく手を挙げろ!」
俺は言われた通り両手を挙げるが、俺は一応衛兵たちに向かって一つ忠告する。
「その前に一つだけ忠告するが……」
「罪人の癖に忠告だと?何を言っている」
衛兵たちは全く聞き耳を持たない。
はいはいそうですか、だがそれは自己責任だからな?
俺がもう知ったこっちゃない。
「そうか。なら聞き流してもいいが責任は負わないぞ?いいか今すぐここから逃げろ、じゃないと死ぬぞ?」
俺はかなりマジトーンで衛兵たちに警告する。
しかし彼らは俺の忠告を笑い飛ばす。
「ハハハ!我々が死ぬだと?舐めるな!我々は王都の治安を守る者だ!それがたかが平民の貴様になぞ!」
「アホが。俺がいつお前らの相手をするって言った?」
俺が隣を見ると美しいプラチナブロンドの髪が逆上がり、漆黒に染まっていく。
「折角、ノアとのデートなのに……」
周囲の魔力が彼女に集まっていく。
折角上機嫌だったのに…こうなったシルヴィを止めるのは一苦労だぞ?
それにしても早く逃げて~、でもガッチシと腕を取られてるから身動きが取れない。
……助けて…
「あ"あ"ー、またアイツのせいなのね。私とノアの邪魔をするならだれであろうと」
「ヒッ!!」
濃密度の魔力によって、近くの建物の窓ガラスが次々に割れ、衛兵たちは腰を引く。
「許さないわ!!」
「始まった……」
魔力の嵐が吹きあられ、周辺を破壊し尽くす。
勿論集まった衛兵たちはその魔力に当てられ倒れたり、判断力のある奴らはとっとと逃げて行った。
「行くわよ」
「え?って、ちょっ!?」
シルヴィは俺を連れてどこかに飛んでいく。
まぁ、ある程度想像は出来るんだが・・・これはまた荒れるかもしれん・・・・・・
俺は無理だと分かったいても、この先これ以上荒れないことを祈る。
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