第3話 実力把握
ダンジョンは基本的に巨大建物として突然現れる。
エルンのダンジョンは神殿の形をしており、そこから地下に潜っていくタイプだ。
そしてダンジョンに潜るには冒険者ギルドに所属しなくちゃならない。
だからまずは冒険者ギルドに行き再登録をしなくちゃならない。
「すみません。付き合わせてしまって」
「いえいえ!こちらの不手際が原因ですので!」
クレアさんはさっきからケイレブのことは自分の教育不足だと謝り続けている。
冒険者ギルドに付いたのでここからは俺が1人で行く。
昔より人が少なったからと言って、冒険者には荒くれ者が多い。
「それではすぐ済ませて来ますので」
ギルドの中に入ると冒険者達が情報交換をしたり依頼を探したりと懐かしい景色が目に入る。
「すみません」
「はい」
「冒険者登録をしたいのですが」
「かしこまりました。そのお年ですと再登録の方がよろしいのでは?」
う~~ん…よくよく考えれば、再登録したら面倒なことになりそうだし、ここは一旦初心に戻ってみるのもありだな。
「いえ、自分的にはかなりスランプがあるので一からやり直したいと思います」
「かしこまりました。それではお名前と役職の記入をお願いします」
俺は受付嬢から手渡された紙に名前と職業を書き、渡す。
「それでは、お名前ノア様、役職剣士でよろしいでしょうか」
「はい」
俺は受付嬢からギルドカードをもらう。
「ノア様はGランクですのでダンジョンは5層までです」
ダンジョンの潜れる階層はランク毎に振り分けられてダンジョン都市によって変わる。
Gランクは俗に見習いと言われる一番下のランクだ
「分かりました」
「それでは素晴らしいダンジョンライフを」
俺は受付嬢のお姉さんに見送られ外に出る。
「クレアさん終わりました」
「ノアさん冒険者登録おめでとうございます」
「あ、あははは・・・・・・」
ああ、二回目の登録なんて言いづらいな。
「それじゃあ、ダンジョンに行きましょうか」
俺たちはダンジョンに向かった。
ダンジョンの入り口の神殿の前には警備の人がいて、俺たちは全員その人にギルドカードを提示した。
「クレアさん、それに坊主たちまで。今日もダンジョンか」
「はい」
「そうか。気をつけて行けよ。それとそこの坊主は」
「ノアです。今日から彼らの教師を務めることになりました」
「なるほどクレアさんの新しい同僚か」
「期間限定ですが」
「クレア先生、早く行きましょう!早くそいつに俺たちの実力を見せつけてやるんだ!」
「ちょっとケイレブ君!一人で走っていかないの!」
一人で先にダンジョンに入って行ったケイレブを追ってクレアさんもダンジョンへ、そのクレアさんに続いてアイナ達3人もダンジョンに入って行った。
「ったく」
「はは、元気でいいじゃないか」
「元気なのはいいんですけど。あまり勝手なことをされると心配で」
「あはは・・・アイツらにも色々とあるんです。半年前からダンジョンに入って頑張ってるんです。ノア先生もアイツらのことよろしくお願いします」
「ええ、任せてください」
俺も彼らに続いてダンジョンに入って行く。
「遅いぞ」
「悪い悪い」
1層の入り口である門の前でケイレブが腕を組んで待っていた。
その後ろにはアイナたちとクレアさんがいた。
「とっとと行くぞ」
「ちょっと、ケイレブ君、勝手に一人で行かないの!」
そう言ってケイレブは門へと入っていった。
彼に続いてアイナたちも門をくぐって行く。
それを追いかけるようにクレアさんも門をくぐる。
俺も彼らに続いて門の中に入る。
門をくぐるとそこは草原だった。
「あ、ノアさん。すみません。先に入ってしまって」
「いえいえ、大丈夫です。それよりさっそく始めましょうか」
「はい!みんな、こっちに来てください!」
クレアさんが呼びかけるとケイレブたちが集まってきた。
「それじゃあ、まず各々の役職の確認からだな。まずケイレブ、お前は片手剣士か」
「まあな」
「次にアイナは武器を持っていないがファイターか?」
「そうよ」
「それでジンが槍使いか」
「はい」
「最後にオリビアが魔法使いか」
「は、はい!」
近距離2に中距離1遠距離1のバランスの取れたパーティだな。
「それより見てなよ!俺たちの実力!」
「ちょっとケイレブ!勝手に行かないで!」
「まったく」
「ま、待ってよーー!!」
ケイレブが早速とモンスターを探しに行ってしまった。
「俺たちも行きますか」
「そうですね…」
エルンのダンジョンは5層ごとに環境が変化する。
1層から5層は平原の階層だ。
たしかここには狼型のモンスターが多かったはず。
「クレアさんはランクはいくつなんですか?」
「私はCランクです。それと私のことはクレアと呼び捨てにお願いします」
クレアさ…クレアはポケットからギルドカードを取り出して見せてくれた。
そこには確かにCランクの記載されていた。
「へーー、俺と年もそう変わらなそうなのにCランクとはすごいですね」
「実は私、昔ある方に仕えていたんですけどちょっとミスをしてしまって……これはその時に上げておいたものなんです」
「それでもすごいのは変わりませんよ」
「えへへ、ありがとうございます」
「それとクレアはムンクなんですね」
よく見るとクレアは腰にメイスを装備していた。
ムンクは簡単な回復魔法が使える近距離職でメイスを振って敵を倒すバチバチのアタッカー職だ。
「お、お恥ずかしい///」
「いたぞ!」
そうこうしてる内にケイレブがモンスターを見つけたらしい。
アイナたちがケイレブの下に集まりそれぞれ戦闘態勢にはいる。
俺とクレアは4人と少し離れた場所で見守る。
「それじゃあ、お手並み拝見といこうか」
「しっかり見とけよ!」
相手はウルフ2匹か、どう出る。
まず飛び出したのはケイレブだった。
そして一足遅れてジンがケイレブの後ろを追いかける。
ウルフたちもケイレブ達に向かって走ってきている。
「はああーー!!」
ケイレブがまず前にいたウルフに剣で横払いをして横に弾き、それに合わせてジンが逆方向に槍でもう1匹のウルフを弾き二匹の切り離す。
「うまいな」
敵を分断するのは戦闘の基本だ。
特にウルフのように連携を得意とするモンスターには有効だ。
「ケイレブ、一気に畳みかけるわよ!」
「おう!」
「じ、ジン君サポートします!」
「頼む!」
分断した後、アイナがケイレブの方にオリビアがジンの方に入った。
ケイレブとアイナのチームは交互にヘイトを買ってその隙にもう一人が攻撃していくスタイルで、ジンとオリビアのチームはジンが主な攻撃担当でオリビアはジンが敵を止めてる隙に攻撃を仕掛けたり魔法で牽制するスタイルか。
「ノアさんから見てどうですか?」
「悪くはありませんね」
「ほんとですか!」
「ですが少し危なっかしいですね」
「え、そ、そうですか…」
え、あ、そうだった!これまで彼らに戦闘を教えてきたのはクレアだった!今の発言はクレアに対する苦言ともとられるのか!
「い、いや!別にクレアの教えが悪いって言いたいじゃないいんだ。ただこのままだと少し……」
「いえ、もともと私もソロで冒険者をやっていたので自信はなかったんです。それを知れただけで満足です……」
「勝ったぞーー!」
ケイレブ達の戦闘が終わったようだ。
その証拠にウルフは消えて彼らの近くに2つの魔石が落ちてる。
「みんなー!ちゃんと魔石を拾ってきてね!」
『はーい』
ケイレブ達が魔石を回収して戻ってくる。
「どうよ、俺らの実力は!」
戻ってきて早々ケイレブが自慢げにそう言ってきた。
何故だろう、自分より年下の奴に言われるとめちゃクソムカッてくるわ。
まぁでもこれも仕事だし我慢しなくちゃな。
「そうだな。ケイレブだけじゃなくアイナ達もこっちに来てくれ」
アイナ達も呼んで彼らの戦闘について俺の評価を話す。
「まず、戦闘全体の評価としてはまずまずだったな。今までこれと同じスタイルで戦ってきたんだろ」
「そうよ基本的にはケイレブとジンがモンスターを分断させてそこに私とオリビアが入るって感じ」
アイナが俺にわかりやすく解説を入れてくれた。
「そうだな。連携のスムーズさ的にそうだと思ったよ。君らのパーティとしての評価は申し分ない」
「なんだよ結局なんも言えねえじゃねえかよ」
「おっとケイレブ、勘違いしてもらっちゃ困るぜ。あくまでパーティとしての評価は良いと言っただけだ。お前たち個人の戦力は正直言って落第点だな」
「はあ!!」
「どこが悪いのか教えてくれますか」
ジンがケイレブの口を押えてそう言ってきた。
「もちろんだ。じゃあまずジンだな。お前、あえてウルフの陣形に合わせる為にケイレブより一歩遅れて出ただろ?」
「はい。ですがその方が二人同時にやられないですし、俺がケイレブの後ろに隠れることで敵の視界からも隠れられます」
「そうだよ!」
「あんたは黙ってなさい!」
ケイレブはアイナに連れていかれてしまった。
「あはは…確かにジンの言うことも正しいが、それなら別に合わせる必要もない。
お前がケイレブと並走して、ケイレブが狙っていないもう一匹のウルフにその槍を投げつけて注意集めて個々に戦えばいい。お前の実力なら一旦無手になろうとも、ウルフ程度になら対処できるだろう?」
「あ……」
ジンはそのこと気づいて小さく声を漏らす。
多分ジンはケイレブがうまくいかなかったときのことが不安なんだろ。
だから後ろにいれば自分がサポートできると思ったんだろ。
「ジンの改善点は払いだけじゃなく突きと投擲も鍛えるべきだな。そうすればケイレブが足止めしてる隙に突きで目つぶしもできる」
「はい……」
「それともっと仲間を信じることだな」
「仲間を信じること…ですか…」
「そうだな。まあそれはおいおい知っていけばいい」
「わかりました」
ジンへのアドバイスはいったんこれでいいか。
次はアイナだな。
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