第8話 訓練③
ケイレブたちに授業を始めてから2週間、俺は彼らに様々なことを教えた。
魔力の使い方や体の使い方、状況判断の基礎や応用。
後はそれぞれの性格にあった今後に役立つことを幅広く教えた。
そして今日はクレアと共に4人を連れてダンジョンの3階層に来ている。
「今日はここで実践訓練だ。此間のグレートウルフよりは弱いとはいえここにいるウルフは1層のより強い」
ダンジョンの特性としは入り口から離れた階層になるほど空気中に漂う魔力が濃くなる。
ダンジョンに出るモンスターはダンジョンの魔力によって生み出されるから魔力の濃さに比例して強くなる。
「怪我をしても安心しろ。クレアがすぐに治してくれる」
「ノアさんにコツを教えてもらったから安心してちょうだい!」
クレアにはオリビアに教えた魔力循環と治癒魔法のコツを教えてある。
多少の怪我ならすぐに回復できる。
「それじゃあ、獲物を探しに行きますか」
『はい!』
10分近く探索してると丁度4匹のウルフを見つけた。
「それじゃあ、4人とも俺とクレアを囲むように四方に散ってくれ」
4人が四方に散ると、俺は風魔法で4匹のウルフ捕まえてそのまま4人各々の前に動かす。
「いいか、今回のテストは一人でウルフ1匹を討伐すること。失敗してもその時は俺が代わるから他の三人を気にせず戦え」
『はい!』
「それじゃあ、行くぞ」
俺が風魔法を解除すると分かりやすくウルフたちは各々目の前にいるケイレブ達に襲い掛かる。
だがケイレブ達は冷静に立ち回り、この2週間で学んだことを活かして戦っている。
「ケイレブ君たち、見違えましたね」
「彼らもこの2週間相当頑張りましたから」
クレアは彼らの戦いぶりに感慨深い言葉を漏らす。
この2週間という期間、俺は彼らに15階層まで攻略できるぐらい鍛えた。
今までの好き勝手、各々が戦う無駄の多いスタイルではなく相手のことを見極め、頭を使う高ランク冒険者のような戦い方になった。
「よっしゃー!」
「こんな簡単に……」
「楽勝よ!」
「す、すごい…」
各々が自身の成長を肌で感じて喜び驚く。
4人は元気よく魔石を回収して戻って来た。
「見てくれたか師匠!」
「ああ、ちゃんと全員見てたぞ。よく成長したな。どうだった?」
「全然疲れないし、なんか楽しかった!」
「私もまったく攻撃を受けずに倒せたわ!」
「師匠の言っていた通り、思い描いた通り戦えました」
「わ、私も魔力の減りが少なくて、たくさんの魔法を撃てた!」
「そうか。各々が成長を感じられて教師冥利に尽きるぜ。クレアもなんか言ってやってくれ」
クレアは涙目になりながら前に出る。
「みんながこんなに強くなって、私……私…」
クレアは思わず涙を流す。
「ごめんなさい……」
「クレアさん」
「クレア先生」
アイナとオリビアの二人がクレアの手を片方ずつ握る。
クレアもそれに応えるように二人を抱きしめ言葉を続ける。
「みんながこんなに強くなって私もとっても嬉しいわ」
「クレアさん」
「クレアさん」
ケイレブとジンの二人もクレアのもとに行きクレアは二人も抱きしめる。
少しした後クレアは俺にお辞儀した。
「ノアさん、この子たちに生きる力を与えてくださり、本当にありがとうございます」
「頭を上げてください。俺は教師として生徒たちに与えるべきものを与えただけです。それにまだ依頼は満了してません。その言葉は5層のボスを彼らが倒した後に受け取ります」
「…わかりました。その時にもう一度」
少し感慨深くなってしまったが探索を続けよう……とその前にこいつらにちゃんとテスト結果を伝えなくちゃな。
「改めて、ケイレブ、アイナ、ジン、オリビア、中間テスト、文句なしの合格だ!」
「よし!」
「当然よ!」
「師匠のおかげです」
「あ、ありがとうございます!」
仲間と喜びを分かち合う……俺もこんなことを一度はしてみたかったな…。
だが、それとこれとはまた別だ。
「次は5層のボスに挑みに行くが、当分は3層と4層でパーティでの連携の練習だ。各々がレベルアップした分、今まで通りにいかないと思うから、そこは各自で調整してくれ」
『はい!』
それからケイレブ達を4層に連れて行き、また2週間という期間彼らには3層と4層で連携の練習をさせた。
そして彼らと出会ってからおよそ1ヶ月、ルドハート先生からの依頼通り。
第5階層のボス攻略に挑む。
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