第9話 5階層ボス戦
ケイレブ達を請け負ってからおよそ一月が経過した今日、俺たちは中間テストと同様に6人でダンジョンに潜った。
そして今5階層のボス部屋前で最後の作戦会議をしていた。
「さて、いよいよ今日が5階層のボス討伐の日だが、ちゃんと情報は頭に入ってるか?ジン」
「はい。5階層のボスは大ボスのジェネラルウルフに3匹のグレートウルフです」
「よし。アイナ作戦は?」
「ケイレブとジンがジェネラルウルフを抑えて、その間にオリビアが3匹のグレートウルフの注意を引いて、そこに私がサポートに入って討伐。終わり次第二人に合流して4人でジェネラルウルフを討伐する」
「悪くないな」
今考えられる中で最大限に良い作戦だろう。
無作為で戦っていた一月前とは見違えるようだな。
そしてあと必要なのは
「できるか?」
『はい!』
自信だ。
この声を聴けば心配する必要はないかもな。
「全力でやってこい!」
四人は覚悟を決め頷き全員でボス部屋の扉を開ける。
中には何もなく無人の部屋だった。
全員が部屋に入ったその時、扉が閉じ、部屋の中心から4匹のウルフが出現する。
「作戦通り行くぞ!」
「「「おう!」」」
ケイレブの掛け声に全員が応える。
俺とクレアは扉の近くで4人の戦いを見守る。
もちろんもしもの時の為に警戒は怠らない。
まず、作戦通りケイレブとジンが他3匹とは明らかに体格がでかいジェネラルウルフと戦う。
その隙にオリビアが風魔法で3匹のグレートウルフを自身の方に引き寄せジェネラルウルフのほうに行かないように土魔法で壁を作る。
「はああーー!!」
グレートウルフの中にアイナが突っ込み相手する。
そのうち1体にオリビアが火魔法で攻撃し1対1と1対2の構図を作る。
今のアイナならグレートウルフを2体さばくぐらい簡単なはずだ。
その隙にオリビアが火魔法と風魔法でグレートウルフを1匹倒した。
それに気づいたアイナは1匹をオリビアの方に蹴り飛ばし、オリビアは宙に舞ったグレートウルフに魔法を連発して仕留める。
敵が1匹になったアイナも受けから攻めに転じて拳と蹴りで攻めまくる。
最後は脳天に踵落としを当てて仕留めた。
二人は顔を見合わせる。
「二人ともこっちは終わったからそっちの合図と同時に壁を消すわよ!」
「了解!」
アイナの呼びかけに壁の向こうにいるジンが答える。
「今だ!」
ジンの掛け声に応じてオリビアが壁を消す。
「ジン、代わるわ!」
「了解!」
アイナはジェネラルウルフと応戦していたジンと代わりケイレブと情報共有する。
「それで、この子の弱点わかったの?」
「外側の皮膚がとても硬くて今の俺たちじゃちょっと難しい。けど首と尻尾が他に比べて柔らかい」
「それなら、私が魔法で目をくらまします!その隙にジン君が槍で尻尾を抑えてください。その間にケイレブ君の剣で首を!」
「なら、私がこの子を抑えとくわ!」
「いいのか?」
「アンタより私の方が俊敏だからオリビアの魔法に合わせて離脱できるわ!」
「なら頼む!」
ケイレブは時を見計らってジェネラルウルフから離れた。
「アイナちゃんジェネラルウルフの横顔が私に向くように!」
「了解!」
アイナは上手く攻撃をいなしてジェネラルウルフの横顔がオリビアの方に向くように誘導する。
「今です!」
オリビアの合図と共にアイナはジェネラルウルフから離れ、その瞬間、オリビアの火魔法がジェネラルウルフの顔に直撃する。
その時、ジンが尻尾に目掛けて槍を投げて尻尾に刺さる。
一瞬の痛みに自分の尻尾を見るジェネラルウルフはどうにかしようと動くが何もできずその場から動けない。
「はああーーー!!」
その一瞬の間にケイレブがジェネラルウルフの首に自身の全体重をかけて剣を振り下ろす。
そしてジェネラルウルフの首は飛び煙となって消え魔石を落とした。
4人が俺とクレアの方を見る。
俺は4人に向かって大きな声で伝える。
「第5階層ボス攻略、そして突破、おめでとう!!」
4人がそれを聞くと体を全力で使って喜びを表す。
「よっしゃーーーーー!!!」
「やったぁ!本当に5階層を攻略したんだわ!」
「俺たちだけで本当に……」
「みんなよ"がっよーー!!」
各々が喜びを分かち合う。そんな姿を見て俺も嬉しくなる。クレアも涙を流し喜ぶ。
「ノアさん。本当にありがとうございました」
「クレアさんも良く頑張りました」
俺は今までの頑張りを思ってクレアの頭を撫でる。
「え、ノアさん・・・流石に恥ずかしいのですが・・・」
「おっと、すみません。つい癖で」
「あーー!ノアさんとクレアさんがなんか面白いことになってる!」
アイナが指を指してそう言ってきた。
「アイナちゃん!あんまりからかわないでください!」
クレアは顔を真っ赤にしながらそう言った。
こういうのも時には悪くないか・・・。
「よし!地上に戻ったら宴会だ!全部俺の奢りだから腹はち切れるまで食えよ!」
「マジかよ!」
「流石ノアさん太っ腹!」
「なにを食べようか…」
「や、やったー!」
俺たちは6階層にあるチェックポイントに向かい4人の登録を済ませる。
「師匠は登録しないんすか?」
「ん?ああ、俺はまた個人でやるよ。今日はお前たちが攻略したんだからな」
俺はケイレブの頭をわしゃわしゃして言った。
流石に俺がここで登録したらズルになっちまうからな。
「それじゃあ、帰るぞ」
『はい!』
俺たちは6階層のチェックポイントを使ってダンジョンの入り口に戻る。
そして一度教会へと戻る。
この1ヶ月、中々面白い日々だったな。
生徒という形で受け持つのは久しぶりだったが偶にはいいもんだn……!
俺は教会に戻る道中の人が行きかう道の真ん中で立ち止まり剣の柄を掴む。
「帰ったらなに食おうかなーー、やっぱ肉がいいな。なあ師匠!……師匠?どうしたんすか?それになんで剣に手を……」
ケイレブの言葉を聞いてみんなが振り向き俺を見る。
思ったより早かったな。
「悪いな、今日の宴会は俺抜きかもしれねえ」
「それってどういう……」
俺はケイレブの質問に答えるよりもさきに振り返りながら剣を抜く。
俺が後ろに振り返ると一人の男の剣と俺の剣がぶつかり合っていた。
「んん!!」
俺はその勢いのまま剣を横に振り、男を弾き飛ばすが男は綺麗に着地する。
王家の紋章が付いた白い鎧に特徴的なプラチナブロンドの髪を持つ美男子。
俺はこいつを知っている。
「思ったより早かったなアラン」
「やっと見つけたよノア」
「そういう割には随分と物騒なご挨拶で。それで一応聞くが何のようだ?」
「決まってるだろ?お前を連れ戻しに来たんだ」
やっぱりそうなるか。
こいつは面倒だな。
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