森の調査に行こう

朝起きると、康二はカレンとリルに左右を挟まれ、昨日よりもギュッと抱きしめられていた。


康二の胸の上にはセラが可愛い寝顔で寝ていたので起きようにも起きられない状況だった。ちなみにアンナはカレンの家のソファーで寝ていた。


ベッドのポジション争いに負けたらしい。昨日の夜は4人であんな事やこんな事をしていたので恥ずかしくなって穴があれば隠れたい気分だったが、妙にすっきりとした気分に至っている事に康二は気づいた。



この世界に来ても続いていた悪夢や魔力の暴走による頭痛も全く感じない。もしかして、あんな事をしたせいではないかと思う康二。



実際それは当たっていたし、外れていてもいた。精の発散と共に魔力が行為中に発散されていたのもあるし、昨日思いっきり魔力を使っていたので暴走する程、魔力がなかった性でもある。



康二は、寝る前に魔力を限界まで使い切った方がいいのではないかと思い、これから寝る前に魔法の訓練をしようと思ったのであった。



そして目が覚めたセラ達は自分たちのあられもない姿に顔を赤くしていたものの、康二に昨日の初体験はどうだったか、気分は良かったかなどと色々質問していて、康二が良くないわけないだろ!!とツンデレ気味に言うとハイタッチしていた。


またしましょうね、ご主人様とセラが迫り、無言で3人がジト目を向けてくるので康二はそっぽを向きながら一つ頷くと4人は二ヘラっとだらしない笑顔になっていた。康二はそのえげつない魔力量が災いしてか底なしの性豪だったのであった。ちなみに次に性豪だったのはセラ、リルでカレンとアンナは同率であった。



朝ご飯を食べて、村の外に出る支度を済ませた3人。ちなみにアンナは一度自分の家に戻って武器を取りにいっていた。



全員の装備はこんな感じである。



康二 魔隠者の太刀



魔隠者の脇差が使い手である康二が魔族達に認められて、成長したもの。康二達が寝ている時に成長したらしい。


その一撃はワイバーンをも一太刀で一刀両断する。康二が望めば、脇差の時のサイズに戻すことも可能。康二の魔力に馴染んでおり、まだまだ成長する余地がありそうだ。



カレン 魔族の村に伝わる杖 魔杖 カラストリク



アグニス・オルゴーン魔王国で魔王が使っていたとされる国宝の杖。その杖の特徴は魔法の詠唱が必要不可欠と言われるイルミナにおいて無詠唱で魔法を唱えられるようになること。


その次に、魔力の増幅率が異常なほど高く、ただの序魔法 火球が隕石くらいの大きさになってしまうこともある。


なので使い手はより少ない魔力で収束率を意識しながら、魔法を行使しないとダメだと言われている。その点、カレンは魔法の習熟率が高いので、この杖に使うのに打って付けだと言われて託された。


まだ杖はカレンのことを認めていないのでかレンは認められるように日々努力している。ちなみにカレンが初めて康二と出会った時、武器を脇差しか持っていなかったのは、村の近くに康二の魔力を感知し、独断で急いで出てきたためである。意外とポンコツなカレンであった。



リル 魔狼の双爪剣 



リルはグレートウルフの希少種のため、武器を使わないだろうと思われがちだが、元々口に咥えて、剣を使うのが得意だったそうだ。


それを初めてアグニス村に着いた時に村人に自慢した所、アグニス村の鍛治職人がそう言うことなら武器を作ってやらあ!といいリルの爪から双剣を作ってくれた。


硬化させたスライムの膜を張ることによってミスリルの剣のような切れ味を再現することができる。まだ成長の余地は残っており、リルがもし本当にフェンリルになることがあれば、この双剣も進化するだろう。



セラ 神聖大剣ラグナロク



セラが康二の魔力を元に吸い取った黒いラグナロクがラヴの一撃によって浄化され、聖霊が持つに相応しい大剣になったもの。


苦悩や絶望が形になった大剣が希望やこの世の幸せを謳う大剣となった。しかしその力は増しており、神滅属性は無くなったものの、魔物に対する特攻属性がついた。これ以上は望めないほど強い大剣だが、セラが聖霊から神霊に進化するとしたら、一緒に進化するかもしれない。



アンナ 魔鞭 ダークネスウィップ



アグニス・オルゴーン魔王国に伝わる国宝。魔王の側近で美魔女と云われたアンネリーゼ・ダークネスが使っていた闇属性の鞭。


アンネリーゼはアンナの曽祖母にあたる人で血縁の物しかこの鞭は使えない。初めから闇属性が付与されているので、序魔法、中魔法、下魔法問わず、闇属性の魔法に補助がつき、威力や効果がのりやすくなる。


まだアンナはこの鞭を使いこなしているとは言えないが、その習熟率がアンネリーゼを超えた時、進化するかもしれない。



森の調査に行くにあたり、選ばれたのは、康二、セラ、カレン、リル、アンナの4人に加え、村一番の戦闘力だと云われるゴルドー、索敵や罠の探知が得意なカルマ、全院の荷物や武器を持っても尚、底が見えない収納魔法を持つ、ガトーの3人である。



ちなみに収納魔法は序魔法の基礎ではあるが、収納できる量やストレージの数が多かったり少なかったりと個人差は結構ある。そして収納魔法に入れていても重量などは感じるため、冒険者パーティーでもポーター役は必須だと言われていた。ガトーの収納魔法は特別で重量をほぼ感じないため今回の森の探索に呼ばれたのである。



「よおよお、俺っちがこの村最強のゴルドーってもんだよ。あんたがつくってくれた、らあめんは最高に美味かったぜ、でもよお、あんたの戦闘力に関しては認めたわけじゃねえからな。あんたのレンキン術ってやつはよお、いってみれば補助魔法みてえなもんだとおれはおもってるからよお。」



「それは間違ってないな。ゴルドーの戦闘力、まだどれだけのものかは知らないけど今回の探索では頼らせてもらうよ。」



「ずいぶん、殊勝な心がけじゃねえか、俺っちに戦闘は任せてくれよお。」



「それであっしはカルマという者でございまする。索敵や罠解除が得意でございまする。森の中にも異民族は住んでいるものでございまするから、罠発見は任せてほしいでございまする。」



「カルマ、よろしく。でもいきなりできた森に異民族は住んでいないと思うが?」



「それがこの森は特殊なようで、どうやら太古の森の環境に逆戻りした可能性があるでございまする。村の結界近くにも魔物の足跡が大量に残されていてございますってな。魔素も昨日までの大荒野の量の比ではないくらいでございまする。」



「そうなのか!?セラはそんなこと言ってなかった気がするけど…」



セラの方をみると、ヤバいという顔を一瞬したあと、下手くそな口笛を吹いている。調子に乗って時空聖霊魔法を使っていたようだ。



「ご主人様、わたしは悪くないです。ここの環境を大荒野から大森林に戻すためにはこれしかなかったのです。」



「セラ。世の中には報連相という言葉があってだなあ…」


報告がまずなかったことを責めると流石のセラもごめんなさいです、と謝るしかなかったが、本当に自然を復活させるために時空聖霊魔法しかなかったのかというと疑問は残るところだ、と康二は考える。


しかし何か有益な古の魔物との出会いがあるかもしれないと考えた康二はつぎからは報告する事、でもやったことはいいことだからな、と前向きになるように励ました。それを聞いて、笑顔になるセラ、どうやらチョロインの香りがするなあ。



ガトーは無口だが信用できるようで、全員の荷物を預け、とりあえず村の結界の外に出て様子を伺うことにした。心配そうな村人達に見送られながら、7人はカレンの結界解除呪文で結界の外に出る。



結界の外は例えるなら富士の樹海をもっと明るく壮大にしたような様子になっていた。カルマは緊迫した様子で、近くの巨木につけられた巨大で鋭い爪の跡を指差す。



「これは相当な大きさの魔物がつけたマーキングのようだな。古代にいた恐竜とよばれる種族に近いものの様に思えるのう。」



リルが呟く。カレンも頷きながら、この森が古代の時に戻っているのは間違いないようだ。それに村の近くではないが、康二の強大な魔力反応に負けずとも劣らないモノが幾つかいるようだ。この広大なオルゴーン大荒野、いや大森林にその地域の主として、居るようである。


とにかく気配を潜ませながら、進もうと獣道は避け、リルが近くに水がありそうな気配がするということだったのでそちらに行ってみることにした。藪道のようになっているかとおもいきや邪魔な巨木は切られているようで不自然なほど綺麗な森であった。古代の時に戻った森がなぜここまで整備されているのか、そして整備しているのは誰なのか気になると康二がいうと、ゴルドーが



「古の時代にはな、もう滅びたとされるエンシェント・エルフがいたらしいよお。まあエルフ族はいまだに生きているらしいが、エンシェント・エルフはもっと特別でな、寿命が尽きることはなく、古の森に引っ込んで暮らしていたらしいが、ど偉い人間様がエルフ狩りっていうのを始めてよ。そのせいでエンシェント・エルフは迫害の対象になったんだ。だがよおエンシェント・エルフも寿命がない分、強さは半端なくてな、迫害の対象になってもほとんど被害を出すことなく、逃げ延びやがった。だがな、愚かな人間達は森を焼き払っちまってな、綺麗な空気と古の森にある特別な魔力がないと生きられないらしくて、その存在を消しちまったらしい。死んだわけではないが、今の世界に具現化できないって話らしいぜ。」



「ゴルドー… 意外とっていうか、かなり物知りだな。正直もっとパワーでゴリ押すタイプかとおもってたんだが。」



「馬鹿野郎めい!戦闘に必要なのは優れた知性だぜい?これでも物覚えはいい方なんだよなあ。」



「そうか、頼りにさせてもらうよ。っと何かきたんじゃないのか?」



先頭を進むカルマからハンドサインが送られて来たので、ガトーから全員が武器を受け取り、構える。



やがて森の奥から見えてきたのは、ティラノサウルスに似た巨大な魔物が一頭ととアロサウルスに似た小型の肉食恐竜の魔物が10頭ほどであった。どうやら、ティラノサウルスがリーダーのようで康二たちの方をみて口を開く。



「愚かな人間たちよ、またこの森を燃やそうというのか。ならば我らは争うのみ、偉大なるあのお方たちのために。」



「違うです!ご主人様と私でこの森を蘇らせたのになんたるいい草ですか?撤回しなさい。!」



「問答無用!!人間許さない、絶対に!!」



どうやら戦闘は避けられないようだ。どうなる康二たち!



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