初めての共同作業

「君はどこかであったことが…あるような。」



「いつも一緒でしたです。ご主人様。」




その語尾は『クロレン』のヒロインを思わせるものだった。地球にいた頃からの知り合いということになるか…と唸りながら、今朝の突然出てきた顔の女の子にそっくりだと思い、康二は結論を導く。



「俺の妄想がとうとう身を結んだのか… うぅ……」



と泣き始める康二。その様子を見て、カレン達3人や村人達はドン引きしていた。こいつ童貞を拗らせてやがると。だがその天使のような少女は違うです、と言って康二の前に立つと無言で顔を近づけて、耳の横で囁いた。



「あの時みたいに、いや、あの時は私からしましたが、今回は康二からしてくれませんか?思い出して。あの時の事を。」



そう言われると、あの公園で初めてあった時の事や少女の両親との誤解を解いたこと、最後にキスをしたことを思い出す。そして今まで、夜苦しんでいた時に彼女に助けられていたことも。だがそれ以上に不健全なシーンがあったため、顔を真っ赤にする康二。



「あら、いけない、私の愛の籠ったシーンまで記憶を渡しちゃったです。てへっ⭐︎」



そんなあざとい仕草にもクラッと来てしまった康二は気づいた。自分もこの少女に惚れているのだと。



「さあさあ、私は22年この時が来るのを待ちましたよ。次は康二の番です。ほらっ\\」



と照れながら言う少女。セラ、今まで守ってくれてありがとう。これからは俺が守るよ、と言うと周りにいた村人達はぉおおおおおと盛り上がり、カレンとリルは妄想が妄想ではなかったことを知って、唖然とする。アンナは康二のセリフにときめいていて自分もあんなふうに言われたいと羨んでいた。



そして康二から頬にキスをして、それを受けたセラが康二の唇にキスをしようとした瞬間



「康二!!いきなり出てきた女とそんな羨ま、ゲフン、いやけしからん事をするなど我は許さんぞ!」



「そうじゃそうじゃ、わしらにも、いやわしだけにせい。康二とわしは主従の仲じゃぞ!」



と2人から横槍が入る。セラは唇にキスをしようとしていたが、その動きが止まり、ギロリと2人を睨むと誰なんですか、この泥棒猫達は、と視線を鋭くする。私もいるぞー!!とアンナも参戦し、一気に修羅場と化すのであった。



その後は康二はセラの事を3人や周りの村人達に説明する。特にセラの両親との話や康二の生い立ちに泣き出すものも多数いた。


セラが精霊であることを説明すると、セラから超聖霊になったと被され、康二も驚きを見せる場面もあった。康二から聖霊とは何かと聞かれて、うーん自分でもまだよくわかっていないんですとセラは返す。ただ精霊よりも位階が上がった、言うなれば神に一歩に近づいた存在であるらしいです、と締め括った。



他にも呪いをかけた地球で出会った神らしき人物とは何か?とカレンから質問があがったが、ラヴァンにも聞いたが、そのような地球の神がいた覚えはないという。ただ、神界でも昔色々あったから、その時にイルミナにいて、罪を犯して追い出された神に似ているのがいたかも、とだけ話されたという。



そして前章の最後の話に戻る。



「ではご主人様との仮契約は済んだので、今から荒野の緑地化をしたいと思うのです。うふふ、初めての共同作業…です。」



とにっこりと康二に告げるセラ。康二はドギマギとしながら何をすればいいんだ?と話すと魔力菌を大荒野の土壌一体に広げるイメージをして、その後、セラが精霊達に語りかけ、一気に森林を作るとのことだった。魔力は足りるのかと聞くと加護を取り戻した今なら、そう魔力の3分の1を使えば余裕です、だそうだ。



「レンキン、対象は大荒野の土壌全て、魔力菌よ、広がれ!!」



そして見渡す限りの大荒野の土壌に魔力菌が染み渡り、康二の魔力供給を受けて土壌に染み込んだ魔力汚染を食い散らしていく。そして分解が終わり、土壌が浄化された事を受けて光り出すと、次いでセラが聖霊魔法を唱える。



「我は乞う、古の英霊達よ、この地にかつてのような大平原、いや大森林をもたらしたまえ、再生の大自然、グランド・マザー・ネイチャー!!」



聖霊魔法が唱え終わると大荒野の地面が揺れ始める。そして結界外の土に若葉が芽吹き、時間が早送りされているかの如く、木々が育ち、森林ができ、そして300年は育ったであろう、古木達に囲まれていた。



いつの間にか異変に気づき、ここにやってきていた長老は涙を流して、古の時代に舞い戻った。これは神の奇跡じゃ!!と嬉し涙を流しながら、叫んでいた。村人達も一緒になってこれで村が滅ぶことはないと一緒になって喜んでいた。



康二は自分やセラと一緒になって、やったことに信じられないと現実を疑っていたが、魔力の使いすぎでふらっとして倒れそうになったため、セラに抱き抱えられる康二。カッコ悪いですね、ご主人様。と笑われながら、言われ、康二はこいつイケメンだなと思いながら、じっと見つめていた。2人は喜びの輪の中で、静かに見つめあっていた。



喜びが一段落したところで森の中はどうなっているか、という調査隊が組まれることになった。だが、日は暮れかかっていたので、小麦畑を見回って、明日から森の調査に出ることにしたのである。



結論から言うと小麦畑は異常無し、というか別の意味で異常であった。まだ花が咲き始めたばかりだったと言うのに、いつの間にかもう実が穂を垂れさせ、収穫時期を迎えていた。これはいかんと村人たちが老若男女問わず、総出で収穫に入る。



まずは根本を踏みながら、根が抜けないように、鎌でひくように刈り取る。麦束を乾きやすいように小さい束にまとめていく。



ここから2週間、麦を干して乾燥させるのだが、後1週間ほどで雨季に入るとのことだったので、徐魔法の「ドライ」で乾燥させることにした。ここで魔力を込めすぎて、乾燥させすぎるのはまずいので、カレンとアンナ、そして数人の魔法の制御が得意な者に任せる。



そうして小麦を乾燥させた後、魔導脱穀機を使って脱穀をする村人達。魔王国の時から伝わる魔石をはめて使う魔力で回る脱穀機らしい。



その脱穀機で脱穀をした後、実をふるいにかける。ふるいをかけることで実以外のものを落とせるようだ。ただそこでふるいが足りないということになり、困ったことになる。収穫量が多すぎるのだ。いつもだったらダメになる実も今回は収穫できたためである。



「ふるい、作ってみましょうか、全部木の素材でいいならですけど。」



康二がそういうと、逆にどのような方法で作るのか、と注目が集まる。そこでふるいを一つ借りて見せてもらい、イメージを作り上げると



「レンキンっ!」


と唱えると全てが木製、なんなら網目も木製のふるいができてしまった。錬菌術で作り上げた木の細胞膜を錬金術で成形して仕上げた結果である。


ちなみにこの後錬金術のレベルを確認するとLv3まで上がっていた。皆、無から一品物のふるいを作り出してしまったことに唖然としていた。


セラは錬菌術ってこんな使い方なのですか?とびっくりしていた。その後は長老がなぜかそのふるいは村に救世主様が作った物だとして飾っておくといいだし、物議を醸すことに。


村人皆が欲しがったため、1世帯に1個作る羽目になった康二であった。



最後にまた網目の細かいふるいで実と殻を分け、軽い実と良い実を分けるのだが、これは村人達は知らなかったので康二が女神の知識から教えた。


そのための網目の細かいふるいもなかったため、康二が全木製の3段階のふるいを作り、良い実だけを分けていく。


その際、軽い実も質の悪いが、食べ物としては使えるとのことなどでとっておくことにした。この後は1日2日天日干しして水分量が10%以下になったら石臼で挽いて小麦粉の完成である。



この後、村人達全員で集まって宴をするとのことなので、康二も一品作りたい料理があると言い、宴の準備に参加することになった。



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