アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?

康二はご機嫌に荒野を疾走していた。


「いやー3時間走ってもまだ筋肉痛にならないなんて肉体強化様様だぜ〜!」


ハイテンションのまま、時速50キロは出ているかという速度で走っていたが、急に体にまとっていた白いオーラが消えていくのを感じる。そして足がもつれ


「ヘブシっ!!」


顔面からずっこけた。かろうじて纏っていたオーラのおかげで血まみれになるこ

とは無かったが自分の体の中に違和感を感じる。


「なんなんだ… この感情は」


気づくと頬から涙が伝っていた。「なんで…?俺はなぜ泣いているんだ?」


急いでステータスを確認すると加護の欄にあった


超精霊 ??の加護が消えていた。


空はいつの間にか薄暗くなっており、どんよりとした天気になっていた。

大岩のようなものが一つ転がっていたのでそのそばで野宿をすることにした。



とりあえず薪になりそうなものがないかと探してみるがとてもじゃないが、不毛の荒野にそんなものは無い。


それに全力疾走してきて疲れた影響か、加護を失ったせいか、とてもじゃないが薪になりそうなものを探す気持ちの良い余裕は無かった。


「はーめちゃくちゃ曇ってるな。冷え込みはそこまでではないけど雨が降りそうだ。なんとか小屋でも建てれればいいんだが。」


康二はふと思考に沈む。錬菌術とは何か。まだ試していないがおそらく細菌を生み出し操る能力だ。おそらく即効性の高い病原菌をもばら撒けるだろう。


だがもっとこの能力を平和利用できないかと考える。先ほどは原核生物まで思考したが他に細菌の種類は無いだろうかとはっと思いだす。慌てて女神の知識から探してみるとあった。


真核生物(しんかくせいぶつ)は、動物、植物、菌類、原生生物など、身体を構成する細胞の中に細胞核と呼ばれる細胞小器官を有する生物である。


おいおいウィルペディアからそのまま、持ってきたやつじゃないかと疑うと、頭の中にポンコツ女神のテヘペロ⭐︎と舌を出して誤魔化す姿が浮かんだ。


「でもこれのおかげで重要なことがわかったぞ。真核生物からは人間に至るまで、生物を生み出すことができると。というかこれは菌を生み出す能力じゃ無い。細胞を生み出す能力なんだ。」


これなんて異世界チート?というか神にも等しい能力だと思い直す。


早速試してみようとまずは今足りない薪を作りたいとパチンと手を合わせ、荒野の中にファンタジーに出てくるような世界樹が一本聳り立つイメージをする。しかし頭の中に


「魔力不足です。そのイメージはレンキンできません。」


と機械音声が流れ出す。あのポンコツ女神と違ってお前はできる子だな、と思いながらありがとうなと口にだすと何と


「お礼を言われるほどではありません。」


と答えが帰ってくるではないか。康二は驚きながらどこまでのイメージならできるんだと問いかけると


「マスターの残りの魔力を考えるとおよそ50年ほどの年輪の木を作ることができますが薪にするだけなら細長い木材の用なものと火をつけるための藁があればいいでしょう。後一つ忠告しますが、錬菌術は細胞を作り出すことができますが、生きた細胞を作り出すためには相応の魔力を要求されます。超精霊 ??の加護を失っている今ではマスターの魔力量でも心許ないかと。」


と長文で帰ってくる。ていうかマスターってなんだし\\照れるし\\とちょっとにやけていると機械音声は


「キモいし」


と返してくる。そのストレートに心を抉ってくる言葉の中に意外とノリがいい事を発見してちょっと嬉しくなる。しかしいい加減日も落ちそうなのでとっととやる事をやってしまおうと手を合わせ


「レンキン!」


と叫びながら古木が朽ちて、倒れている所を想像しながら、錬菌術を発動させた。すると手から火花が走り、足元に複雑な紋様が生まれた後、眩い光を放つ。そしてその後にはイメージした通りの古木が生まれているのであった。


一方荒野の中にある何も無いはずの場所からその光景を目に焼き付けている何者かの姿があった。その者は驚愕のあまり、声を発して叫びそうになる所だったが、その姿は光学迷彩のように透明で康二は全く気付かずに焚き火の用意をしていた。


日もくれた後、白い月と紅い月が距離を保ちながら西側と東側に浮かんでいた。女神の知識によると白い月と紅い月は東と西から天高く舞い上り、お互いに交差してまた東と西に沈んでいくそうだ。月に一回はお互いの月が完璧に重なり、緋と白の満ちる月と呼ばれるらしい。


康二は焚き火に当たりながら、ぼんやりとしていたが、地球にいる頃と何かが違うことに気づいた。ちなみに火はどう起こしたかというと序魔法の初歩の種火を作る魔法である。藁は必要なかった。


「何か違うと思ったら、ラヴのいう統合失調症の幻覚が無いんだ。あの無限の星空が蠢く様は寝る時は鬱陶しかったが、なくなってしまうと寂しいもんだな。」


ちなみに機械音声は質問やその後の雑談には応じてくれるが、一定のところで喋るのをやめてしまう。意外とシャイなんだなと康二は感じた。喋り相手が欲しいなと思いながら独り言を続ける。


「もう一回だけでいいから無限の星空が見えないかなー。こういう時はなんか言えばいいか。『視点切替』」


そうすると康二の視界は無限の星空と様々な色に満ちた世界が広がった。

「なんじゃこりゃああああ!」


その叫び声に一瞬ビクッとなる謎の人影。それは康二の視界には青色の影がビクッと動いたように見えた。しかもなんなら、康二が当たっている焚き火の向かい側にいた。


「はあっ!?なんでこんな近くに人が?ていうか人なんだよな?離れようとしてるお前だよ!」


ビシッと指を刺して言い切ると何も無い空間から褐色の肌で鎖帷子を着込んだ女忍者のような服装のような人が出てきた。


「アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

どうやら康二の住んでいた日本にもニンジャマスターは存在したようだ。


「あいええええ?とはなんだその言葉は?というかニンジャとはなんじゃ、これは魔、いやスパイの正装じゃぞ。」


こんな近くで知らないやつとこっそり一緒に火に当たるスパイがいるかと言ってやるとむーと頬を膨らましながら女忍者はいう。


「まさか。魔眼持ちだとは。しかも無から大木さえも作り出すとはの?貴様、大昔にいた金を生み出す本物の錬金術師の末裔か?」


「そんな大した者じゃないぞ。俺は… そうだな。アルライト王国からきた根なし草の旅人ってところだ。ていうかおれのこと前から見てたのか」


アルライト王国とはこのオルゴーン大荒野を北にずっと行った所にある国である。


「それはそうだ。この荒野は我ら一族の昔からの縄張り。そんな大層な能力を持っていてただの旅人とはなんの冗談かの?貴様、アルライト王国から我ら一族を殺しに来たのではあるまいな?」


「待て待て、なんの話だ。」「問答無用!こうしてはおれぬ。叩き斬る!」


康二と女忍者が一触即発の状況になった所で、すぐ近くに何者かの強大な気配が生まれ、ビリビリとした空気が流れる。


「こんなタイミングで魔物が生まれるとはの!?しかもこの気配は… 離れてはいるが、魔除けの結界の側で魔物が来るなんて普通はありえんのじゃが!?」


後半の言葉はゴニョゴニョと小声で呟かれ、康二の耳には届かなかったが、どうやら女忍者には秘密があるらしい。


そうこうして居るうちに魔物が姿を現す。それは白い月と赤い月に照らし出されて、テラテラとスライムのような膜を纏った強大な狼であった。白と紅の怪しい光を放っている。


これはなんだと。考えていると女神の知識にそれらしい魔物がヒットする。それはグレートウルフの変異種。スライムを好んで捕食しているうちに自らの体の表面にスライムのような軟体の膜を纏うようになったと言われる。


通常の生息域は沼地のスライムが多く生息している場所である。そしてグレートウルフの希少種の特徴は…


女忍者が自らに魔力を纏いながら、グレートウルフにひた走り、どこからか出した体ほどの大きさの手裏剣に風属性の魔力を纏わせ、両目に狙いを合わせ投げつける!


「両目を切り裂け、ウィンド・スローイング・スター!!」


グレートウルフの顔目掛けて飛んで行った風魔手裏剣だが、グレートウルフはニヤリと笑って見せるとその体の膜をおよそ3倍に倍化させ、手裏剣をそのスライムのような膜で受け流してしまう。風属性の魔力も散らして。


「これがグレートウルフの変異種の特殊能力、一定以下の物理攻撃と魔法攻撃を無効化する力か…」


康二は女神の知識にあった厄介な特殊能力を目の当たりにしていた。



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