エンシェントエルフ

今日は短いです。



ティラノサウルスは黒い大砲を喰らって吹き飛ばされながら、朦朧とする頭でぼんやりと考えていた。この攻撃をした人間は何者だと。


この攻撃を喰らってから、俺は敵じゃない、お前を助けたい、魔族と同じ境遇のお前らを心配している、などの感情が流れ込んでくる。


簡単なことを言うな、貴様らに何がわかる、と言う気持ちは残っているが、貴様らをいや、貴殿らを信用しても良いかと言う気持ちに変わっていった。恐竜族の怨念は浄化されていったのだ。



ティラノサウルスは吹き飛ばされてから前足や後ろ足が折れ、前歯や顔にも大きな傷が残っていた。10メートルくらいは吹き飛ばされていたので当然であろう。


ただそれを行った康二にもひどい頭痛やフラフラするなどの症状が残されていた。しばらくは魔法は使えないだろう。



本来は下魔法をそれほど高いLvで使えない康二だが、女神の知識を参照して、無理やり下魔法Lv30台の魔法を掛け合わせて使った。その結果である。



残っていたアロサウルス5頭は、自分たちの大将であるティラノサウルスが深い傷を負って倒れている事に動揺しているようだが、次の攻撃に備えて、大将の身を守っているようだ。だが、立ち上がれはしないものの、言葉を喋り始めた。



「フハハハ、得体の知れぬ魔法使いよ、貴殿の攻撃はとても効いたぞ。」



「俺の名前は康二だ。それに俺は錬菌術師が本分でな。魔法が使えるのはまあおまけみたいなもんだな。」



「そうか、康二殿か、それに錬菌術師とな?我の生きておった時代にそのようなものを名乗る輩がいたと聞くな。」



「錬菌術師を知ってるのか?その話を聞かせてくれ! っと悪い。その怪我だと辛いよな。後ろのアロサウルスも含めて治してやる。」



そう言うと康二は何も効果のない細菌に祈りの感情をのせて、ティラノサウルスや串刺しにされている4頭と吹き飛ばされて崩れ落ちている1頭にまとわりつかせる。


しばらくして体に細菌が細胞内に入るのを確認して、元の体の形はどうであったかという情報を取得していく。



「治せ!」



康二の一声で体が元あった形に治されていく。そして体についていた傷や穴が塞がれてくのを信じられないように見守る恐竜たちとセラたち。声をあげる頃にはほば傷は塞がれ、古傷まで治っていた。これは私の時空精霊魔法に近いものです、と呟くセラ。



『だけど、時空精霊魔法は私以外には… いやご主人様のステータスにはスキルに精霊魔法もあったはず。無意識に精霊魔法も組み合わせている可能性はあるのかも。」



セラが考え込んでいるうちに、ゴルドーが声をあげる。



「おいおい!おめえは神様の使いかよ?魔法じゃないスキルで体の欠損までなおすなんてよぉ、聞いた事ねえぜ。」



「そもそも魔法でも欠損を治すような高レベルのものは普通の人間では使えないぞ。それこそ聖女のような回復に特化した者が下魔法レベル100以上の魔法を使って叶えるようなものだ。何にせよ、康二の錬菌術とは恐ろしい力を秘めているな。」



カレンが同調するようにいった。それほどまでに康二の行なったことは常識はずれなことだったのだ。



「康二殿よ、礼を言う。妾たちの恨んでも恨んでも消し切れぬ思いを浄化してくれたばかりか、命まで救ってくれた。我が主達の元へ案内しよう。」



「その主って、もしかしてエンシェントエルフか?」



「なんだ、主達を知っているのか。それは話が早いな。」



「物知りな魔族がいてな。それにしたって最初から対話に応じてくれれば、こんなことにはならなかったのに。最初はなんであんなに怒っていたんだ?」



「すまぬ。妾達は怒りで我を見失っていたのだ。それほどまでに人族に蹂躙されてきたのでな。まあ機会があれば後で話そう。」



「それには及びません。私たちから話しましょう。」



だれだ!!と康二達は声をあげる。それほどまでに気配がなかったのだ。しかしその声の主が姿を現すと康二とセラ達は目を剥く。


何もなかったところから銀髪に白い肌の耳の尖った身長170センチはあろうかというスラリとしたスタイルの女性が現れたのだ。儚げな雰囲気だが強者の香りがする女だ。



「おお、我が主よ。康二殿、このお方がエンシェントエルフの長老であるフラン殿だ。」



「ご紹介に預かりました、フランです。突然現れて申し訳ありません。あなた方はティラノサウルスのレイを正気に戻してくれました。感謝します。」



「それはどうも。ただあんたはかなり強そうな感じがするぞ。止めようと思えば止められたのではないか?」康二が問う。



「それは確かにできました。だけどあなたならば、無傷でとは言わないでもレイを止めることができたでしょうから、手を出さずに見守っていたのです。あなたはお人よしなところがあるようですから。」



戦闘途中から見守っていたと付け加える、フラン。俺が殺す気で戦っていたらどうするんだと康二が聞くとその時はその時です、真剣勝負で負けてトドメを刺されるのは弱肉強食の世界ではよくあることだと顔色を変えずに言うではないか。



「なんか、胡散臭いな。なんであんたは自分に付き従っている恐竜族に対してそんなにドライなんだ?」



「強いて言うなれば、この森を再生させた神徒の判断に任せたと言うべきでしょうか。私たちは歴史の中ではもうとっくに滅んだ存在です。また滅ばされるとしてもあなたなら、滅ばされても良いと思ったのですよ、康二殿。」



フランの考え方はよくわからんといって、そっぽを向く康二。それを見て案外子供っぽいところもあるのですね。まあ可愛い、と後半は小声で呟く、エンシェントエルフ。それを見て、首を傾げるセラ達。空気がすこしゆるんでしまったが場を取りなすように、ティラノサウルスのレイが喋り出す。



「まあまあ、良いではないか。康二殿に主殿。妾は何だか体がむずむずしてきたぞ。」



いきなり何を言い出すかと思えば、レイと後ろのアロサウルス達の体がいきなり光り輝くではないか。



このパターンは、康二とカレンが頭を抱える。レイは赤髪のポニーテールにGカップはあろうかというグラマラスで165センチくらいの大人の女性に、アロサウルス達は身長150センチの黒髪のツインテールでAカップの少女たちになっていた。



やはり康二と魔物が戦った後は人化が起きるようだ。


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