感情のぶつけ合い

作者のネーミングセンスについては触れないでください。全部康二が考えたんです。



優しい方、こんな名前の方が良いとかありましたら教えてください。お願いします。



「貴様の忌々しい鎧は我のブレスには無力。貴様の肉を食いちぎってこの森の栄養にしてやる。ガアアアアアアハッハッハッハッハッハッハ。」



「クソッタレのせいで俺っちの黄金鎧はボロボロだぜ、だがまだ戦える、俺っちの黄金はまだ尽きてねぇ!!!」



「ゴルドー、ここは俺に変われ、あいつとお前の相性は良くない。カレンたちと共にアロサウルスを頼む。ティラノサウルスは俺に任せろ。」康二がいう。



「何言いやがる!お前さんは確かに大した魔力は持ってやがるが、そんなものはあいつにはあ通用しねえぜえ、大体お前さんに何ができる!迷い人のお前さんの経歴は聞いた。元の世界では戦ったことはねえんだってなぁ、そんな温室育ちの野郎に何ができる!それに!あいつは人間族に酷い仕打ちをされたに違いない!そんな思いをわかってあげられるのは俺たち魔族しかいねえんだ。なあお前さんはすっこんでろ。迷い人の出る幕じゃねえんだ。」



「確かに!俺は温室育ちだし、迷い人だ!!だがなあ!俺には分かる、あのティラノサウルスはまだ絶望と恐怖の中にいるんだ!森を焼かれ、棲家を失い、尊敬する人たちを守れなかったんだ。俺にだって分かる!あいつの悲しみと怒りを!あいつはまだ森が蘇る前の何もない荒野にいる。その荒野からこの森に連れ出したのは誰だ!それは俺とセラだ。セラの主人は俺だ。全ては俺に責任がある。知らなくて森を再生したのは事実だがやったことに責任ってのはついてくるもんだ。だから俺が背負う。俺があいつを救うんだ!」



「さっきから貴様らは勝手なことを抜かしおって!誰が我らを救うだと!?貴様らは知らぬだろう。人族の勝手な都合でいとも簡単に滅ばされ、その存在を消される恐怖を!分かる筈がない!我らの怒りを!主たちを守れぬこの無念を… だから次は我らが人族に思い知らせる。滅ぼし尽くす。これは我ら恐竜族の決意だ。」ティラノサウルスが言う。



その時、康二たちは森の中から無数の視線を感じた。強い怨念のこもった視線だった。我らの主を消し去った人族を決して許さぬと。そしてその視線とは別に深い悲しみに満ちた憂いを帯びた視線も康二たちに触れていた。



「ご主人様は屁理屈好きで背負わなくていいものまで背負おうとするんですね。水臭いです、ご主人様。元はと言えば私がこの森を再生しようと言ったのです。私の責任もあるのです。勝手に私の分まで背負わないで欲しいです!」セラが言う。



「おいおい我のことを忘れてもらっては困る。そこの3人だけで責任を背負うな。」カレンが言う。



「わしはそんな面倒なもの背負わんぞ。だがな、康二が何かを成そうと言うのならその手伝いはせねばな。」リルが言う。



「私は魔族の村の次期村長候補としてゴルドーの意見に賛成する。だが康二の熱い思いには胸を打たれた。だから康二にも味方しようではないか。」アンナが言う。



「拙者はまだ康二殿とは少しだけ言葉を交わした程度ではあるが、康二殿はひどく青い考えをお持ちだ。だがそれを実現させる為の力は持ち合わせているのであろうな?」カルマが言う。隣で無言で頷くガトー。



「当たり前だ、俺は錬菌術師で錬金術師だ。この力の中にティラノサウルスや恐竜族たちの怨念を晴らすものがある。俺はどうしようもない妄想を拗らせた野郎でな。善人でも悪人でも救いがある限り救うって決めてるんだ。」『俺自身がラヴに救われたからな』



自分の胸の内を打ち明けながら、自分自身にも呟く康二。先ほどまで怨念に満ち溢れた視線が森の中を覆っていたがそれが薄まったように康二以外のものが感じた。



ティラノサウルスは自らの絶望が少しだけだが薄まり、安らぎの気持ちが生まれていることに困惑した。何故だ、こんな何の根拠もない青い理想を並べ立てる小僧の言葉に安堵している?なぜこの小僧なら我らを救ってくれると思ってしまった?何故何故何故なぜ?



「ガアアアアアアアアアアアアア、忌々しい小僧め!その青臭い理想ごと噛み殺してくれるわあああああ!!」



ティラノサウルスが鋭い一歩を踏み出し、不意を突いて康二を噛み殺さんとする。あまりにも突然な行動のため、康二以外は反応できていなかったが、康二だけはその動きがわかって、いや伝わっていた。



統合失調症の症状の中に思考吹入(考えが外から吹き込まれること)、と思考伝播(考えただけで周囲に伝わってしまうこと)と言うものがあることはご存知だろうか。他にも症状はあるのだが、今はこれだけで伝わるはずだ。


ティラノサウルスの考えは康二に今この瞬間だけは筒抜けだった。それは感情が極端に昂っているから思考が康二に伝わったのである。そしてそれを誘導したのは康二の先ほどの恐竜族を助けたい、いや助けるという思考であった。



つまりは康二は統合失調症であるがゆえに感情を見抜き、伝播させうるテレパシーのような能力を発現させていた。



康二は周りの世界がスローモーションになったのかのように感じていた。思考に一切の曇りはなく、錬菌術の使い方を理解していた。答えは女神の知識にあったミトコンドリアでもできる肉体強化である。実はリルとの戦いの時に試そうとしていた二つ目の策でもある。



支援強化をミトコンドリアではなく、世界最強の耐久力を持つ微生物であるやつに限界までかけたとしたら、どうなるだろうか?やつとは何だって?華氏マイナス328度(摂氏マイナス200度)から華氏304度(摂氏151度)までの温度に耐えられるし、地球の海の最深部の6倍にのぼる圧力にも耐えられる。その生物の名前はクマムシ。



しかし物理的な耐久力がどれだけ上がるかは未知数である。そこで表面のコーティングには世界最硬のクロカタゾウムシを使う。それは体長11~15mmほどのゾウムシの仲間。ステンレスの針が刺さらない。鳥に食べられても消化されない。クルマに踏まれても平気なほどのかたさを持つ。



これを限界まで支援強化をかけてクマムシの表面にくっつけて雪だるまの頭くらいの大きさまで作り上げる。ここまでかかったのは0.7秒ほど。そして打ち出すために下魔法の風魔法と火魔法を組み合わせて、巨大な大砲のようなものを作り出す。



どちらも下魔法レベル30を要求され、加算でレベル60の魔力を要求されるが今の康二は頭の血管が切れそうな痛みを覚えながらもやめる気はなかった。風魔法で空気の筒のようなものを作り、大砲(クマムシとゾウムシを固めたもの。名付けて錬菌砲)をセットして爆炎魔法で打ち出す。



康二との間に厚い空気の壁を作って爆発が伝わらないようにしたが、ぶっつけ本番で本当に安全かなと他人事のように感じていた。ここまで1.5秒。



だが、打ち出す目前でスローモーションながら、ティラノサウルスの大きな口がほぼ目前まできていた。まだだ、ただ打ちだすだけでは足りない。こいつにありったけの感情をぶち込んであの馬鹿恐竜に伝えてやらねば。お前の味方になってやるとああ時間が足りない。せめてもう1秒あればと思っていると。



「世界よ、ご主人様と私を除いて、その回転を止めたまえ、です。」



ティラノサウルスの動きが目と鼻の先で止まる。隣を見るとこちらを向いて微笑む天使。もちろんセラである。さあ、これで時間ができましたよ!と笑いながら言うセラの頭を撫でる康二。先ほどまでの血管が切れそうな痛みもセラが半分制御を受け持ってくれたことで落ち着いた。



ここからが仕上げである。テレパシーによって錬菌砲に先ほどの康二の恐竜族を助けたいという感情を込め、また周囲に漂うゴルドー、カレン、リル、アンナの感情を練り上げる。


そしてカルマとガトーの康二にお前は恐竜族やその主を救えるのか、という覚悟をという感情を受け止める。そしてティラノサウルスには悪いが無数の視線を向けていた恐竜族の怨念を一身に集め、ティラノサウルスに移す。



康二とセラはお互いにアイコンタクトをとり、ティラノサウルスから距離を少しだけとり、康二は錬菌砲を構え、セラは朗々と世界に語りかけて、時空魔法を解除する。



ティラノサウルスは少しだけ体が止まっていたような錯覚を受けて、戸惑いを感じた。何よりも康二との距離が少し離れている。おかしい、先ほどまでは目と鼻の先でやつを噛み殺せる筈だったのに。



そして康二の前に黒い大砲のようなものが空気の筒にセットされているではないか、あれは何だと考えているうちに体は勢いが付きすぎてかわせない状況にあった。だが、先ほどよりもドス黒い感情が自分の中にあり、康二を殺せと言っていた。目の前の標的はニヤリと笑ってこういった。死ぬなよ、と



「レンキン砲(レンキンバースト)発射!!!」



爆炎魔法で推進力をつけられた黒い大砲は、ティラノサウルスの顔面を打ち据えてその体ごと後ろに盛大に吹き飛ばされていった。康二のネーミングセンスについては触れないであげてほしい。


ゴルドーたちはいつの間にか黒い大砲を完成させ、ティラノサウルスを吹き飛ばした康二に唖然としていた。



そしてレンキン砲を喰らったティラノサウルスはというと…




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