古との戦い

どうやら、戦闘は避けられないようだ。康二たちの元へアロサウルスのような恐竜(アロサウルスと呼ぶことにする)が5頭ほど向かってくる。



まずは一手とカレンとアンナが水属性と闇属性の魔法をぶつけるようだ。カレンはカラストリクを握り締め、魔力を練り上げ、下魔法級のものを、アンナはダークネスウィップを持ちながら軽い詠唱をする。



「常闇から生まれしものよ、魔力を糧にして、怨敵を打ち砕け 下魔法Lv10『ダークネス・ストライク』」



説明すると下魔法は一般的なDランクまでの魔物なら一発で屠ることができる。それがLv1でも。Lvが10上がるとCランク、Lvが20上がるとBランクの魔物を滅することができるのだ。ちなみにリルはグレートウルフなのでBランクだが、希少種なので一つランクが上がりAランクである。


リルのスライムの膜を切り飛ばしたのはCランク級を倒す魔法であり、中魔法Lv30の魔法があそこまで効いたのは会心の一撃となり、中魔法から下魔法へ魔法がランクアップしたからである。


では中魔法を打って下魔法へランクアップするのを狙えばいいかというとそれも違う。ランクアップする条件はそれを外せば命はないという状況の時に1%の確率でしか起こらないものだ。それほど稀な確率なのである。



カレンはその杖から、10の水球を生み出し、アンナは闇から生まれし、黒き鳥のようなものを7羽生み出した。



そして5頭のアロサウルスの元に向かい、敵を滅ぼさんとする。しかしアロサウルスは一声、声を上げると緑色のオーラのようなものを身に纏い、自分から魔法に突っ込んでいくではないか?


これは妙だと思いアンナはアロサウルスに近づいた時点で水球を爆発させる。破裂した水球は空中で棘のような形を取り、鋭い針のようになって、アロサウルス達を襲う。


ダークネスストライクは素早く方向変換して、後ろのティラノサウルス擬き(ティラノサウルスと呼称する)を狙って飛んでいった。


黒い鳥たちはティラノサウルスを掠めるように飛びながらその翼を刃にして攻撃を仕掛ける。アロサウルスは、水球を避ける素振りすらなく、緑色のオーラで水の棘を相殺してしまい、



「ガアアアアアアアアアアアアア」



ティラノサウルスは、咆哮だけでダークネスストライクのほとんどを消してしまう。消えなかった2羽の内1羽はは森の向こうへ飛んでいってしまったが、もう1羽は方向転換し、ティラノサウルスの尻尾を掠めて、傷をつけるだけで終わったがティラノサウルスはかなり苛立っているようだ。



「おいおい、アロサウルスの方は魔法無効か!?……だが、ティラノサウルスはそうじゃねえみたいだな。だがあの咆哮には要注意だぜ。」



「アロサウルスの方は、あのオーラが出てる時は、魔法無効なんだろう。だが、リルのスライム膜と同じで火力で押せばいけるタイプか??」



「あほぅ、わしのスライム膜と一緒にするな!!悔しいがあれは魔法完全無効じゃ。威力に関係なくな。じゃから物理で攻めるしかなさそうだが… しかしあれは小柄ですばしっこそうじゃのう。」



「それなら、俺の出番だな。このゴルドーの戦闘力をみせてやるよお。」



会話している間にアロサウルスは、こちらに突っ込んできているのでガトー以外は臨戦体制になる。カルマはガトーの身辺警護だ。



ゴルドーはその身に土属性の魔力を見に纏い、詠唱する。



「大地よ、黄金の恵みよ、我にその力を宿したまえ。下魔法Lv50『ゴールデンアーマー』」



土属性の魔力が鎧となって黄金の輝きを放つ。最初は土色の鎧だったが、徐々に金属的な光沢を放ち、鉄色から銅色、銀色となり最終的に金色の光を放つ黄金色の鎧となった。



「これを纏った俺っちは強いぜえ!!喰らえ!!オレの唸る拳!!」



カレンとアンナがあれを纏ったゴルドーなら不覚を取ることはないだろうと後ろで話す。しかしあれは魔法で魔法無効のアロサウルウスには効かないのではないかと康二が心配していると大丈夫だと2人は言うではないか。


アンナが語るところによるとあれは魔法で作られてはいるものの中身は土属性の黄金でできた鎧らしい。金属の鎧とは重くないのかと心配する人もいるだろうがこの魔法で作られた黄金の鎧は使い手に重さを感じさせない能力があるらしい。



ゴルドーの唸る拳は近くにいたアロサウルスの一匹に向かって近づき、その顔面を振り切った。魔法で作られたものだから緑色のオーラで受け切れるだろうと想定していたアロサウルスは黄金の鎧の重量に振り切られ、血を吐きながら5メートルほど吹き飛ばされ、木にぶつかりながらグッタリとしたようすだ。


簡単に吹き飛ばされた仲間の姿に動揺しながらも散会して、取り囲もうとするアロサウルスの4頭。



「甘い、甘い、甘いぜええええ!!お前らはああこの鎧の力を見誤っているぜええ!!」



だんだんとハイになりつつある戦闘狂のゴルドー。しかしアロサウルスたちは魔力を練り上げて下魔法Lv20の風魔法ウィンドストームを連携してゴルドーに打とうとしているようだ。


この世界の魔法は同じ詠唱を連携して行うと威力が数倍にもなるという性質がある。アロサウルスは群れを作って狩りをする性質があるので、群れの中で情報を共有できるのだ。



「「「「ギャアアアアアアアアアアア!!!!」」」」



これが彼らなりの詠唱なのであろう。叫び声が4重に重なると急に旋風が吹き溢れ、巨大な竜巻がゴルドーを襲う。



「危ない!!(のじゃ!!)(です!!)」



康二とリルとセラが固唾を飲んで見守る中、カレンはなんでもないかのように呟く。



「これはゴルドーにとってはそよ風に過ぎんだろうな。」



アンナも同意するように



「これくらいで死ぬ玉ならとっくに長老に殺されておる。昔はやんちゃだったからな。」



「そんなそよ風で俺っちを吹き飛ばせるとでも思ったか!?俺っちの黄金のオーラをくらいなアアアアア!」



巨大な竜巻の中でゴルドーの声が響き渡ると、黄金のオーラが竜巻の中から立ち上り、やがて竜巻を中から弾き飛ばす!



そして二の矢を継ぐように4頭のアロサウルスの地面の下から黄金の鋭い棘が伸びてきて、腹の中に食い込む!!そしてそのまま串刺しにしてしまうのであった。串刺しにされたアロサウルスからは血がポタポタと垂れて、ひくついていた。



「……お前らは俺っちの黄金をみくびっていたようだな。この黄金の槍も物理攻撃だぜえええ!!」



「よくも同胞たちを!!貴様ら人族は許さんぞ!またしても我らから何もかも奪い取ろうとするのか!!必ず仇をとってくれる!」



「おうおう!!おめえらから仕掛けといて随分な言い草ではないか!許さねえと言うのな俺っちを倒してみやがれ!」



「貴様あああああ!言われなくてもそのつもりだ!!」



とうとう大将のお出ましだな!とニヤリと笑うゴルドー。このまま任せれば勝てるだろうと安心していたアンナたちだが、康二はなんとなく胸騒ぎがしたので自分の錬菌術で勝てそうな方法を考えることにした。


ラヴの知識にミトコンドリアでもできる肉体強化というタイトルがあったなあと思いながら首を振る康二。だが戦闘中に他ごとを考えるのはよくないなと思い、ゴルドーとティラノサウルスとの戦いを見守ることにした。



ゴルドーとティラノサウルスが向かいあい、ティラノサウルスはその巨体に似つかわしくない繊細なステップで迫り来る。ゴルドーはじっと動かずカウンター狙いでその巨体の顎をかちわってやるつもりだった。



だが、ティラノサウルスは数万年前に生態系の頂点に君臨した生物である。トリケラトプスとも勇猛に戦い、その身に齧り付いて勝利を納めてきた。その力は蘇ったばかりでもその力は健在であった。



ティラノサウルスは息を吸い込むような動作を見せると、その口から光のブレスを放つ!それを黄金の鎧で迎え撃つ、ゴルドーであったが……



「うおおおおおお!!俺っちの黄金の輝きがああああ!消えていくううう!!」



光のブレスを受けて黄金の鎧で迎え撃った、ゴルドーであったが、途中から黄金の輝きが消えていくのを感じ、土壁を作って耐えることに切り替える。



しかしながらその土壁も光のブレスに勢いを止めることはできず、土壁は光の粒となって消えた。そこにはあるのは光の粒が舞うある意味で神々しい姿と消えかけた黄金の鎧を纏ったゴルドーの姿であった。



「我にはわからん。これは何が起きたと言うんだ。」



「わしにも分からんぞ。ゴルドーの黄金の鎧が無力化されたと言うのはわかるが」



アニメや漫画を読んでいた康二にはわかった。これは魔法で出来たものをレジストするブレスだ。それが物質化していようがお構いなく。それがどれだけ恐ろしいことかも想像できたが。



「これは、魔法を無効化するブレスだな。ゴルドーとは相性が良くないみたいだ。」



恐竜が魔法を無効化するブレスを撃つのか!?と思うところだがイルミナの恐竜はなんでもありなようだ。古の戦いを生き抜いたものは強い。一筋縄では行かないようだ。



小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やフォローをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/


⭐︎⭐︎⭐︎を★★★にしてくださると作者が大変喜んで更新頻度が増えるかもしれません。よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る