ゴルドー、カルマの戦い

次はゴルドーの番だ。ゴルドーの相手はメガネをかけ、白衣を着たスレンダーなスタイルの女性のエンシェントエルフであった。名前はカリファ。ゴルドーの顔を一目見るなり、珍しい、と呟いた。



「ほう、君の魔法はどうにも特殊なようだね。それに随分と土の精霊に愛されているじゃないか。精霊魔法は使えない様だが、どうしてこんなに土属性に愛されているのか、気になるねえ。ちょっと魔力を分けてはくれんかね?」



「俺っちは別に精霊様の顔は見えねえが、ガキの頃から、土属性の序魔法。中魔法、下魔法は得意だったぜえ。ていうかあんまり美人と戦いたくねえんだが、魔力を分けたら、戦いをやめてはくれねえのか?」



「別にいいとも。私は興味深いものがそこにあればつい研究にしてしまうんだ。しかも美人と褒められたら少しは私のような枯れた女でも、くるものはあるさ…… どうしても倒したい魔族がいるから、戦ってくれと頼まれてきただけであって戦いには興味がないからね。」



でも研究対象は簡単には逃さないよ…… フフッと小さく笑う、カリファ。どうやらゴルドーはロックオンされたようだ。ゴルドーはお、おうと小さくうめいていた。



この顛末を見た周囲のエンシェントダークエルフからはブーイングが出ていたが、カリファはどこ吹く風という感じで受け流していた。どうやらゴルドーの勝ちのようである。



次はカルマの番である。相手はエンシェントダークエルフのバーダーだ。カルマは索敵や罠解除が得意な盗賊タイプだが、それをみてか、ゴリゴリのマッチョ系の相手を出してきた。



「おうおう、盗賊タイプ相手にその人選は悪意があるんじゃないかあ、ああん?」



「拙者、こう言うことも想定してきたでござりまする。任せて欲しいでござる。」



「カルマがそう言うならいいけどよお、無理はすんじゃねえぞ?」



「勿論でござる。」



「そちらの兄さんには悪いが、ここは勝たせてもらうぞ。こちらはもう勝ちはないが、エンシェントダークエルフの意地ってもんがあるからな。」バーダーが言う。



まあ、勝負は非情だからな。悪く思うなよ、とバーダーが語り終えると2人とも広場の真ん中で陣取る。



カルマは自分の収納魔法から、細身のナイフを取り出す。それを見たバーダーが、馬鹿にしたように口ぶりでこう言う。



「盗賊にナイフは定番すぎて笑えてくるぜ。まあ俺のボディに傷ひとつ付けられないだろうな。ケッ」



「それは自分の目で確かめるがよろしいでござる。」



どうやら今回の相手は一筋縄ではいかないらしい。準備ができたのを見て、フランが始め!と声をあげる。



「土の精霊よ、我の身体にロックな(岩石の如き)力を与えt」



バーダーが詠唱をするのを見て、カルマは素早く風属性をナイフに纏わせ、ナイフをバーダーの首筋に投げた!



それを見た、バーダーはチッと舌打ちをして、詠唱を中断し,首をふっと動かしてナイフを避ける。



「おいおい、人の詠唱を邪魔するなんて、ロックじゃねえ真似をしてくれるじゃねえか?おめえはサムライみたいな口ぶりでその心構えはないのか?」



どうやら異世界にもサムライはいるようだ。もしかしたら、昔江戸時代から異世界転移したサムライがいたのかもしれない。



「拙者の村の村長は、戦いに情を持ち出す奴は馬鹿かクズかのどちらかだと言っていたでござる。どうやら貴殿はクズの方に分類されるらしいでござるな。」



カルマの売り言葉に、バーダーはピキピキと顔に青筋を立て、かなりキレているようだ。



「それじゃあ、クズらしくお前をいたぶって、潰してやるよお!!」



バーダーはラーナも使っていた独特の歩法を使って、一気に駆け寄り、素手で殴りかかる!



カルマは手の平に風属性の魔力を集め、ボクサーのトレーナーがパンチをミット受けするようにその拳を受け止める。



「なんだと!?」



驚愕するバーダーは一瞬気を抜いてしまった。その隙をついてカルマは二本目のナイフを首筋に突きつける。勝負は決まったかと思われたが、なぜかバーダーはニヤリと笑い、こう言う。



「その柔なナイフで、俺の首を切れると思うなら切ってみろ。」



「拙者は命まで取るつもりは無いが……? 死にたいわけではないようでござるな。」



流石にまずいと思ったフランが止めに入ろうとするが、バーダーは無言でフランを見ると呆れたような表情をして、フランは好きにしろ、と言った。



バーダーがやれ、と言うと、カルマは無言で首筋を掻き切る。だが首から血潮が流れることはなく、逆にナイフが弾かれた様な音がした。



肉体強化をしても、風属性の魔力を付与したナイフが弾かれるわけがない。ではなぜかというと、バーダーの詠唱は完全に破棄されたわけではなかったのだ。中途半端だが、土属性の精霊の魔力が肉体に宿り、バーダーの身体を硬化するに至ったのだ。



「お前のナイフじゃ、俺の首は、いや、皮膚一枚切れねえ。さあどうするんだ?サムライさんよ。」



「知れたこと。拙者の相棒は、充分応えてくれている。ならば、拙者の技を持って貴殿の首を掻き切るのみよ。」



もはや命の取り合いと化しているが、大丈夫なのか?カルマとバーダーの戦いは続く。












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