君の名は
「魔物が人化した!?いくらグレートウルフの希少種とはいえ、人化するなんて聞いたことはないはずじゃ。」
「ぬう、わしはグレートウルフの希少種などではないぞ。偉大なるフェンリル様だ!!ハッハッハッハッ、クシュンンンn!」
「待て待て、お前嘘は良くないだろ。それにカレン、魔族ってどう言うことだ。てかお前も裸で居るな!カレン、なんか服貸してやってくれ。お前も服着ないと風邪引くぞ。」
嘘ではない、とくしゃみをしながら怒る器用な自称フェンリル様。カレンはまだポカンとしたまま行動を停止しているし、何よりも風邪ひかせたのは康二である。
混乱は深まるばかりであった。
ー閑話休題ー
グレートウルフの少女はカレンに忍者装束の予備を貸してもらい、少しは寒さがマシになったのか、焚き火(また朽ちた大木を出して火をつけたもの)に当たりながら鼻水を垂らしていた。
その姿は12歳くらいのまだ大人になる前のあどけない少女で、白い狼耳を生やして、白銀に光らせた眼を曇らせながら、形の良い高い鼻を啜っている。
胸元にはGカップはあろうかという豊満な胸が服を膨らませていた。いわゆるロリ巨乳というやつである。身長的には150センチくらいだろうか。だが庇護欲をそそるファンタジー世界の獣人という出立の美少女であった。
カレンは褐色の肌に複雑なタトゥーのような彫り物がある見た目は20代前半くらいの美女であった。赤紫色の目をしていて、こちらも形の良い高い鼻をしていた。
胸はCカップ位だが、サラシで胸を巻いているので潰されているようだ。身長的には170センチくらい。ちなみにラヴは173センチはあった。
日本人の女性としてはどちらも高身長である。忍者装束を着ているので下は網タイツの様になっており、艶めかしい太ももが康二の性癖に刺さっていた。
話を戻すとカレンが魔族というのは、褐色の肌に特徴的なタトゥーですぐにわかるそうだ。女神の知識にもその様な記述があり、それを見落としていた康二のミスである。
だが人間族と魔族には深い因縁があるらしく、普通はお互いに差別をしているそうでなぜ知った後も嫌ったりしないのか驚かれた。康二ならうちの村に紹介して、婿に…、いや私は何を言ってと小声で言って悶えるカレンであった。
それを見ながらカレンは何を悶えているんだと考える康二。それを何やら不満そうにみやるグレートウルフの少女。三角関係はもう始まっているのかも知れない。
グレートウルフの少女は元々はここからはだいぶ離れた東にあるレミレス大湿地帯という場所に住んでいたそうだ。この場所に来たのは、何者かに導かれて気づいたら荒野にいたそうだ。
湿地では野獣を狩りながら、群れの長をしていたそうで、希少種になったのはゼリー状の食感らしいスライムを好んで狩っていたところ、通常では発生しない白い知性のあるスライムにお前を希少種にしてやるからこれ以上同族を狩らないでくれと言われ、了承した所、スライムの膜を纏える希少種になったそうだ。
白いスライムはその後消えたが、スライムとは思えない程の魔力を持っており、わしでは到底勝てない存在であろうと少女は語った。異世界最弱の筈のスライムにそんな希少種がいたとはと驚くカレンと康二。
そもそも魔物に知性があるのかと聞くと大抵の魔物には知性があるそうだ。それは大昔、魔物が本能のままに行動しているのを不憫に思った、傲慢を司る魔の神が知性を与えたと神話にあるそうだ。
その神、本当に傲慢なのか、と疑問に思う康二だがそういうものだそうだ。
そして少女がなぜフェンリルであると自称したかと言うと通常は黒か灰色にしかならない体毛が白色になり、群れに戻ったところ、仲間の狼にフェンリルに進化した!と称えられ良い気分になり、自分でもフェンリルであると名乗る様になったらしい。
実際フェンリルなのかというとそうでもないとそうでもあるとも言えるらしい。伝説にあるフェンリルは魔物でありながら亜神の様な存在であるとされ、恐るべき強さと存在感があるとされるが、一説によるとグレートウルフから進化した存在ではないかという学説があるそうだ。
ある程度は魔物の進化先も判明しているそうで、中には魔物を幼少の頃から育てて、相棒として一緒に戦う冒険者もいるそうだ。所謂テイマーというものだがこの世界ではテーマーと呼ばれている。
康二は女神に殺しは避けられなかったらすると言ったものの、魔物にも知性があると知って、魔物を殺せるのかと思ってしまっていた。
それをポツリというとカレンと少女はそれもまた考え方の一つだが、中には強すぎる魔に呑まれて暴走している者もいると言った。
そういうものはもう誰かがとどめを刺してあげないとそこに住んでいるものにも暴走している魔物にも迷惑がかかる。どうあっても殺しは避けられないと優しく諭すカレンと少女。
康二はその時が来たら、自分はどうするのかと考え込むのであった。
話をしている間に少女が熱を出して苦しそうなので、康二とカレンが序魔法 ヒーリングとキュアで回復させてあげた。
これで治らなかったら女神の知識から抗生物質を頑張って作る必要があったので良かったと思う康二。
ちなみに抗生物質は細菌から抽出できるそうだ。ただの風邪菌で良かったが、自分たちも二次感染しないように、何か考える必要がありそうだ。
「いつまでも少女って言うのもなんだし、お前に名前をつけるか!」
「うむ、それなら康二に名前をつけてほしい。得体の知れない謎の病魔がわしに降参する機会を与えたからの。」
「うーん、俺にネーミングセンスはないんだが… スライム好きなグレートウルフ。スラルフってのはどうだ?」
「却下!わしはフェンリルじゃああああぁ!」
「いやそれ、自称フェンリr…」
「いやもクソもない!わしはフェンリルじゃ!」
「仕方がないやつだな…スライム好きなフェンリル(スライム好きなフェンリルになりたいグレートウルフ)でスラリルってのはどうだ?」
「お、そっちの方がいいのじゃ!わしはスラリルなのだ!」
もちろん括弧の部分は喋っていない。康二はこれでも良い大人なのだ。世の中には知らない方がいいこともあるのだ。だがスラリルにジト目で睨まれ、目を逸らす康二だった。
その後、カレンに近くに魔族の村があるので、そこに案内してもらうことにした。
スラリルが狼形態に戻り、康二とカレンを背中に乗せてカレンの案内の元、トコトコと歩を進める。
「そういえば、リル(スラリルの愛称)はなんで人化できたんだ?」
「わからぬ。お主たちと戦って負けを認めた時に人化の知識が流れ込んできた来たのじゃ。」
「そのことだが、誰かに導かれたと言うのは康二に導かれたのではないか?」
「なんで俺?」
「我のステータスにはその様な記述はないからの。まあステータスの内容を他人に教えるのは良くないが、戦友にはいいじゃろう。」
「そうなのか?だが俺のステータスにもその様なものは… いや?よくわからない称号があるな。」
確か世界の?人という称号があったはずだ。そういえば異世界からの旅人の裏効果はどこでも旅人として扱われるというものだった筈だが、なぜかカレンには通用しなかった。
教えてもらえはしないが何か特別なスキルを持っているのかも知れないと少しだけカレンを警戒する康二。
それを知らないカレンは称号… と呟きながら何かを考え込んでいる。カレンの村に着くまでしばらく三人とも無言になった。
「着いたぞ。ここが村の入り口だ。」
「何もないじゃないか!」
康二が叫ぶのも無理はない。見た目はまだまだ大荒野が続く、何もない場所だ。
だがリルは人の匂いがするの…と鼻をスンスンしている。どうやらここは村の入り口で問題ないらしい。カレンがここは魔物よけの結界があるのだがリルには機能していないのか?と問うと、確かに強い結界が二重に張られている様だが、康二となら大丈夫そうだというと、ますます顔を顰めるカレン。
『自分も効果を把握しておらん導きというのは危険ではないか?幸いリルには害意はないが、魔物避けの結界を魔物が苦にしないのは問題じゃ。長老にも説明することが増えたな…」
ぶつぶつと呪文を唱えながら、同時に考え事をするカレン。魔族の村に伝わる結界を一時的に解く呪文を唱え終わると眼前に驚きの光景が広がる。
夜闇でよく見えないが数十人ほどの褐色の肌に刺青を彫った人たちがそれぞれ武器を持って構えているのだ。中には魔法を撃とうと詠唱を唱える人もいる。それに慌てる康二とカレン。リルは呑気に欠伸をしていたが。
「待て、怪しいものではない。我とその客人だ!!」
「おお!あれはカレンではないか!だがこの村にグレートウルフを連れてくるとは何事か!?」
「違う。わしはフェンリルのスラリルじゃ!」
いや、その説明ややこしいからとツッコミを入れる康二。その様子に少しだけほっこりして警戒を緩める村人たち。
その隙にカレンが進み出て、声を張り上げる!
「我は長老の娘で次期村長候補のカレンだぞ。この者たちが粗相をすれば、我が責任を取る!今夜はもう遅いため、明朝、長老に話をする!道を開けよ。」
村人たちはそれならばと道を開け、カレンの住む木造作りの家に案内するのであった。リルが家に入る時に人化をした事に驚き、これは本物のフェンリルに違いないと崇めようとする場面があったので康二とカレンが夜も遅いからと宥めて事なきを得た。
誤解は深まるばかりである。関係のない話だがスーツケースはしっかりと持ってきている。珍しいもので盗られると危ないからと序魔法のアイテム収納に仕舞っているが
三人はもう夜も遅いからと1人用のベッドにカレンとリルが、置いてあったソファーに康二が寝る事にした。なぜか朝になったら康二はベッドに運ばれていて2人に挟まれて寝ていたが。童貞の康二は朝起きた瞬間、鼻血を吹き出しそうになって慌てて離れていた。
一方その頃、アルライト王国の魔道研究所では
「所長!オルゴーン大荒野に強大な魔力反応が!!しかも何もない所に突然現れました!」
「なんだと!その魔力反応は我が国に向かったのか?」
「それが我が国から離れて南下していき。オルゴーン大荒野の中心あたりで反応が消えました。」
むう。と考えこむ所長。これを王に報告してもいいが、あの愚王では右から左に聞き流されるだけであろうと考える。それならば騎士団に情報を流して、実地訓練という体でオルゴーン大荒野に行ってもらい調査を頼むほうがいいだろうと思い、懇意にしている第4騎士団の団長の元に行く事にした。
この決断が康二にどんな影響を与えるかはまだわからない。
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